津波の動き

津波には、独特の動きがあります。


1、屈折(くっせつ)

レンズ効果とも呼ばれます。
津波は海底の浅いところへ曲がり込む特徴があります。
このため、海底の地形によっては
津波がある地点に集中して到達することがあります。
これが屈折です。
屈折によって津波が集中すると、
押し寄せる波の数が増えたり、波高が大きくなります。

屈折
(首藤伸夫 「津波と被害」より)
上の図は1983年の日本海中部地震で津波がどのように伝わっていったかを表しています。
点線は等水深線(水深が同じところを結んだ線)です。
点線と点線に囲まれた部分が狭い場所は、水深が急激に変化している事を示します。
赤い線で示したとおり、海底の地形によって進路を変化させた津波が
峰浜村へ集中しているのがわかります。


2、浅水効果(せんすい こうか)

津波は海底が浅くなると、高さが増します。
何故かというと、津波は浅いところでは速度が落ちます。
速度が落ちると、後ろの波が追い付いてしまい、波が高くなるのです。
浅水効果
(首藤伸夫 「津波と被害」より)


3、集中効果(しゅうちゅう こうか)

広い湾口から入った津波が狭く浅い湾奥へ押し込まれて、波高が大きくなります。
さらに勢いがついて、高い場所まで駆け上がります。
これが集中効果です。
集中効果
(首藤伸夫 「津波と被害」より)

津波が上ってきた
(首藤伸夫 「津波と被害」より)
1896年 明治三陸津波のとき、 細長い形をした綾里湊に入った津波は、
集中効果で高さを増やし、白浜の峠に激突しました。
この時の津波の高さは38.2メートルにもなり、本州津波最高値でした。
1944年の東南海津波のときにも、白浜峠に28メートルの津波が上りました。


4、共鳴効果(きょうめい こうか)

港湾の中では、沖は違う独自の波が発生しています。
これを固有振動(こゆうしんどう)といいます。
固有振動が津波の動きと似ていた場合、
津波が増幅されて、さらに高い津波になってしまいます。
共鳴効果
(首藤伸夫 「津波と被害」より)


5、海鳴り(うみなり)

津波が来る前に、
海の方から遠雷のような、砲台発射のような、「ゴオーッ」っという音が聞こえてきた
という証言が多く残っています。
海から聞こえてくるこの不思議な音を海鳴りといいます。

海鳴りは、高さ5メートル以上の段波が崖に衝突したときに発生する音です。
かなり遠くでも聞こえるようです。

特に海が荒れていないのに海鳴りが聞こえたら、
それは津波のサインかもしれません。


6、(うず)
津波が来ると、湾の中に渦が出来ることがあります。
渦は港に停めてある船や流されてきた木材などを飲み込んでしまいます。
渦に飲み込まれる船
(首藤伸夫 「津波と被害」より)
1968年 十勝沖津波で発生した渦の写真です。渦の中に船が見えます。


どんな形の津波が来る? 津波の速さ
津波基礎知識へもどる