●南部海岸の 大 海 嘯
◎鮫港は無事
一昨鮫港、石田旅館の主人より発
せられたる短信に曰く、昨夜大海嘯、家屋漁船の流
失幾百なるを知らず。人畜死傷亦多し。午後八時半
に起こり、午前一時に終わる時や旧節句に際し、祝酒献
杯歓声市に湧くの時、何等の音ぞやとうとうとし
て、既に山の如く押し来たるは、これ海水なりき。余り
の意外に混乱雑踏言はん方なく、悲鳴号泣の声濤
声に和し天地に轟く。その惨状こそ言うもう■
で■れ。北部より岩手県に至る一帯の沿岸、皆此の
厄に遭う。何等の惨事ぞ唯り鮫港なる弊館は無事
云々。
◎百石三澤の惨況
別項に記載したる外、未だ何等の詳報もその筋に達
せざる由なるが、唯昨朝左の一報ありしのみ。
家屋の流失、または破壊したるもの、百
石、三澤の両村にて四百十一戸位
人民の死亡したるは百石村百三十
六人位、三澤村は百廿二人位。
その惨状想うに堪えたり。
◎濤声遠地を動かす
今回のつなみは如何に惨憺
たるものなりしや、上北郡野辺地村近辺にても再
昨夜一回の弱震起こると共に、遙かに耳を劈くばか
りの響き聞こえ、是こそ大地震の襲い来るものなる
べし、如何にしてや避けんなど、一時村民の周章狼狽
言わん方なかりし由。