●三本木村短信
去る15日の大海嘯につき、部内
人民救護のため、翌日早朝川村分署長は、鈴木巡査部
長以下巡査数名を随え被害地へ出張せり。◎三本
木軍馬補充支部にて、牧手雇員等の昇級したるもの
数十名あり。◎同補充支部付技師小野打悦次郎
氏は同郡山本支部に出張せり。◎宮内省主馬寮調
馬手久保小次郎氏は、同寮馬丁2名を随え馬匹受
領のため補充支部へ出張、18日名馬2頭を引き連
れ帰京せり。◎軍馬補充支部にては第2師団へ軍
馬60余頭を輸送せり。◎養蚕は目下4眠前後に
して何れも好況。早きは18、9日頃より上蔟せる
もあり。尤も各給桑村方にて田植え最中にして
農事繁忙の場合なれば俄然給桑に欠乏を告げ、1
〆目34銭内外の相場、忽ち6銭乃至10銭まで騰
貴し養蚕家の困難云うばかりなし。
●本月中旬の気象一般
5月以来甚だ稀有の高
温度を呈し来たりつゝありしが、なお引き続き甚だ高
度にて、本月上旬中旬の如きも一昨年を除けば青
森測候所創設以来、未曾有の高度にて(中旬)昨年
より4度、平年より5度高く、即ち平年の7月上旬
の温度と同度なりし。参考のため本所創設以来の
温度、雨量、雨天日数を各年毎に挙ぐれば左の如し。
温 度 雨 量 雨天日数
15年 63度7 1仏厘 2日
16年 64度 1仏厘7 2日
17年 59度9 81仏厘4 6日
18年 61度3 1仏厘7 2日
19年 63度0 36仏厘4 4日
20年 58度1 9仏厘2 7日
21年 57度4 21仏厘3 4日
22年 59度4 37仏厘5 3日
23年 61度7 25仏厘2 6日
24年 58度1 10仏厘4 4日
25年 60度6 2仏厘8 3日
26年 61度 25仏厘 6日
27年 67度3 63仏厘4 8日
28年 61度9 47仏厘2 7日
平 年 61度2 26仏厘 4日
本 年 66度 46仏厘6 6日
●東北地方の不幸
征清の役、目出度く我が国の大勝
利に帰して、局を結びたる以来は世間の景気大いに
振起し、事業の拡張、会社の増資続々起こり、世は繁昌
の春を迎えたれども、戦争中軍資金の散じたるは
主に関西地方にあり。人馬の往来、旅宿の繁昌、戦争
のため潤いたるは東京以西にして、東北地方はその
恩沢に預かるを得ず。従って今日世間の繁昌として
は東京以西にありて、東北地方の人民は空しくこれ
を羨み、起業の計画も事業の繁栄もこの地方には稀
に見るのみなりし。同じ日本国中に在りながら
均しく戦勝の余沢に潤う能わず。これさえ気の毒
千万なるにかてて加えて今度大海嘯の変災、東北の
罹災地方特に憐れむに堪えざるものありと時事
は記せり。
本県海嘯罹災 救 助 義 金
金壱円 青森大町 松原 慶吉
金拾円 弘前■町 菊池 九郎
金弐円 歩兵第五連隊第二中隊準士官下士一同
金五円 東奥印刷所
金五拾銭 青森■町 永嶺 いよ
金参拾銭 東奥印刷所内 竹内寅太郎
金参拾銭 同 岡野■之助
金参拾銭 同 柿崎千代吉
金弐拾銭 同 芦川 要■
金弐拾銭 同 川村 欣造
金拾円 東津軽郡荒川村 白鳥 ■一
金五円 同郡■川村 三上 ■六
金壱円 青森安方町 岩川常之■
金弐円 青森堤町 柿崎 豊吉
金弐拾銭 青森■町 嶋田 三郎
計金参拾八円