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波長の長い『チリ地震津波』

【仙台】チリ地震津波を科学的に究明する国立七大学の共同調査に参加した東北大理学部は、地球物理班=加藤愛雄教授=と
地学班=今野円蔵教授=の二班に分かれて約二週間、被災地の現地調査を行なった。これまでにまとめたところによると、チ
リ地震津波は①昭和八年の三陸地震津波より津波の周期、波長がいずれも長かった②外波に直角に面した湾の被害は湾入度の
大きさに比例し③大体V字型湾は湾口の二−三倍、U字型湾は約
二倍に波高が高まったなどが明らかになった。

東北大で中間報告 V字型湾に大被害

チリ地震津波は遠隔地で発生し
た地震によるものだったたね波
長の短かい波は太平洋上で消滅
し波長の長いものが襲った。
波長の短かい三陸津波(昭
和八年)が小さな湾に大きな
被害を与えたのと反対に、今
回は大きな湾が全体として影響
が大きかったほか、塩釜港のよ
うに松島湾の奥にあり、大小の
島が防波堤的役割を果たしてい
る地点まで襲い、また追波湾に
流入する追波川の上流八キロにあ
る福地建設省推移観測所で、河
口と全く同じく第一波の波高が
三十センチを記録したこと、さらに
牡鹿半島の石巻湾側にある石巻
市桃の浦、荻ノ浜部落にまで回
りこんで襲い“津波の影”がで
きなかったことなどが明らかに
示されている。
 周期は各地とも大体四十分前
 後と一致しており、三陸地震
 津波の約三倍になっている。
 波高測定によると、湾の入口
 の波高は湾の中に入って深さ
 が浅くなり幅が狭くなるにつ
 れて自然と波高が高くなり、
 これに湾の固有振度が共鳴し
 た。
大渡船湾では湾口の波高が二メートル
だったのに対し、奥の大渡船市
埋立地では四−五メートルを記録し
た。これがV字型湾は二−三
倍、U字型湾は二倍の比率にな
っている。
宮城県の津谷湾と志津川湾の波
高は三陸地震津波の時と全く逆
の記録が出た。これは半月型の
津谷湾と湾入度の大きいほぼV
字型湾の深い谷で刻まれた志津
川湾との地形差によるもの。
被災状況から見ると、大体三陸
地震津波のとき被害の大きかっ
たところは今回被害が小さく、
前に被害の小さかったところが
被害が大きかった。
 これは三陸地震津波は波長が
 短かかったため、外洋に面し
 た海岸、小さな湾が被災した
 が、防潮堤、防潮林を築いた
 ので、今回は被害を最小限に
 食いとめた。一方、今回被害
 の大きかった町村は、大部分
 いままで津波による被害の経
 験が少なく、したがってほと
 んど無防備だった。

役に立った「やぶ」
津波に対する防潮林は幅員五十
メートル以上のもので、枝下のブッシ
ュ(やぶ)がなければ効率が小
さい。志津川の防潮林は下草を
刈り公園化していたため、波に
対する抵抗力を弱める結果とな
った。防潮堤は高さ四メートルが最小
限、宮古市や牡鹿半島鮫ノ浦湾
ないの大谷川部落などは高さ四メートル
の堤防のために難を避けること
ができた。
 同大では今月末までに調査資
 料を整理、結論を出す。