文字サイズサイズ小サイズ中サイズ大

廣    告

 三陸沿海に於ける大海嘯被害の實况は拙者
 親く該地方へ出張の上一々撮影仕候さて天
 下の同情を求め義金を募る等の事は幻燈に
 よりて其實?を知らすること最良の方法と
 存候に付右寫眞の中に就き特に慘憺悽愴を
 極めたるものを撰擇し之を映?に調製仕候
  三陸 大海嘯幻燈映?
   一組參拾六枚金拾圓八拾錢存明書附
 畢竟諸君の御盡力に依り同胞志士の同情を
 喚起し義金を募集し以て被害地十萬の生靈
 を饑餓の中より救助致度存寄に外ならず候
 諸君に於ても此際幻燈を利用して義金蒐集
 に畢生の御盡力あらんこと切に懇請之至に
 不堪候
     東京市淺草區並木町四番地
  幻燈器械並映?製造販賣所
   鶴淵幻燈舗  鶴 淵 初 藏

   廣  告

         原籍姓名不詳
一溺死         男死体 一人
    相 貌     年齢四十年前後
一丈五尺四五寸位
一眼鼻口等皮肉腐敗脱落相貌ヲ存セス
着 服
一茶ト紺竪縞シャチ       一枚
一紺縞端縫筒袖木綿袷半纏    一枚
一紺布袷半纏          一枚
一帆切前掛ケ廣巾茶縞サナタ紐付 一枚
一表紺淺黄裏付端縫股引     一足
一白木綿下帶          一本
    所持品ナシ
右ハ本月十四日牡鹿郡荻濱村大字田代濱沖合ニ
漂流シアルヲ見當リ拾揚ケタル旨届出ニ村檢視
濟ノ上本村大字月浦共葬墓地ヘ假埋葬取計置候
條身寄之者又ハ心當リノ者候ハヽ當役塲ヘ申出
ラルヘシ
 明治廿九年七月十五日 
  宮城縣牡鹿郡荻濱村役塲

   廣  告

今回ノ海嘯ニ付被害地御慰問トシテ本郡ニ御出
張相成候本縣内官民各位ニ乍畧儀紙上ヲ以テ御
禮申上候
 明治廿九年七月六日
   本吉郡小泉村役塲

  慈 善 演 劇

◎力餘 りある人の力足らざる人を賑はすは人間の務なり
◎自己 の身を殺して仁を爲すは日本人固有の義挾心なり
◎慈善 芝居の趣意は津波にかかつた憐れな人を救ふ爲め
◎興行 の揚り高の半を義捐金として海嘯臨時部へ差出す
◎當地 の紳士紳商數拾名發起人として百事に盡力せらる
◎發起 人と成美團とは相謀りて嚴重なる規約を設けたり
◎本月 十八十九の兩日東一番丁森民座に於て興行のこと
◎役者 は新演劇成美團員藝題は專賣の改良筋神出又鬼没
◎成美 團員が書生芝居の親玉たることは諸彦先刻御承知
◎一番 目は昨年夏歌舞伎座にて大喝采を博せし因果燈籠
◎大切 は皆樣御待兼ね大道具大仕掛の海嘯實話嗚呼無慘
◎切符 は甲種五十錢乙種三十錢丙種二十錢丁種十錢なり
◎各種 共切符は市内各所にて販賣す但丁種は木戸に限る
◎昨日 迄に切符購買の申込みありしもの七百餘枚に上る
◎當日 の切符發賣數三千枚限買ひ後れて後悔し給ふ勿れ
◎孝行 な人は親を無くした子を憐むために見物せられよ
◎慈愛 の人は子を亡くした親を惠むために見物せられよ
◎此芝 居を見るものは眞の慈善家にて見ぬ者は守錢奴也
  中錢なし  於 森 民 座 成 美 團

   廣  告

         原籍姓名不詳
一死体男一人 一年齢二十三歳位 一丈五尺位
一肉肥大   一髯疎生 一睾丸無毛
一着服ナシ
  右七月二日發見
一死体男一人 一年齢五十歳位 一丈五尺二寸位
 全身腐爛前記ノ外相貌ノ如何ヲ認ムルニ由ナ
 シ但淺黄縞木綿ノ「シャチ」ヲ着シタリ
一死体男一人 一年齢四十歳位
 但裸体ニシテ全身腐爛面貌不明
一死体男一人 一年齢四十歳位
 但裸体ニシテ全身腐爛面貌不明
一死体女一人 一年齢二十歳位
 但裸体ニシテ全身腐爛面貌不明
一死体女一人 一年齢二十歳位
 但裸体ニシテ全身腐爛面貌不明
一死体男一人 一年齢四十歳位
 但裸体ニシテ全身腐爛面貌不明
一死体男一人 一年齢八歳位
 但裸体ニシテ全身腐爛面貌不明
  右七月六日發見
一死体男一人 一年齢三十歳位 一全身腐爛面
 貌不明
 但着服ハ下ニ白「メリヤス」ノ「シャチ」及上ニ
紺木綿 「シャチ」 ヲ重ネ着シ同シ色ノ胴巻ヲ
締メ居レリ
右七月十日發見
一死体男一人 一年齢三十八歳位
 但裸体ニシテ全身腐爛面貌不明
右七月十一日發見
右十名ノ死体本郡歌津濱沖合ニ漂流シアルヲ發
見シ拾ヒ揚ケタル旨届出ニ村檢視濟ノ上成規ノ
通假埋葬取計置候條心當リノモノ有之候ハヽ速
ニ當役塲ヘ申出ラルヘシ
 明治廿九年七月十一日 
   松 岩 村 役 塲