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進まぬ被災地の復興 チリ地震津波から一週間 二十四日未明、チリ地震が太平洋沿岸

各地に猛威をふるってから一週間たった。
東北、北海道の被災地ではいま夜を日につ
いで復旧作業が進められているが、被災者
のほとんどが零細漁民だけに、生計の道を失った人々の表情は
暗い。津波の襲来を気象庁より先に予測して刑法を発した人々
の“経験とカン”がたたえられる半面、政府の怠慢をいきどお
る声も強く、今後の津波防止対策についても「政府が本腰をい
れくれなければ…」とお役所仕事の頼りなさをうらむ声も出
はじめている。各地の実情をみてみよう。

まだ残る“陸の舟” 住宅対策もはかどらず

岩手県 大船渡、陸前高田
両市では道路の整
備が三十日で一応終り、建物の取
片付けもここ二、三日ですむ予定
だが、大船渡ではまだ十六隻の船
が陸にのしあがったまま。鉄道の
復旧も、六月二十日すぎまでかか
る見込み。こんどの津波ではよも
やと思った場所が大きな被害を受
けたので、一時的な復旧よりも国
が恒久対策に本腰をいれなければ
安心して暮らせないと心配してい
る。        (大船渡)
 被災地は養殖のノリ、カキが壊
 滅的な打撃を受けた。また小型
 漁船の流失、大破で手取り早い
 現金収入のワカメ、ウニ漁にも
 出漁できないありさま。つなぎ
 資金の融資や漁船保険の払戻し
 などで、六月中旬から始まるイ
 カ釣漁には出漁できるようにし
 たいと努力している。(釜石)
宮古市では田植、畑仕事、ブリの
夏網などの季節とかち合い労力不
足が目立っている。復旧対策への
不満は住宅建設が遅れていること
だ。低地の住居を高地に移すこと
あるいはコンクリート三階建など
にし二階以上を住居とするなど都
市計画の練り直しが考えられてい
る。         (宮古)
県は三十日、臨時県議会を召集、
応急救助費など二億四千二百五十
三万余円の追加予算を決めた、根
本的対策としては、国が伊勢湾台
風同様の特別立法を制定すること
だと陳情団が大挙上京して政府の
シリをたたくことになっている。
           (盛岡)

国の打つ手を待ち望む

宮城県 被災地には福田
農林、楢橋運輸、
村上建設各相をはじめ自民党代議
士などが視察に来て「特別立法に
よる救援措置を講ずる」と言明し
ているが、ききめはサッパリ。空
白国会ではとてもあてにならない
と疑問視されている・
 このため北海道、青森、岩手、
 宮城、福島の一道四件は二十九
 日に仙台に集まって協議、特別
 立法促進にハッパをかけること
 を決めた。
被害は水産関係が最大でカキは全
滅、定置網は根こそぎ流され、小
型漁船もこわれた。漁民は生計の
手段を失っていまだにぼう然とし
ている。
 「小さな町の力ではもうどうに
 もならない。国の大きな力が必
 要だ」というのが被災地の心か
 らの叫びである。
また警報について気象庁の信用は
ゼロ。半面、牡鹿郡雄勝町では警
報の出る五十分前に海の異常に気
付いた老人の急報で避難したため
一人の犠牲者も出なかったが、各
地で同じような話があって感謝さ
れている。「国でしっかりした津
波観測施設を作れ。津波の被害に
比べれば安いものだ」と県民はい
きまいている。    (仙台)
北海道 北海道最大の被災
地、厚岸郡浜中村
霧多布へ通ずる五キロの道路はどう
やらバスが通るまでになったが、
流された二つの橋の復旧はようや
く仮橋の測量準備ができただけ。
まだ千五百人が七ヶ所に収容さ
れているが、国費の仮設住宅建設
計画は被災戸数の三割の五十八戸
だけ。それも一両日中に着工とい
うスローモーぶり。
 問題は失った大小漁船二百六
 十隻の建造だが、八月のコンブ
 漁期までに間に合わせるよう全
 額国費補助を要望している。
また防潮堤を作ることや海産干場
(コンブ)を村営で作る計画も進
めているが、地元には自力で復興
する力がないので、一切の復興は
国費、あるいは道費に頼るほかな
いといっている。   (釧路)