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      社    告

    雑     報

    ◎鮫村続報(20日特発)

被害は当村南海岸に多く、今に木材潰家の漂着沿
海に堆積して足の踏むべきなく、村長以上村役員
及び警官と共に日夜奔走処置に奮■しおれり。就中
溺死20人の内、僅かに3人の死体発見せられた
るのみなるに、近隣のものと思われぬ死体続々漂
着す。思うに同沿岸漁小屋の蔭、岩石の窟、従来乞食
の巣窟たり。■■の災厄に非命の惨死を遂げたる
もの蓋し幾千ぞや。

    ●内務省官吏の出張

水害地視察のため県治局長三崎■之助氏は岩手
県へ、■事官久米金弥氏は宮城県へ、書記官太
田蜂太郎氏は本県へ出張を命ぜらる。

●赤十字社の出張員

 東京の本社より救護のた
め本県に出張を命ぜられたるは、医員小山善、尾
崎市太郎、看護人伍長心得伊藤仙次郎、看護人広瀬
保則、石出倍太郎、山崎久吉の諸氏なり。

●谷地頭の出張員

 赤十字社本県支部の救護員
は2組にして書記神山文■、医師日向新三郎、鈴木
■、看護員2名は、目下谷地頭において救護中なり。

●各県よりの見舞状

 その後県庁に■したるは電
報にて石川県知事より、書状にて小倉福島県知事、
周布兵庫県知事、岡田警視総監、佐久間中将、久我東
京府知事、川田日本銀行総裁、秋田県知事、東京絵入
日報新聞社、曽我島根県知事等なり。

●金員義捐

 三重県阿山郡上野町大字本番箕輪 
正修は50銭、静岡県尋常中学校寄宿舎生徒一同
は3円、東京日本橋馬喰町1丁目平民平尾賀平は
10円、大阪市東区農人町1丁目屋敷高橋千代造は
1円を本県の罹災者へ義捐し来たれり。

●海嘯の救助につき

 青森町の重立有志40余
名は一昨日病院に集合して協議をなし、何れも義
捐することとなり、町役場にて来る25日までに
取り纏め県庁まで送るはず。

●青森町の義捐金

 別項の協議により昨日まで
に当市中有志者において出金したるは、計274
円20銭にして、内本県に救助の分は256
円50銭。岩手県へ救助の分は10円40銭。宮城
県へ救助の分は7円30銭なり。

●八戸町の義捐

 同町会議員及び各町惣代は、町
役場に集会の上救助のことを協議し、その席にて決
定したるは金100円泉山吉平、同150円階上銀
行、同10円工藤新助その他56名あり。各大字にて
は惣代人奔走、義捐募集中なり。

●上北銀行の義挙

 陸奥水産会に於いて、今回の大
海嘯につき募集する義捐金を仝行に払い込むものは、
無手数料にて取り扱う旨、仝会へ通知越したりと云う。

    ●岩手県惨害電報

 20日午後11時、盛発にて青森郵便電信局に
 到達したる電報は左の如し。
去る15日変災のため本郡中(気仙郡)被害の人
畜家屋は左の通りなり。
 村 名   死 亡  負 傷 流亡家屋 潰家 牛馬 
大船戸 83 35  505 …… ……
松 崎   606   30  191 …… 100
小 友   250   20 2000 70  20 
広 田    500 ……  160 ……  40
■ 崎    72    2 11 …… 1
高 田     3   …… …… ……  ……
気 仙 22   10 35 ……  ……
赤 崎 448 68 172 …… 78
■ 里  1458  59 285 …… 168
越喜来 411   60 113 …… 100
吉 浜   215    9 32 ……  56
尾 丹  2000  ■■ 341 ……  ……
また20日一番列車にて、書記小野崎伝次郎氏は釜
石へ、22日書記高木惣太郎氏は小本へ、同
日八戸に出張中なる岩城武 氏は吉浜郵便局へ
出張したり。
また昨朝宮古発の電報は左の如し。
田老村の海嘯は高さ20丈に余れり。家屋は1戸
も余さず、悉皆流亡多少木材を山上に揚げたる外
は一望砂地に化したり。死体は未だ悉皆取り片付
くるを得ず、引き取り人なきもの多数なり。遭難して
僅かに助命せしもの53人に満たず。多くは重傷
者なり。鮪漁に従事せしものは、悉皆存命せり。2
里以上の外海は平常に異ならざりしと。警部小
崎順の談話によれば、この近傍は田老中山の如くその
他は余波を受けしなり。其は鍬ヶ崎の如き家屋を
高地へ上げたるのみにして、これを引き去るの力あら
ざりしも、田老の如きは悉皆引き去りたる点を観て
知るべし。
宮古郡役所の取り調べによれば惨害左の如し。
  死 亡   負 傷  流失及び潰家
船越村 1250   …… ……
織笠村 60   50      60
 山田町  1000 200 400
大澤村   500   …… 192
田老町  2000 52 ……
重茂村   496   ■3 103
宮古町    12 …… 20
鍬ヶ崎町  100 32 300
崎山村 116 12 45
磯■村    91 49 115
小本村   244 …… 61
津軽石村    3 …… 8
小本村の
内中野 69   …… 40
小成村    25 …… 9
重茂村の
内乙部   207   16 41
同戸の崎
近  辺 30 2 6

    ●工兵と軍医の派遣

第2師団長より今回の被害地破壊家屋又は死者
埋葬補助の為、工兵1小隊(約40名)派遣
の事を岩手県に申し込まれ、同県庁よりは直ちに宮
古方面に向け派遣せられたき旨、返電せり。又同師
団長より軍医5名、看病人15名派遣の儀電報あ
り。同県庁よりは直ちに気仙郡盛町に向け、派遣せ 
られたき旨返電せりと。

●龍田艦の派遣

 今回の海嘯にて無残の溺
死を遂げたる人民の死体は、大概沖合遙かに漂流
しこれが蒐集上甚だ困難なりと云い、沿海の大小
船舶は悉皆流失せりと云い、旁たにて服部岩手県
知事より横須賀鎮守府へ軍艦の派遣を申請し■
る■■■に於いては速やかに■■せられ帝国軍艦龍
田■(867■、5069馬力)を■■する
ことになり、去る19日同■■したりと云う。

●函館より米穀を輸入す

 2万2千余の
人命を■したる上、なお6万余の災■の民は飢餓
に苦しむ惨状云うべからず。而して交通の不便と人
夫の欠乏等は刻■の急に応ずる能わざるの恨み
あり。旁 にて岩手県に於いては県属松本義■氏を
函館に出張せしめ、同所に於いて白米4百石を買い入れ
ることとなり、同県属は去る19日■■函館へ
向け出発したるが、右米穀は郵船会社の■船千歳
丸に搭載して、東閉伊郡宮古港に直送し同港より
各沿岸罹災地へ配布する筈にて、すでに人夫その他の
準備も整頓し該■船■否や、直ちに配布すること
となりおるとぞ。

●青森郵便電信局員出張

 犬飼局長、吉沢会計課
長、郵便部郵便電信書記遠藤芳徳、電信課長鈴木鈴
之助、郵便部郵便電信書記田子四郎治、同小野■伝
治電信部、同寺山安高の諸氏は、岩手県釜石局方面
へ、電信部同佐治雄介氏は盛方面へ、土屋方保、
杉村清介会計部、同中島■也の諸氏は宮古方面■
■も去る20日出張せり。
●逓信省通信事務官 池田十三郎氏は仙台及び
青森郵便電信局区内に出張を命ぜらる。

    ●東北嘯害と濃尾震災

濃尾の震災のため不幸なる災害を蒙りたる死
者及び傷者の数を調査するに、当時愛知、岐阜、三重、
滋賀、富山県の6県下は、彼■震災の激震区域内に属
したるが、内富山県は全く死傷なく、他の5県下の
死傷を合計するに、死亡7247人、
負傷12611人にして之を今回東北3県下の
嘯害に対比するに、内務省が去る19日までの電報に
より調査したる概数を挙ぐれば、岩手宮城青森3
県下にて死者実に1万7千4百余人に上れり。其の
負傷者の如きは未だ詳報に接せずと雖も、今死者
の数を対比するに、今回の東北3県の被害者は濃
尾江勢の不幸なる圧死者よりも殆ど2倍半多
し。其の惨状実に驚くべき次第なり。

●赤十字社の救護

 今回の海嘯につき、日本赤十字
社にては、負傷者救護として取り敢えず岩手県へ向け
医員大森栄三郎氏に看護人3名を付し、担架天幕
等を携帯、去る17日午後8時出発せしめたるに
去る18日午前11時、大森氏より更に医員3名、調
剤師2名、看護人十名至急増遣を乞うとの来電あ
りしにつき、同社は即時増遣の準備に着手し去る19
日の上野発1番汽車にて出発せしむる由。また宮城
県は師団所在地にして、同社支部の設けもあれば
とて単に慰問として医員黒岩徳明氏に看護人1
名を付して出張せしめたるが、なお負傷者の模様等
に依りては、何時増遣の必要あるやも知るべから
ざるに付き同社は差し支えなき様準備中なりと。

●知事と警部長

 災害地視察中のところ、一昨日終列
車にて■■せり。