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    雜    報

  ●藤澤議長の海嘯被害地    斎察談(承前)  一 滴 生

尤も前述へたる氣仙沼町より氣仙郡に達する道
路の開鑿に就ては今回の災害以前に於て?に町
會の决議に據り町長より縣知事に對し請願し置
く所ありと聞けり而して其工費の概算は幾んと
二萬圓内外を要するならんと云ふ然れとも其開
鑿の塲所に依りては工費に大差違を生すべく且
く其概算なるものは實地測量を爲したる結果に
あらざれば猶充分の調査を必要とするなり尤も
其費額の如き一年の負擔に堪へされば二年若く
は數年の繼續工事とするも然るへきか又彼の東
濱街道と稱する道路は大概開鑿し終りたれども
小泉津谷間の部分は未た充分なる開通に至らず
漸く人馬を通するのみにして猶ほ車輛を行る能
はざる有樣なり依て明治廿七年度中本吉郡麻崎
村柳津以東仝郡御嶽村津谷間の開修を經始せし
も其全程に於ける經費は幾んと四萬八千余圓に
上り到底一年度に於て成功すへからすとのこと
より之れを三分して仝年度より三ヶ年間に竣工
せしむることとなり其計費は三分の二は縣税よ
り又三分の一關係町村の寄附金より支出し二十
七廿八兩年度に於て豫定の工事を落成したりと
雖も次て二十九年度に至り地方税經濟の都合上
仝年度に於て全部の落成を爲すこと能ざる故更
に一ヶ年延長し來る卅年度を期して全程の開修
を終ることに爲したる塲所なり然るに未た其落
成を見さるに今回の大災害あり爲めに其被害救
護等に非常なる障礙を與ひたり若しも斯道路に
して?に落成しありしならは運搬上非常の便を
與ひ其結果今日よりも尚ほ容易に迅速に彼れ罹
災者を救護し得たるならんと信す未進行工事の
該地方に於ける關係はそれ斯くの如くなる故に
斯際可成丈其工事の進行を急くの必要あり果し
て斯くせば一方交通機關の完成と共に他方に於
ては間接に漁業恢復の一方法となり又罹災の窮
民をして工錢により生活を助くるの利益あるべ
きなり唯三分の一に當る關係町村の寄附金の如
きは今日何れも國家の救助及ひ世間篤志者の義
捐に依り纔かに其生命を繼き居る塲合到底之れ
を得るの見込なきを以て結局一縣に於て其全部
の負擔を覺悟せざるへからず尤も漁業の恢復は
唯り被害地の利益なるのみならす施きて一縣の
福趾となり且つ税源を養ふ所以なると又斯道路
は必要なる縣道に属するものなるを解せば假令
今に當り之れが全部の工費を負擔するも决して
不穩當の所爲と云ふへからさるに似たり顧ふに
此事たる固より余一己の希望に過きず然れども
縣會議員諸氏全体の意見亦た余と略ぼ仝情仝感
ならんと信す以上の外海嘯被害土木の復舊工事
あり今縣廳に於て取調へたる工費の概算を聞く
三萬五千余圓に達すと云ふ
當局者の意見を聞くに其地形の變易に依り海岸
堤防の如き實際復舊する能はさる個所あり又施
行を要せさる個所も尠からずとのことなれば實
際に於ては復舊工事なるもの極めて多からざる
へし又新に施設を要する工事も亦た善後工事と
して當時專ら調査中とのことなれば其金額の如
きは今より斷言する能はざるなり是れを要する
に是等土木工事の内必要にして欠くへからさる
ものは成へく迅速に起工復舊せしむるは前述の
如く直接間接に罹災者の利益たるなり(未完)