文字サイズサイズ小サイズ中サイズ大

津波被害さらにふえる 死者行くえ不明百五十人  負傷七百人に及ぶ

北海道、本州、四国、九州の太平洋岸一帯を襲った二
十四日の大津波は各地に大きな被害を出した。とくに
北海道、岩手、宮城、青森三県の三陸沿岸地方がひど
く、岩手県陸前高田市、大船渡市、宮城県志津川町は
ほとんど全市街が被害をうけた。通信連絡の復旧とと
もに被害はふえているが同日午後十一時現在、共同通
信社の調べによると死者八五、行くえ不明六九、負傷
六九六人に達した。このため十一市十三町村に災害救
助法が発動された。国鉄各線の被害も大きく、八戸線
など七線、十七区間の復旧見込みはたっていないが、
欠航していた青函連絡船は同日夕刻から平常ダイヤに
復した。津波の今後の見通しについて気象庁ではほと
んど心配はないといっているが、三陸沿岸では二十五
日朝まで警戒を要するといっている。

自衛隊十隻も現地へ

防衛庁は二十四日早朝、六管区
隊、九混成団の陸上自衛隊員四千
人を八戸市など三陸沿岸の各被害
地へ急行させたが、同夜六時、さ
らに東部方面隊の給水、通信、輸
送、防疫などの各隊七百人に出動
命令を出した。
 一方、階上自衛隊も二十四日正
 午、自衛隊十隻を三陸沖に急行
 させた。これらの船は二十五日
 朝十時までには三陸沖に到着、
 遭難漁船の救助に当たる。また
 海陸両自衛隊のヘリコプターな
 ど二十機も出動した。

24市町村に 救助法を発動

二十四日午後三時までに厚生省に
はいった報告によると、津波被害
のため災害救助法が発令された市
町村は次の十一市十一町二村とな
った。
 ◇北海道=浜中村霧多布◇青森
 県=八戸市◇岩手県=大船渡
 市、陸前高田市、釜石市、宮古
 市、大槌市、山田町◇宮城県=
 気仙沼市、志津川町、雄勝町、
 女川町◇三重県=尾鷲市、南島
 町、海山町、紀勢町、北牢●郡
 長島町、南勢町◇和歌山県=田
 辺市、白浜町◇徳島県=阿南市
 ◇高知県=須崎市◇鹿児島県=
 名瀬市、笠沙市。

霧多布部落(北海道)全滅 八戸市に余波三十数回 大船渡市、連絡絶える

札幌=昭和二十七年の十勝沖地震
につぐ被害でとくに釧路と根室の
中間にある漁港湾中村がひどく、
災害救助法が発動されたが、同村
霧多布地方では四百八十戸のうち
家屋全半壊百七十戸、流失家屋多
数で部落はほとんど全滅、死者六
人、行くえ不明四十人を出した。
同村琵琶湖では約二十人が家もろ
とも流され救助を求めていたが、
うち十人は現場に向かった巡視船
に救助され、残り十人は行くえ不
明となった。同村の被害状況はそ
の後通信線の切断のため不明。こ
のため釧路から救助船や巡視船が
物資と医療品を積んで救助に急行
した。
 一方、函館でも床上浸水七百三
 十三戸、床下浸水五百七十七戸
 を出した。また海上被害は九十
 九隻が沈没、破損した。
八戸=八戸市の被災民約五万人は
不安におののきながら二十四日夜
を迎えた。八戸地方気象台の検潮
儀は二十四日午前五時三十六分か
ら同八時二十八分までに十九回の
津波を記録、その後、午後五時ま
でに計三十数回の津波を確認し
た。被害の大きかったのは浜通り
の低地帯。津波の引いたあとはま
るでゴミ箱をひっくり返したよう
な荒れようだ。馬渕川の二角洲地
帯にある工場街の被害もひどい。
堤防が決壊したため両側に並ぶ工
場街は日曹製鋼が完全に機能を停
止したほか東北電力火力発電所、
日本高周波、中外製鋼、日本化学
などが軒並みに多大な被害を受け
た。また小中野町にある市営第二
魚市場の水揚げ場が陥没し、秋ま
で使用不能。漁船の被害も三百
隻にのぼると予想され、八戸市の
損害は百億円を越える見込みだ。
盛岡=二十四日午前三時半ごろか
ら三陸沿岸一帯に異常潮位を記
録、津波警報と避難命令が出され
た。午前四時ごろから同五時半ご
ろまでに三回にわたり三−四メートルの
津波が押し寄せ、沿岸住民は昭和
八年の三陸大津波のときのように
サイレン、半鐘を鳴らして高台に
避難した。岩手県警本部入報によ
ると、宮古市では山ぎわを除きほ
とんど全市が水びたしとなり、流
失七、八十戸にのぼった。また大
船渡市では浸水、流失合わせて一
千戸を出している。なおこのため
沿岸方面の交通は不通個所が続
出、大船渡市は警察、市内電話と
も断線、詳細不明である。
石巻=石巻市内は三分の一、五千
戸以上が浸水、むっとする泥水の
悪臭が鼻をつく。二十四日午後四
時ごろ市内を流れる北上川の水が
高潮に押され始めた。市内の中央
にある内海橋は流木で危険となり
通行止めになった。高潮は夕刻と
ともにおさまり始めたものの、な
お断続的な波が押し寄せ、市民は
夜にはいっても高台の避難先を離
れようともしなかった。一方、港
内は流木と大破した数十隻の漁船
が港いっぱい、押し寄せる大波と
ともにきしりあい、余波はなお続
いた。
和歌山=和歌山県の海岸地方は二
十四日早朝から二−四メートルの高潮に
襲われた。潮岬側侯所袋検潮所の
調べによると、同日午前四時五十
分袋港で四・一メートルの最高位を記
録したのをはじめ同六時半までに
三回にわたって高潮に見舞われ
た。県警調べによると勝浦、白浜
方面でも二メートル前後の高潮があり、
白浜では民宿二百八十戸が床上浸
水したのをはじめ、田辺市では床
上、床下各二百戸、海南市日方で
は床下百戸がそれぞれ浸水した。
田辺市の紀南精神病院ではベッド
の上まで浸水、患者百五十人は付
近の山の上に避難した。
高知=須崎市、岩毛市、土佐市な
どの海岸地帯では二十四日午前九
時半ごろ六回目の津波が押し寄せ
た。とくに須崎市では水位二メートルに
達したが、その後午後六時十分ご
ろの満潮時に七回目の高波に襲わ
れ、家屋の全壊七戸、半壊三十二
戸、流失一戸を出した。これで須
崎市の被害は負傷者一人、行くえ
不明一人、全壊九戸、半壊四十六
戸、流失二戸、床上浸水五百八十
一戸、床下浸水四百六十九戸とな
った。

各地の被害状況 24日午後11時現在・警察庁調べ

      北海道 青森 岩手 宮城 三重 和歌山 高知 鹿児島
死者      11  1  38  31  
負傷者     12  3  50  626          1   2
行くえ不明   40  3   8  17 1
家屋全壊    293   7 371 559 4 2 9
〃 半壊   162 45 883 161 85 10 40
〃 流失    250 14 814 544 3 2
床上浸水   1923 941 3253 9198 3490 896 591 594
床下 〃 642 416 1393 5339 2890 1680 623 1000
橋流失   2 2 1 8 6 1 2
堤防決壊   2 3 7 7 27 1 8
船沈没     52 1 4 4 2 2 4 3
〃流出     110 175 265 1188 31 5 4 3
被災世帯 1266 1873 5427 10160 3580 1282 789 594
被災者    6118 9749 27515 50000 16177 5128 2980 2970

一億円を突破か 県下の土木被害25か所

県土木部は土木関係の被害を調査
中だが、いまのところ被害個所は
二十五で、被害総額は八千九百四
十五万円とみている。しかし調査
がすすむにつれて被害額は一億円
を越すもようである。被害状況は
つぎの通り。(被害額は単位千円)
【港湾】橘港、由岐港、日和佐港、
浅川港の防波堤、護岸など延長六
百三十メートルがこわれた。=四八、
四九〇.
【道路】二級国道高知ー徳島線が
阿南市橘町高田および●付近で三
百八十メートルが決壊。同線の擁壁三百
十メートルがこわれた。=二九、五〇〇。
【海岸】阿南市橘町の護岸が百九
十メートル決壊。=三、四〇〇。
【河川】海部郡牢岐町瀬戸川、阿
南市福井川の護岸が二百二十四メートル
決壊。=八、〇六〇。
 このほか農務部関係では県南の
 早期米の植え付けが終わってい
 た五百ヘクタール以上が塩害を受けたも
 のと見られており、商工水産林
 務部でも海岸ぞいの保安林が海
 水を吸って枯れるのではないか
 といっている。

目立つ船の被害 橘町の浸水家屋は千戸

県警本部では二十四日午後十時
県下の被害を最終的にまとめた。
同日正午現在の集計とくらべ、浸
水家屋はほとんどふえていないが
木材流失、船舶破損が激増したの
がめだっている。また打撃のもっ
ともひどかった阿南市橘町(戸数
約千戸)の家屋被害はこの集計で
は阿南市のなかにふくまれている
が、同町は床上浸水約七百戸、床
下浸水約三百戸で、町内の全戸に
わたって浸水している。
 なお県災害救助本部は二十四日
 午後二時、津波の被害のひどか
 った阿南市全域に対し災害救助
 法を発動した。同本部の調べに
 よると阿南市では橘町を中心に
 災害救助法の適用できる限度
 (人口五万ー十万の市町村では
 床上浸水●百四十戸)をはるか
 に上回ったため、救助法を発動
 したものである
県下の被害内わけつぎのとおり。
【床上浸水】千五十五戸=被害地
域▽阿南市千三十二戸▽海南町五
戸▽海部町一戸▽牢岐町十七戸
【床下浸水】千三十二戸=▽阿南
市六百八十戸▽牢岐町二百戸▽海
南町八十戸▽由岐町六十二戸▽海
部町五戸▽日和佐町五戸
【非住家全壊】八戸=阿南市橘町
四戸▽同福井町一戸▽日和佐町三
戸【非住家流失】二戸▽阿南市橘
町一戸▽同福井町
【田畑冠水】百八十九ヘクタール=▽阿南
市橘町三十五ヘクタール▽同福井町八十ヘクタール
▽同椿町四十ヘクタール▽日和佐町一五ヘクタール
▽海南町八ヘクタール▽牢岐町五ヘクタール▽海部
町六ヘクタール
【畑の流失】一ヘクタール=▽阿南市椿町
【道路決壊】二か所=▽阿南市橘
町●で県道五百メートル▽同町橘で四
百メートル
【堤防決壊】十か所=▽阿南市橘
町二か所▽同椿町二か所▽同福井
町五か所▽同大潟町一か所
【通信施設被害】七か所=阿南市
橘ー同福井間の電話線
【木材流失】四千九百八十一石=
▽徳島市四千五百二十一石▽海南
町浅川百三十石▽海部町二百三十
石▽栄喰町百石
【船舶被害】三十六隻=▽栄喰町
十七隻▽阿南市福井町十四隻▽日
和佐町二隻▽海部町一隻▽鳴門市
二隻

余波、きょう中は続く

徳島地方気象台では二十四日午前
六時五十分、県沿岸全域に対し
「津波警報」を発令したが同日午
後「二十五日も小さな津波の心配
があるので、県沿岸全域とも注意
するよう」警告した。同気象台が
二十四日朝、小松島検潮所で記録
した津波の振幅(波の最高、最低
の差)は午前五時十分が六十五
センチ、午前五時五十五分が一・一
メートル、同六時三十五分が一・四七
メートル、同七時十分が一・五メートル、同七
時三十分が一・三メートルで、第四番目
に押し寄せた波がもっとも高かっ
た。これ以降波は急に小さくなっ
たが、振幅は三十分から一時間の
間隔で夕方まで記録された。
 これらから判断して同気象台で
 は二十五日いっぱいは県下全沿
 岸とも注意する必要があるとし
 ており「海釣り、潮干狩りはな
 るべく行かないよう」警告して
 いる。

大津波をまともに受けて陸上に打ち揚げられた漁船郡(八戸市で)共同特別機から=電送