社説 災害対策に特別措置を
チリ地震津波による被害
は、実情がわかるにつれ
予想外に大きく三百億円
とも四百億円ともいわれ
ている。被災地には早く
も復興のツチ音が響いて
いるが、一方災害に対する緊急措置も
関係公共団体は無論のこと、内閣に対
策本部が設けられたほか、厚生省の災
害救助費の配分、農林中金、地銀によ
る応急的な融資、建設省の災害住宅に
対する貸付会、さらには農林省でも天
災融資法の適用を考慮するなど各種の
対策が講ぜられている。われわれは各
機関による応急対策がすみやかに被災
地に浸透して、その復興の一日も早か
らんことを心から願うものである。
ただ今後の問題として考えさせられ
るのは政府がどの程度今回の災害に資
金面での措置をしてくれるかである。
いままで伝えられた限りでは政府は、
この災害で補正予算を組む意思はない
と言明している。つまり農業施設を含
む公共土木関係の被害は二十三億円に
すぎず、国民金融、中小企業金融、農
林漁業金融各公庫資金を活用すれば予
備費でまかなえるというのが、その理
由のようである。
被害の実体が正確につかまえられな
い現状では、政府の認識が正しいかど
うか即断できない。しかし一道十七県
におよんだ津波被害は、昨年九月の伊
勢湾台風被害の規模よりは小さいにし
ても、八十億円足らずの予備費で恒久
対策までを念頭においたさい、果たし
て十分であるか。伊勢湾台風のときは
六百十四億円の補正予算が組まれたほ
か、三十五年度予算には『治山治水対
策費』が一本の太い国策となって現わ
れている。チリ津波の被害状況を見る
につけ、救済、復旧対策だけでなく
恒久的な施策を検討する必要性を痛感
する。
本県でも県議会に災害特別委が設置
され、知事および特別委代表が相つい
で上京し、政府に陳情を行なっている
また東北自治協議会では、被害の深刻
な宮城,岩手,青森三県、北海道に呼び
かけ『チリ津波災害復旧特別措置法』
の実現を期しているようである。これ
は伊勢湾台風のさい先例があり、現行
災害法の国庫補助率の増率、災害事業
の適用ワクを拡大するための措置であ
るが、抜本的対策を講ずるためには、
この特別立法がぜひ望ましい。ただ補
正予算といい、特別立法といっても、
散発的な各県ごとの陳情程度で奏功す
るわけはなく、このさい東北各県の政
治力の結果が必要であろう。
由来、政治経済的に比重の重い東北
地方はなにごとによらず冷遇されるの
が通り相場である。伊勢湾台風のさい
は副総理を長とする中部災害対策本部
が設けられたが、今回は所管大臣が災
害地を見にきたということさえ聞かな
い。せいぜい各省の係官程度の視察が
伝えられるのと、自民党でも政調会が
やっと動き出した程度である。国直轄
事業が一層少ない東北地方、といった
比重が、災害対策にも現われるようで
は大変なことといわねばならない。も
っとも政府は混迷する政局収拾に手一
ぱいで、降ってわいたこの災害対策を
どうするか、政治的にきわめて困難な
立場にあるといえるかも知れない。
いまの状態では野党側は国会の会期
を認めず、したがって一切の審議に応
じないとの態度をとっている。自民党
が災害対策を呼びかけても野党側はそ
れに乗っていかないだろう。もちろん
災害対策を、国会を軌道に乗せるため
にだけ利用しようというのはきわめて
悪質な行為である。安保単独審議に出
発した国会の混乱は、あくまで別個の
ものとして収拾策が講じられなければ
ならない。
しかし災害対策もまた一刻もおろそ
かにできる性質のものではないはずで
ある。とりあえず考えられるのは、国
会承認を必要とする補正予算や特別立
法は時間的に多少延びるのはやむを得
ないとして、予備費をもっとも緊急な
救済費に支出することであろう。岸内
閣の総辞職とか衆院解散などによって
政局収拾の道が打開されるのであるな
ら、その後本格的な災害対策を講ずる
ということがあっても致し方なかろう
安保問題は確かに重大問題であるに違
いないが、政局混迷に名をかりて、被
災地の救援や復旧対策が遅れるという
のも重大なことである。そうした判断
を誤らぬよう、とくに政府に要望する
とともに、予、野党が安保問題や国会
の会期問題と全く切り離して災害対策
を話し合うことも考えてよいのではな
いかと思う。
津波にたたかれた八戸市 零細漁船ほどひどい 水産 工業痛い工場の機能停止
八戸市災害対策本部で二十六日今
度のチリ地震による被害総額を四
十一億三千八百五万円とまとめた
が、この中で最も大きいものは水
産関係の二十六億三千五百十八万
円であった。次いで港湾土木関係
の六億八千六百六十万円、工業関
係の三億六千四百六十一万円など
となっている。これによる間接的
な被害を含めると、百億円を突破
するものとみられる。同市では基
幹産業の立ち直り対策をたてるた
め二十六日、急ぎ臨時市議会を開
いた。その後の工場、漁業関係の
被害状況は次の通り。
最も被害の大
工 業 関 係 きかったのは
日曹製鋼と中
外製鋼。日曹では三百五十㍍の護
岸のうち、コンクリートの本護岸
約百メートルだけ残してほとんどが決壊
修繕に五千万円もかかりわけ。ま
た測線道路なども全部破壊、復旧
には二千万円はかかるもよう。野
天積みの砂鉄コークスも大半が流
出、約八百五十万円の損害。また
モーターの損害は四千万円で工場
ぜんぶの被害は一億円に上るとい
われる。目下、復旧作業を進めて
いるが、一部操業に二、三日かか
る予定。
また中小工場である中外の場合
は工場内に一・五メートルの高潮がは
いり、施設は完全に破壊。被害
千五百万円といっているが、操
業不能などの損害を入れると約
五千万円に上るものと見られる
操業開始まで今月一ぱいはかか
る見込み。
また日曹●の東北電力八戸火力発
電所の被害は約二千五百万円。運
転開始には数日を要する。
一方、日東化学、日本高周波、
東北砂鉄など内港南側の工場は
比較的被害がなく、野積みの石
炭、原料などの流失ですんだ。
市営第一魚市
水 産 関 係 場付属施設を
はじめ、製氷
冷凍施設が軒並みにモーターが水
をかぶったため、完全にマヒした
しかし、魚市場では二十六日早く
も東京からモーターを取り寄せ、
据え付け工事をはじめ、今月中に
は常態に復する見通しで、一部砕
氷もはじまった。しかし漁期を迎
え、いまが貯氷の大事な時期だけ
に、製氷能力のストップは今後に
大きく影響するものとみられ、盛
漁期には一、二万トン程度の移入が
必要だろうと関係者はみている。
冷凍加工で入庫中のものはモー
ターが使用不能だが、日東化学
のドライアイスを使っているの
で、被害は最小限に押えられ
そうである。
カン詰め工場もどうやら漁期に合
わせた操業は可能といっている。
白銀海岸で行なわれるスルメ、煮
干しなどの加工場地帯はほとんど
全滅したが、資金さえあれば復旧
はわりあい簡単。ただ一番大きい
問題は、いうまでもなく漁船の復
旧と、第二魚市場の復旧である。
新井田川に係留中のイカ漁船は、
これまで七、八割が出漁態勢を整
えており、サバ船も準備中だった
のがごっそり痛めつけられた。
一方、カツオ、マグロ、トロー
ル、北洋漁業●網船、それに同
じイカ漁業でも漁種を兼ねる船
はすでに出漁中なので、被害を
まぬがれている。だから今回被
害を受けた漁船は岸業の零細漁
船だけということになる。それ
だけ深刻で、救済が望まれるわ
けだ。
関係者は裏日本など他港造船所の
応援を心頼みにする一方、三陸津
波のさいと同様営林署の官財払い
下げや、低利子付金を期待してい
るが、来月に迫 った漁期 にはと
ても間に合いそうもない。次に市
も頭を痛めているのが第二魚市場
の修繕。これも 果たして盛 漁期
までに間に合うかどうか大きな疑
問。話題のイカ釣り許可制問題も
この災害がどんなトバッチリを与
えるか(?)
三戸郡階上村の五漁業岸組の場
合は、さらに深刻、生活のすべ
てをかけた漁船約十隻、ワカメ
コンブ、ウニなど一岸組当たり
二、三百万円代が吹っ飛び、暗
たんとした表情だ。
いずれにしても水産関係の被害は
皮肉にも零細者に最もひどかった
ようで県、全市をあげて八戸漁業
再建の救いの手がまたれる。
津波被災地の皆さまへ心からお見舞い申上げます
この度の大津波の災害に対しまして
下記広告掲載の商社よりお見舞金及
びお見舞品の寄贈がありました。
明治ラッキーキャラメル
三共製薬株式会社