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    雜    報

   文   苑    海 嘯 十 首   戸田 則素

海幸をたのみしかひもなか々々に磯のあら浪う
ちあらしつつ
人は死家はくたけてあとかたもなみのおとこそ
うらみなりけれ
いまもなほ磯うつ浪の音はして音なき人の行へ
をそおもふ
立よらん間もなきさの五月雨にふりいててなく
あはれ蜑子
あはれより外のみるめもあら浪のより々々人の
うちなけきつつ
からきよに馴にし海人も仇浪のかかるまてとは
おもはさりけん
あるか中にわきてかなしき釜石のうらさひしく
もなりはてにけり
浮世とはいかなる時の名なるらん沈みし人をな
けく此世に
立さわく浪にうたれてなみならぬうきめをみる
は刈るあまもなし
   恩 賜        同
あま衣ほしあへぬ袖の御惠にぬるるはかわくは
しめなりけり