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社告 明治二十九年六月二十日

三陸の海濤髙く*きて慘禍の及ぶ所三十餘里、幾千の生民老を扶け幼を救ふの*わらずして空しく波間の鬼と爲る、田*裂け家屋潰えて滿眼凄慘の致を極むこれ豈近年稀有の異災ならずや、本社乃ち棚瀬軍之佐氏を被害地に派遣して其實況を視察せしむ、氏は東奥の地勢人情を詳悉するもの其報告は凄慘の光景を活寫し來て血あり涙ある江湖士人の同情を催起するに足らん

義捐金 明治二十九年六月二十日義捐金募集

東奥海嘯の慘禍は前に述ぶる所の如し其一生を萬死に得たる者と雖ども、歸らんとするに家なく、食んとするに糧なく、風濤洶湧の餘に遑々する、其數果して幾何ぞ、是に於て我社は博く江湖の義財を醵集し遭難の窮民に施して衣食の萬一を補助せんとす博愛義侠なる江湖の士人幸に彼憐むべき同胞の慘苦を*め義捐金は金十錢以上とす
義捐者の姓名金額は本紙に掲出し且別に受領證を出す被害者に交付方は地方廰に依頼す

明治二十九年六月十九日
毎日新聞社謹告
明治二十九年六月二十日

◎海嘯慘報 明治二十九年六月二十日