文字サイズサイズ小サイズ中サイズ大

論説 明治二十九年六月二十五日 海嘯被害記『其四』 特派員棚瀬軍之佐 (六月廿二日 午前七時發)

明治二十九年六月二十五日 海嘯被害記『其五』 特派員棚瀬軍之佐 (六月廿二日 午前十時發)

當夜の慘話 明治二十九年六月二十五日 ○杉木に上る

北閉伊郡田の畝にては第一回の海嘯襲ひ來るや七歳の小兒は直ちに庭後の老杉に攀ぢ上りしが續て第二回の海嘯天地を震撼し恐ろしく又凄まじき聲して襲ひ至り遂に樹上の小兒も海水中の者となりしが斯兒怜悧敢て屈する色なく飽まで樹枝を抱きて*れざるより遂に生命に支障なきを得たり