雜 報
文 苑 大海嘯紀事(仙社課題) 永沼 松亭
天柱折兮地■裂。捲屋激浪方一瞥。避難不遑夢耶
眞。闔鄕忽化東海鼈。 母屍抱兒弟擁兄。随潮漂着
幾堆列。蟲魚瞰肉々已腐。臭氣衝鼻雜辨別。 筋傷
骨碎死且蘇。 砂塲淋漓印紅血。醫藥不給救不來。
呻吟此時膓欲絶。無食無衣無屋廬。偶然得活不知
悦。茫々天地一孤身。晨夕望海徒嗚咽。 船横邱上
家浮波。梁柱摧破器皿缺。到處梗犬寂無聲。 冷雨
腥風自慘烈。君不聞叡聖天皇憐窮民。特派侍從持
玉節。飢者給食病者醫。死者殯衫香烟俣。 海内吊
變爭損金。當局吏盡應急訣。奔走日夜乘橇行。 分
明指揮随宜設。 千村萬落三陸州。 荒景難寫情難
説。吾輩親賭感滄桑。 援筆欲紀愧疎拙。嗚呼願得
歐瀾蘇潮文。 金華山頭題石碣。
前半描寫迫眞。 精緻勝?。
仝 關 旭岳
怒潮傾滄海。凌轢魚武村。民屋盡沈没。 砂礫壓田
園。鄕隣多溺死。擧手奈難援。空葬魚鼈腹。傷慘不
可言。酷憐罹災者。失子或失孫。勃刪僵砂上。痛哭
聲空呑。古書將珍寳。散乱波底翻。無奈天地變。殃
禍且莫寃。渠儂孑遺在。昭代戴皇恩。報國耐勵志。
焉墜男子魂。一旦枇有事。焜命捧 至坦。
渠儂以下。一轉尤妙。所謂?龍点晴手段。
仝 橋本 葉山
明治丙申重五天。家々歡聲和管絣。何料怪響忽轟
然。 怒濤汎濫裏山巓。奥海沿岸閭八千。到處昏塾
眞可憐。潰屋裂船崖樹懸。死者傷者泥沙?。武田
爲山桑田淵。 漁市蕩盡沙礫連。捜父索子人幾千。
今夜不知何處眠。君不見聖德四海宣。仁人吐哺走
爭先。 嗟吁田宅可復傷可痊。人與流潮去不還。欲
向蒼天問因縁。蒼天悠々哭杜鵑。
毎句押韻。用筆自在。可以推老手。
ことし水無月十五日の夕くれわか陸奥
につなみおこりそか被害のさまいはむ
方なく慘?を極めけれは悲しさの餘り
よめる歌の中十首 佐藤佐一郎
なかむれば家もちまたもあら波の
たた打さわくおと計りして
あはれ々々さかまく波に水底の
藻屑となりし人そかなしき
浮世そと宜もいひけりなきからの
波のまに々々たたよふ見れは
きのふ迄なきたる海のなそもかく
ひと夜のうちに波のあれけん
いかにして世を渡るらむたく縄も
船もなきさのあはれ蜑の子
たらちねの乳を求めてうなゐ子が
よふ聲すなりなみのよる々々
うなゐ子を背に負ひなからわたつみの
波のより々々漂ふは誰そ
今もなほ波のたえまにきこゆるは
たすけを呼はふ聲かあらぬか
雨いたくふりけれは
あはれさの限りなりける波あれて
みる目なきさの雨の夕くれ
凌くへき軒もなきさの蜑の子は
今宵の雨をいかによくらむ