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一日賃銀十九錢   これで救濟工事か    中間の搾取が多すぎる

  ◇八戸できのふ勞働者が歎願
地方匡救事業のからくりがチョイ
チョイ暴露され縣下各方面で騒い
でゐるが、八戸市の失業救濟土木
事業として施行された南濱海岸産
業道開拓工事に賃銀の不拂ひがあ
り勞働者が騒ぎ出して二十六日午
後零時半頃大衆黨八戸支部の西村
市議、川口執行委員が同道し同工
事勞働者三十餘名が八戸市役所に
神田市長を訪問したが、市長不在
のため久保助役と助役室に代表者
が面會して歎願書を提出し、また
同工事の下請負人上村千太郎から
工事費用の精算書を
 提 出 し て  實情を訴へ
た。この工事は同海岸道の一部白
濱部落内工事費二千十六圓、種差
同四百九十圓五十六錢合計二千五
百六圓五十六錢のもので同市大久
保萬次郎が市から請負ひ、夫を上
村千太郎が二千圓で下請負をし更
に地元上子澤惣太郎、高橋新三(
白濱)、柳澤兼松、一部菊松(種差
)の四名に請負はせた處がその間
に請負金額は細り細つて實際工事
施工請負者に渡つた現金は千二百
六十一圓六十五錢になつて了ひ、
勞働者七十六名を使役して昨年十
一月八日から去る十九日迄に工事
を終つたが、この間費用不足のた
め館村に百五十九圓一錢を一時立
替へて貰つても更に實際工事施工
者が八百五十五圓の缺損となり、
ために勞働者は工事期間中一人一
日當りたつた十九錢より支給され
ない、男女共一人當り平均五十七
錢給與する事になつてゐる失業救
濟事業に於て、之では全く救濟事
業どころか勞働者泣かせだと勞働
者は非常に憤慨してゐる、しかし
更に工事終了■工事檢査の結果一
部分
 手 直 し を   命ぜられた
が、下請負の上村では到底負擔に
堪へぬのを知つた大久保は工事に
使用する爲上村が購入したリヤカ
ー十四臺シヤベルその他の道具の
没収を申渡し上村が『餘りだ』と
訴へると手直し工事費に充當する
のだと一喝してうけつけぬので上
村は泣いて久保助役に訴へた久保
助役は救濟事業であるから事實と
すれば放つて置けぬので一應調査
した上で處置し樣と答へたので全
部勞働者は引き■げたが
 こ の 成 行  は注目され
てゐる尚西村市議は語る
 中間で何度も何度も搾取され、
 然もこの工事には受益者負擔で
 仕事の寄附もある筈である、勞
 働者が可哀想だから何とかして
 貰ひたいと思つて歎願にきた。