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   ●嘯 害 善 後 策 内 定

去八日午前十時より内山下町内相官邸に於て臨
時會議を開き内務省よりは松岡次官三崎縣治局
長太田書記官久米參亊官栗原水野の両秘書官及
び勝間田宮城服部巖手佐和靑森の三縣知事も會
して種々協議を凝らし海嘯被害の善後策を内决
せり其大略は去る日曜日内相が歸京後官邸に開
きたる協議會と略同一にして唯其席には三縣知
亊加はらざりし故今回特に召集して協議せしに
其後の調査上被害の家屋人員の統計等に差違を
生じたれば彼■照合して略决定せし次第なり而
して其金額は第二豫備金七十餘萬圓中より支給
するに决し救助を受くべき■類の人員は
 第一 鰥寡孤獨の者
 第二 不具廢疾の者
 第三 生業を得る能はざる壯年
等にして右三種類に付第一第二の如きは先づ一
人に付金何圓と割合を定めて支給し又第三にハ
相當の農具漁具を與へ將來の生計を立てしむる
にあり其金額は七十餘萬圓の範圍内なれども三
縣の割當は此救助を得べき三種類の人員の多少
に依る次第なれば猶調査上三縣知事の打合を要
する亊もありて未定なれども大体の金額は已に
定まり去八日直に内務大臣より大藏大臣に照會
に及びたり尚ほ伊藤首相も去九日は歸京の筈な
るに依り直に閣議を開き全然確定に至るべしと

   ●嘯 害 救 助 の 方 法

海嘯善後策に就て國庫より支給する金員は總て
之を地方廳に保管せしむる筈にて内務省よりは
大体の方針を■■すれとも其巨細の方法は地方
官の適宜に定むる者なれば地方の情况に依り■
■異なる所あるべしといふ又曾て濃尾震災の際
は政府より救助すべき人員中に死亡者をも加へ
死亡者一人に付き金何■を支給したれども今回
の嘯害に就ては死亡者をば救助人員中に加へず
此等の弔祭■は義捐金を以て之に充つる方針な
りと

   ●佐 和 知 事 歸 る

曩に縣下海嘯災害善後策を齎らし内務大臣の召
に應じて俄かに上京したる佐和本縣知事は既に
嘯害に關する其筋の意向も决定したるを以て本
日の直行列車にて歸靑の筈

   ●富山洪水の誤報

富山縣富山市大洪水の亊は内務省への公報によ
り第一頁に掲載し置きたる如くなるが後報によ
れば右は全く内務省が富山縣知事よりの電文を
誤譯したるものにして實際流失したる家屋は僅
に二戸橋梁一ヶ所に過ぎず尤も浸水したる家屋
は數千に上ぼりしも人畜には死傷なしと云ふ思
ふに内務省が公報として世間に發表したる別項
の一報は如何に世間を驚かしたるや既に即夜窪
田參亊官までも派出して實地を視察せしむるに
至れるを以て見れば世間皆曩に三陸大海嘯の悲
慘亊と共に■て至れる大洪水の爲めに痛く近來
同胞の大不幸を悲嘆したるなり是れも畢竟内務
省が輕卒の然らしむる所當亊者の注意こそ望ま
しけれ

●大海嘯善後地球磁力の變動

 震災豫防調査委
員中村精男より去月十五日三陸地方大海嘯前後
地球磁力の變動に關し同會へ報告したる要旨左
の如し
 明治二十七年一月十日愛知縣下に烈震ありし
 際名古屋に於ける磁力計は■地震に先つこと
 七八日前より著しく一種異樣の變動を示せし
 事は當時既に報告せり其後十月二十二日山形
 縣下酒田附近大震の際に於ける磁力計の模樣
 を調査するに地震前凡そ一週間前より仙臺の
 磁力計は著しき地球磁力の變動を示し而して
 東京及名古屋の磁力計も亦多少の變力を示せ
 り但し東京に於ける變動は仙臺のものに比す
 れは遙に微弱にして而して名古屋に於けるも
 のは東京に比して更に微弱なりし斯の如く地
 球磁力の變動は酒田地方を距ること愈々遠き
 に從ひ益々微弱と爲りしを以て之を考ふれは
 此現象も亦酒田地方の大震を讓しつヽありし
 地下變動に原因せしこと殆と疑なきが如し
 今又去月十五日三陸地方大海嘯の際に於ける
 地球磁力の模樣を調査するに仙臺に於ては同
 十一日頃より水平分力竝に多少の變動を起し
 大海嘯の前日即ち十四日には特に著しき變動
 を示せり東京に於ても亦稍々微弱なから殆と
 之と同樣の變動を呈せり然るに名古屋に於け
 る磁力計は毫も異象を呈せさるを以て之を■
 れは今回の磁力變動も亦地震を起すへき地下
 の變動に基因したること殆と疑ふへからす果
 して然れは去月十一日頃より既に三陸地方の
 沖合に於て地下に變動を起しつヽありて十五
 日に至り海中に地震を起し遂に大海嘯を來せ
 しならんか而して若し根室地方に於て既に磁
 力計の設置完備し居たらんには同地に於て偏
 角に變動を來せしと否とに依りて略々震原の
 遠近を判定することを得しならんか不幸にし
 て同地の磁力計は尚ほ設備中にして調査上の
 好材料を缺きたるは特に遺憾とする所なり

●横澤弁二氏

 今回の海嘯は氏が鄕里三澤村沿
岸一帶に害を及ぼしたることなるが氏は海嘯當
時より今に至るまで四方に奔走し救助其他万事
につき全力を投して尽されたる爲め地方の人々
は痛く氏の勞を稱し居るとぞ

●支部出張醫

 縣下海嘯の報に接し直ちに赤十
字社本縣支部より派遣せられたる救護醫員は成
田敬爾、日向新三郎の兩氏なるが僻村にして万
事不自由極まれるの地而かも赤十字東京本社の
派遣醫を扶けて日夜熱心尽力したるの功は亦嘯
害地人民の忘るヽ能ざる所なるべしと

●第二回の慈善會

 今回町民の大賛同を得たる
嘯害救助慈善音樂幻燈會は両三日中に海嘯慘状
の新映画數十枚到着する由にて之を以て更らに
大に町民の慈善に訴ふる所なかるべからずとの
事にて發起人諸氏には來る十七日頃再び開催す
べしとの事なり

●第五聯隊下士の義捐

 歩兵第五聯隊第一、第
六、第八の各中隊の准士官下士一同には何れも
醵金を本社に送りて三陸海嘯罹災民の救恤義捐
に供したり

●四ッ石小學校の義捐

 東津輕郡横内村四ッ石
尋常小學校職員及生徒一同には今回の海嘯に付
大に同情を■し募集し得たる救恤義捐壹圓五拾
錢を本社に依賴せん爲め昨日の雨天にも係らず
四名の生徒わざ々々遠路をも厭はず來社せり義
の程こそ賴もそけれ

●共和組の義捐

 當地濱町旅店番當等の組織し
居る共和組にては今回の三陸大海嘯被害者の爲
めに義捐金を募集し第一回の分は既に本社へ依
賴し來れるが尚一同の奮發にて第二回の醵集を
爲し居れる處略ぼ纏まりたれば再び之を本社に
依賴し來れり

●菊池代議士

 嘯害地視察に趣かれたる菊池代
議士は昨日來靑中列車にて歸弘せり