雜 報
●大 海 嘯 續 報
前號の本紙上に掲載したる後其筋へ達したる電
報は左の如し
大谷村にて流失家屋九十戸、溺死男女四百人
階上村にて流失家屋九十戸、溺死男女四百人
餘、怪我人凡そ一百人
小泉村大島にても流失家屋多くあり部内にて
溺死者一千四百五十餘
人 (右氣仙沼警察署報告)
雄勝濱にて死亡者三十一人其内看守八人囚徒
七人重傷五人馬三頭死亡す流失戸數四十餘戸
船越濱にて行衛不明二十七人
大原村谷川にて女一人男二人女川にて女一名
溺死同村尾浦にて家屋流失し損害多し
歌津村にて死亡六百餘人負傷二百五十餘人、
家屋悉皆流失せり(同村は戸數
六百餘の大村なるが悉く流失したるものなり
と其慘状想ひ見るべし)
●釜石町流失
岩手縣釜石町長の通報に依れば字臺村と澤村の
内山手を殘すのみ警察署電信局始め全市流亡し
死傷者數へ難し役塲學校は無事
●第 二 報
釜石町字臺村澤村を除き家屋皆潰れ山口警部負
傷巡査部長外一名行衛不明又大槌町は家屋二百
餘戸潰れ死傷者三百名氣仙盛町の死傷者二千餘
巡査三名行衛不明なり
只今鵜住居村より海岸部落皆被害兩石村は全戸
流亡し死者千餘名あり
●盛 町 流 失
釜石町字臺村澤村を除き家屋皆潰れ山口警部負
同縣盛町人畜死傷無數又釜石市街も過半流失死
傷夥しく電信局も流失せり
●郵 便 物 流 失
雄勝濱海嘯にて郵便物も亦悉皆流失せり
●八 戸 海 岸 の 海 嘯
靑森縣八戸沿岸海上荒れ港、白銀の二ヶ所にて
民家の流失破壞人畜の死傷多し又十五日夜來遠
野以北釜石より宮古まで志津川より盛まで及び
八戸以北(以南か)久慈迄電信不通なるも右に原
因するならん
●雄勝出役所の被害
宮城集治監雄勝出役所
も大海嘯の爲め合宿所流失囚徒は悉く解放山上
に遊難せしめしが看守囚徒中行衛不明の者數名
あり囚徒平穩監房無事委細郵便云々の電報一昨
日午前十時宮城集治監に達するや小泉典獄は伴
書記外看守五名を随へ同日午後一時十五分發の
列車にて出張し教誨師藤吉習教氏も昨朝同地へ
出 張 したりと
●海嘯罹災民へ寄附
大町二丁目佐藤助五郎
氏より本吉郡其他郡村海嘯罹災民救恤として金
百圓を東五番町醫師樋口光明氏より同く一圓五
十錢を立町通梅の屋渡邊ますより同樣金三圓を
寄附したしと其筋へ出願
●慶長年中の大海嘯
故老の語る處を聞くに
今回の如き大海嘯は慶長年間に一回之れあり其
際仙臺藩より幕府への書上げには死者一萬二千
人とあり其際名取郡千貫沼に親船を碇繋せし由
口碑に傳へしと云ふ
●大 海 嘯 被 害 者
救 恤 義 捐 金
石巻測候所より其筋への電報なりと云ふを聞く
一金貳圓也 仙臺市肴町 日野 愛藏君
一金五拾錢也 同東三番丁 河田 安正君
一金參拾錢也 同木町通鈴木淳方
千葉 進君
一金貳圓也 某 君
(欄外にも有り)