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明治二十九年六月二十八日 ●横濱燈臺技手の遭難

去日横濱燈臺の技手たる金子岡の田氏ハ釜石に立標建設の用務を帶て出帳し旅店某方に宿泊しけるが何心もなく旅のつかれを*せむとして平臥しつ*わりける折柄突然海潮奔騰し來りて家屋ハ激浪の中に没したり斯時兩氏ハ悉皆夢中のも*何時の間にか天井を破りて屋根の上に這ひ上り初めて心づきしが見る見るうちに激浪渦き來るとヽもに其家ハ三回まで廻轉しつヽ突如大樹に打ちつけられける一刹那兩氏ハ我にもわらで其樹梢に抱きつき居る間に家ハ微塵に碎け終り兩氏ハ不思議の命を助かりしといふが其節持參の官金千五百圓ハ波に浚ハれて行方知られずなりしとぞ