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津波、黒潮を寄せる とくしま丸第一報 一挙に豊漁の夏型へ

県水産試験場は二十七日「大津波の影響で、海は一挙に夏型へ好転した。イワシ
はもとより、漁期のおくれているカツオ、アジなどの漁獲も、かえって期待がも
てるようになった」と発表した。
 大津波にやられた県南沿岸の漁
民は、最盛期のイワシ漁にも出ら
れない。流された漁具を補充する
ことはできても、心配なのは海の
荒れようだ。「操業はできないの
だろうか」と沖をながめる暗い顔
に、これは思わぬ朗報だった。
 県水産試験場は、津波に襲われ
た翌日・二十五日から調査船・と
くしま丸(三二トン)を出している
が、これはその第一報。引き続いて
て荒れた海の変化を調べている。

試験場の発表

▽…津波のた
めに変化の大
きかったのは、表層から中層(○
ー五〇メートル)。下層への影響は少な
い。表層は室戸岬沖から県南沿岸
へ北上する黒潮の分岐流が強く張
り出し、表面では二一度の暖流水
が沿岸から八〜一〇キロメートルまで接岸、
海部郡由岐町の沖合までのぼって
きている。日和佐町の阿瀬比鼻沿
岸には暖水が停滞し、イワシ魚群
が密集していた。
▽…中層は海水がわいたり沈んだ
りして複雑な変化をみせ、下層は
沖から岸に向かって低層水がゆる
く浮いている。とくに水温の変化
が激しい海層は一〇〜二〇メートル層で
一九度から二一度ぐらいあった。
▽…こんどの津波は黒潮の主流を
いっぺんに接岸させ、その分枝流
の北上を助けて夏型の海況に好転
させた。このため、漁期のおくれ
ている暖水性の魚(カツオ、アジ
など)も期待が持てるだろう。