社 告 大 海 嘯 遭 難 救 助 義 捐 金 募 集
縣下三戸、上北両郡、宮城縣、岩手縣に於ける今
回の大海嘯は慘害の餘りに激烈なりし爲乎報告
の達する迅速ならざりしを以て當初は差したる
禍害なかるへしと思ひしに其後詳報に接するに
從つて慘絶凄絶實に意表に出づる者あり本紙既
に精細に其實相を報じ江湖既に畧ぼ其慘状を了
するを得たらん是れ眞に未曾有の大奇禍にして
之を聞くもの誰が暗涙に咽ばさるあらんや
今や被害の沿岸、着るに衣なく食するに物なく
居るに家なく、衣食住の三必須共に之を欠くの
みならず更に生業に就かんと欲するも資料なく
機械なく彷徨乎として適歸する所を知らず累々
然として死に瀕するの窮民幾千人、官固より拯
激の方法を講するあるべしと雖も世間志士仁人
にして起つて事に從ふにあらすんば誠に以て周
到を望む可らさる者あり、本社乃ち其間に居り
微誠万分の一を表せんと欲し左の要領に依り救
助義捐金募集の事に從はんとす、惻隱の心ある
の人、相應する唯た其の迅速ならん事を希望す
と云爾
明治廿九年六月廿一日 東奥日報社
要 項
一金額 は一口十錢以上
一期限 は七月二十日限り
一送金方法 附近は現金にて送附あり度く遠
方は通常爲替、郵便爲替、爲替なき地に限
り郵券を代用するも可なり
一申込所 東奥日報社會計掛宛
一取扱方法 現金は受領次第、爲替の分は現
金を受取り次第其金額と氏名を本紙に廣告
すべし受領の金員は第五十九國立銀行靑森
支店に預け入れ置く者とす
一受領の証 は前項の廣告を代用し別に受領
証を出さず
一各地取次所 八戸及び其附近は取扱を八戸
三日町の靑霞堂、弘前市及び其附近は弘前
市土手町佐藤源太郎、黑石町及び其附近は
黑石前町岡崎守三方に依頼するを以て同家
に拂込むべし、本社は同家より送金を受く
るに從つて前項の方法を行ふべし但し同家
に對する拂込は現金に限る事と知るべし
一募金處分 募集の義捐金は滿限後十日間以
内に銀行より引出し一纏として縣廳に依頼
し救助費に供用す
東 奥 詞 藻
明治廿九年六月十五日夜陸前陸中陸奥
沿海大海嘯家屋流失人畜死傷■夥因有
此作 八木澤 汀
天柱折地維裂。洋海數聲巨極轟。怒濤蹴天海倒
三陸罹水災悵■賦二首 竹内 蘭山
夜色々海怒号號。忽■坤軸起洪濤。■匍匐浸江
■。■娟■霆一時■。 影■雪山百丈高。 江■■■
無由避。忽■草木渦中墜。三万余人同刻沈。 積屍
空作魚龍餌。哀魂悲魄招不幸。 五■雲散海山翠。
荒凉風物湧天地。千村万落在何處。 ■看飢鳥着泥
淤。狼藉■屍古渚■■吏無骨肉■収去。 落日光雲
白沙■。 往々埋没猶求助。嗚呼死者悵已乎。 午者
凄凉亦失途。兒離又母妻別夫。 海若兮海若底事爲
暴逸。積水雖乾此恨■盡日。
仝
濁浪落兮海神還。沙留漲痕在碧山。 ■厦■棲成泡
沫。空看草木■人間。三万之魂迷波底。 驚濤拍岸
暫不■。哀叫干■■■■。慓淪■■末去顔。 悲哉
九死得生者。■■■骸奇人寰。 居■茅屋飢餓食。
漠々長汀何處■。■■老■■掩涙。 雲宵別■恩波
至。君不■聖■■■■遺民。慈仁■於海水■。