進歩黨嘯害の救濟方針
大嘯害の救助と善後策に就ては余輩は旬日前よ
り反覆して卑見を披瀝したる所なるが前号紙上
に紹介したる進歩黨救濟方針なるもの能く余輩
の意を得たるが故に重複を憚らず一二解説を試
みんとす
進歩黨は救濟方針を二期に分かち、第一期に於
ては災民を生存せしむべき救助費及び取片附運
搬等の費用は刻下の緊急費として遅滯なく國庫
第二豫備金より支出すべしと云へり、是れ當に
然らざる可らざる所、政府當局者にして若し其
職責に忠實にして災民を愛惜するの誠あらしめ
ば此等の費用は災後直ちに支出すべかりし一ヶ
月を經過したる今日漸く支出を决するに至れる
もの余輩の政府の不親切と疎漫を鳴さヾるを得
ざる所なり
然れども進歩黨救濟方針に就て本縣との關係特
に新設なるものは第二期に在り、盖し本縣の如
き三縣中被害尤も少なく災民の生活費、取片附
費、運搬費の如きは甚だ多からず最大の傾心を
要するに善後事業にあればなり
進歩黨救濟方針の第二期は即ち善後策の方針に
して其趣旨專ら戸口の癈絶を防ぐに在り、以爲
らく適當の方法を講じ戸數の癈絶を防ぎ町村を
減せず海産 復 舊の救濟を爲すは國家の務なり
と、正に是れ余輩が旬日來數篇を累ねて救濟し
たる災民散逸防遏論の趣旨と符節を合するが如
し
進歩黨は第二期救濟方針を解説して曰く第一期
の處分の■■たるは勿論なれども第二期の處分
も亦急を要し决して第十通常議會を待つ能はず
何となれば漁業は一般に夏秋の候を以て好季と
す特に被害地には夏季の漁業多しと聞く第十議
會を待て之が救濟をなさんには夏期より冬期に
亘り本年の漁業を癈し其間災餘の窮民は四方に
流離散乱すべし故に國家は速かに救濟の策を施
さヽる可らずと
余輩は數日來本縣當局者に促かして以爲らく善
後の急務は災民の散逸を防ぐに在り今本縣被災
地の實情を視るに此の數月間は猶ほ漁業に從事
するを得るが故に速かに就業の道を授くべし若
し之を施す事急ならずして空しく漁期を■尽せ
ば災民は散逸して沿岸漁業復舊の望なるに至る
べし盖し本縣災民の如き多くは北海道雇主と縁
故を有し冬期に至れば之に賴つて以て移住を謀
るものヽ多き恐あればなり故に今日舊態回復の
計を策するに就ては速かに就業の道を授けて漁
民の散逸を防くを最大急務とす當局者の施措唯
其の急ならさるを恐ると、今進歩黨の救濟方針
を見るに其の間唯だ廣狭言辞の異差あるのみ、
所論の精神より立言の体に至るまで恰も符節を
合したるが如し
余輩は國家的の救濟法より視て進歩黨に對して
滿腔の賛同を表すると同時に地方當局者に向つ
て此の精神に依つて速かに善後の計を急施せん
事を更に催告せざるを得ざるなり、費用最少に
して有功■大なる救濟法は此の外二なく又三な
し、經由は述べて數日來の所論に尽せり當局者
乞ふ速かに之を謀れ