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関西大地震の被害深刻

二十二日十七時現在
家屋損失四萬九千
惨禍二十四府縣に及ぶ
二十一日西日本を襲った大地震の被害は二十四府縣(和歌山、徳島、高知、香川、愛媛、三重、滋賀、
兵庫、大阪、奈良、愛知、岐阜、長野、静岡、岡山、廣島、島根、鳥取、大分、宮崎、福岡、佐賀、熊本
長崎)に及び一報毎に被害は増大しているが、二十二日午後五時現在内務省調査によると次の通り
 ▽死者六九二▽負傷者八二四▽行方不明一〇二▽住家全壊四、七八〇▽同半壊一〇、五〇九▽流失
 二、〇七五▽非住家全壊六九六、同半壊六五二、同流失三▽工場その他全壊一六、半壊一二▽浸水
 家屋二五、八九七▽船舶流失破損二〇八五隻▽この他新宮市で火災のため焼失約三千五百
なおこの数字には高知縣西部、和歌山縣田辺市以南、徳島縣の一部の最も被害の多い箇所が連絡不
能のため報告が来ないのでこれを含すれば更に増加する

各府縣被害状況

 二十一日午後一時現在各縣被害状況次の通り(大阪発)

    死者  傷者  行方   全壊    半壊   流失    浸水   船舶
            不明   家屋    家屋   家屋    家屋   流失
大阪  二三  二六   七   二一八    —    —     —    —
兵庫  九四  七〇   —    九三〇  一、四五五  —    七八六   —  
和歌山 二九   八   三〇   三八二   一二七  一、二五六 七、〇一〇 四八一
奈良   〇   九   —    四八     —    —     —    —
鳥取   —   —   —    二〇    一一    —     —    —
島根  一〇   四   —    七〇    七五    —     —    —
岡山  四九  一五二  —   七七七  一、九九九  —     —    —
廣島   —   —   —    四二    三二    —     —    — 
徳島  一六一  三八  四八   九一一  一、五二二 二五九  四、八六九 二七六
香川  三五  五五   —   四二二  一、一二七  —     —    —
静岡   —   —   —    —      —    —    五〇〇   — 
愛媛  二三  三二   —   二二三   四三五   —     三〇    —
高知  一四二 二六二  二二  一、三九七 三、一一〇 四〇五  三、二二三 九五四
愛知   八   一六   —    七九    一四七   —     —    —
岐阜   三   四一   —   五五〇   七四七   —     —    —
三重   九   三一   —   一二九    九八   二三   一、八〇五  —
合計  七一九 七四四 一〇六  六四一三  一一一六〇 一九四三  一一八一三 一七一一

火・水・飢えと寒さに悩む

【大阪発】震源地熊野灘に最も接
近し大津浪に洗われた和歌山縣東
南岸地区の状況は通信、交通機関
破壊のため二十二日正午現在正確に
知り得ないが、新宮市が火災で三
千五百戸焼失し、潮岬では家屋一
千戸東海市、全滅に近い被害を受
けていることを思えば災害の深刻
さは容易に想像される、また紀州
海岸線と同様に前後三回にわたつ
て大津浪に襲われた高知縣西方海
岸並に徳島縣南方海岸の被害も大
きい、これら震災地へは目下各府
縣の救援隊が入りつつあるが、紀
南、高知方面では食糧不足まで見
られ無情にも紀州の空を覆う薄雲
は時々小雪さえちらつかせ、被害
者の身の上が案じられている

新宮市の七割焼失

【尾鷲発】地震後まもなく新宮市
の西部大王地科理屋江戸川附近か
ら出火したが、水道管の破裂で断
水したため警防團必死の活動も及
ばず火は見る見るうちに四方に拡
大、本町、黒町、仲ノ町、別当屋敷
方面へひろがり、午前十一時半ま
でに全市各町堀端、日之出通り、谷
王地をなめ○し一たん鎮火した
が、北西部にのびた火の手は本鍛
冾町、速玉神社に向つて西進、更
に逆に轉じて本町、船町、大橋通
りをなめ、ダイナマイトによる廣大
な家屋疎開によつて二十二日午前七
時漸く鎮火したが焼失家屋は三千
五百戸(約七割)に達した
 なお新宮署では救護本部を設け
 て二十二日には一万余名の被害者
 を寺院に収容、非常き炊出しを
 行つている、食糧は三重縣から
 の救援米四百俵が二十二日到着、
 非常用乾パンの放出で目下食糧
 の不安はない

宇佐町津浪で全滅

【宇佐発】新宇佐町は救護後の三
回の津浪にのまれ全町廃きよと化
した、第一回の津浪で同町の繁華
街旧宇佐の一千戸は水浸しとなり
十分後に襲つた第二回で床上浸水
一千八百戸、三回目には海岸べり
の約三百戸を倒壊した他に更に四
百戸を海中に飲み込んでしまつた

ご難続きの紀南地方

【大阪発】紀南地方の状況は交通
通信途絶のため依然不明で火災を
起し全滅にひんしていると傳えら
れる新宮市、串本町をはじめほと
んど水びたしといわれ、田辺以来
の紀南沿岸各地の状態は頗る憂慮
されている、和歌山(人口九万三
千)、海南(三万一千)、田辺(三万
五千)、新宮(三万一千)の各市は
戦時中も相当の被害を受けたが元
来この地方は米不足の上交通不便
のため最近の米等のヤミ値は日本
一といわれていた、目下救援調査
隊は大阪並に三重縣方面から海と
陸づたいに同方面に急行している

大阪で関係地方長官会議

「緊急措置協議会」設く
政府はこの度の震災の調査救済復
興をめざして「南海震災緊急措置
協議会」を内務省内に設置に決定
二十三日の次官会議で具体策を練る
が、現地方面の情報を聴取のため
大阪で関係地方長官会議を急速に
開き、また本省の許可、認可等の
権限を地方行政事務局長に委託す
る、なお協議会委員長は大村内相

救済に全力

飯沼内務次官談
救済対策治安確保について飯沼内
務次官は次の通り語った
 被害は廣範囲にわたり現在のと
 ころ高知の五万五千、和歌山の
 二万八千を初め被害者は三十万と
 予想されるが、万一の事態に備
 えて被害地と隣接各縣に対し手
 持の救済物資はできるだけ放出
 することと治安維持のために警
 備隊に万全を期するよう指令す
 ると共に詳細調査のため係官を
 派遣、その報告を待つて第二段
 の対策をたてる

大阪から救援物資

【大阪発】和歌山から大阪府へ物
資の救援を依頼してきたのでとり
あえず乾パン二十万食、かん詰十万
食、梅干、つけ物類約十万食分を
急送することになり、住友会社の泉
丸(二百四十トン)が二十二日午後五
時大阪出港和歌ノ浦に向つた、ま
たローソク三万本、石けん一万三
千個も同日トラックで現地に発送
毛布一万五千枚及び外とう、足袋
なども急送されるはず

衆院慰問團現地へ急行 西日本

震災地に向う衆議院慰問團は二十二
日午後八時東京発現地へ急行した

世界の関心集る

グリニッチ標準時二十日十九時二十分日本
に大地震起るの報道は、米英両国
はじめ世界各国で多大の関心を呼
んでおり、UP電報は海外放送の
大半を地震報道にさき「一九二三
年以上の大惨害」として被害の全
ぼうを傳え、APも「地震と津波に
襲われた日本の惨禍」として報道
今回の日本の災害に対する各国の
注目振りを如実に示している

震災地慰問團派遣を可決

衆議院本会議
二十二日衆院本会議は午後三時三十
五分開会、議長から西日本の震災
地に対し議員慰問團を派遣する件
をはかりこれを可決、ついで
 一、増加所得税法案
 一、有袈價証券の処分の調整等に
 関する法律案
 一、戦時補償特別措置法の一部
 を改正する法律案
 一、昭和二十一年度一般会計歳出
 の財源に充てるための公債発行
 に関する法律案
 一、食料管理特別会計法の一部
 を改正する法律案
 一、昭和二十一年帝国鉄道会計又
 は通信事業特別会計における昭
 和二十一年度の経費支弁のための
 借入金などに関する法律の一部を
 改正する法律案
 一、政府の契約の特例に関する
 法律案
を一括上程、稲田直道委員長(自)
から委員会の審査経過を報告可決
同三時五十分散会した
貴院本会議
二十二日の貴院本会議は午前十時十
二分開会、日程を変更して閣会法
を上程、質疑に入り
佐々木惣一(無) 政府は何故に
 議会法案を自身で立案しなかつ
 たか
植原国務相 政府も法制調査会
 で審議し立案していたが、国会
 運営の将来のため衆院で立案し
 たいとの申入れがあつたのでそ
 の希望に応じた
と答え、二十七名の委員に附託、つ
いで衆院議員選挙法第十二條の特
例等に関する法律案を上程、大村
内相より提案理由の説明後国会法
委員会に併託、さらに
(一)開拓者資金融通法案(一)開
拓者資金融通特別会計法案
を一括上程、和田農相並に上塚大
蔵次官から提案理由の説明後十九
名の委員附託、同十一時十分散会

山陽線客扱いは停止

  国鉄被害状況
【大阪発】二十二日午後三時現在国
鉄被害状況は次の通り
▽山陽線 二十一日単線運傳開通
したが客扱いは停止▽紀勢西線
御坊まで開通したが客扱いは停
止、なお通信線は紀伊田辺まで
開通した、全線回復は二十六日ご
ろお見込み▽宇野線 二十二日午
前九時開通▽吉備線 二十二日午
前六時開通▽土讃線 後免−
佐久礼間不通▽牟岐線 阿波福
井−牟岐間不通▽○予讃線 八幡
浜−宇和島間不通▽四国本州連
絡は宇野線の開通により二十二日
朝宇高連絡船の就航を見たが平
常の四割制限を六割に強化