関東大震災以上
中央気象台地震課談
地震発生時刻は二十一時午前四時十九分、震源地は和歌山の南西百キロ、東経百三十五度、北緯三十三度の地点で深度は不明、近畿南部、四国の東半部、岐阜、滋賀の一部は震度大で有感地域は廣く東北地方、九州まで及んでいる、この地震は一昨年熊野灘に起こつた東南海大地震よりも、また、関東大震災よりも大きく本邦付近に起こつた最大級のものである
強震 潮岬、和歌山、彦根、四国
中震 足摺岬の清水
弱震 米子、大阪、京都、亀山敦賀、名古屋、浜松、浜田、伊東、御前岬、静岡
軽震 宇都宮、東京
微震 福岡、柿岡
火山系は不明で調査中
外側地震帯の活動
東大地震研究所
荻原雄祐氏談
被害地の廣範囲なことと、その
大きさから見てその震源は太平
洋外側地震帯に属すると考えら
れる、太平洋外側地震帯は世界
二大地震帯の一つで環太平洋地
震帯の一部、ニュージーラン
ドから北上しソロモン群島を経
てフィリピン沖を北上、本邦太
平洋岸沿いにアリューシャン列
島からアラスカ、北米の太平洋
岸を南下して南米西岸に達する
ものである、この震度は陸地に
震源地の発生を見た場合よりも
数十倍ないし百倍位の大きさを
持ち大正十二年の関東大震災、
昭和八年の三陸大地震、昭和十
九年の東南大地震などはみな外
側地震帯の活動である、なお安
政元年十一月四日にも今回と同
様伊勢湾から紀州、潮区、九州
にかけて大地震があつた
山陽線 単線で開通
地震で不通となつた山陽線里庄−
笠岡間、西阿知−王島間及び万富
−熊山間はいづれも午後一時まで
に下り線復旧、山陽全線は下り線
で単線開通、これで東京始発東
海、山陽線行は平常どおりのダイヤ
となり従つて東京発廣島行急行も
大阪で打切ることなく廣島まで行く
ことになつた、なお十一時現在
の不通箇所は次の通り
▽紀勢東線 尾鷲−土砂柏賀間
崩壊、二十一日中に開通見込
▽紀勢西線 南部、芳養−紀伊
田辺間(二十五センチ上下線沈下)海
南−印南、岩代間同然、海南印
南、岩代は浸水
▽山口渓で上下線不通