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県会議員 国有林内には肝腎の  用材が極めて僅少   奥山のものは急場の間に合わず    漁船具材は殊に困る 災害地視察     (11)

 貧しい知識と狭い見聞とによって、拙ないこの稿を結び終った時青森営林局長榛葉可省氏が、管轄下なる青森岩手宮城三県下の海嘯罹災地実況視察の為め、岩手県を■て来県し、本月十五日、市内国分町で菊平旅館に投じたことを知ったので、仙台営林署長赤林実藤氏と共に訪問し、短時間ではあったが、罹災地に対する営林局の対策に就いて意見を聴くを得た。
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 先ず、罹災漁村民をして、速か
 その生業に復帰せしめよ……という事は誰人も等しく考える緊急策である。県当局も水産会当局も既にこの策に出で、漁船漁具等の急建造案を樹て、夫々実施につとめているが、何より問題となるのは夫等に要する用材の供給であろうと思う。これに就いて青森岩手両県当局の如き、また罹災漁村の多くは、この際、国有林の特別払下げを受くることの、最も利便多きを考えているこの要望は、至極尤もの次第ではあるが、さて実現が果して可能なりや否や、ここが問題なのである。
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 棒葉営林局長は語っている。罹災地方に対しては、心から御同情に堪えない。漁船漁具建造用材を国有林より……という要求も至極御尤ものことであり、当局として出来得る限り、その要求を満足させて上げたいと、既に夫々関係管区の営林署に向けて、利便を計るよう、通牒を発してあるが、ただ遺憾に堪えないことは、肝腎の用材が、極めて僅少なため、同情の腐心の万分の一も実現し難い点である。
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 三陸沿岸一帯の山林は、殆どことごとく雑木林であり、杉材などは極めて寥々たるものである。櫓櫂等に用いる樫、楢、梓の如き堅牢材は殊に少なく、樫などは、東北地方一帯に少いもので、伊具郡戸倉山中にある老樹の如き葉旧藩時代、わざわざ九州から取寄せて植えたものだという口碑さえある程で、天然記念物になっている状態である。
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 杉、またはこれ等の樹木が、よしあったにしても、海岸筋には稀で。多くは嶽山に属する。奥山の雪解けは、早くとも五月を待たなければならず、雪解けを待って伐り出したのでは、どうしても六七月にならなければ、用材として役に立たない。
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 罹災地から、比較的近距離の山林にこれを求めるとしても、橇出しに依ろうとすれば、これはまた積雪が少ないという不便がある。それとも用材があれば、何んとか工夫もあろうが、あっても僅少なのだから始末がわるい。
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 特に考えねばならないことは漁船用材の如きは、不通の建築用材の如く、六尺とか丈三といったような尺短なものではいけない、またよく乾燥の出来でない生材でもいけないのである、斯う考えて見ると、今回のように、急速に而かも大量の漁船漁具用材を求めることは容易でないと考えられる。
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 止むを得ない場合は、何所かのストックを求めるより外に致し方があるまい。例えば、函館の日魯漁業の如き、又は名古屋大阪等の造船業者から求めるが捷径であろうと思う。
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 現に岩手県下視察の時、同■当局や水■関係者と■見し、前に述べたような実■の状況を話したところ、専ら国有林払下げを当てにしていられたこととて、非常に■■していたようだったが、思い至って実が伴わないのだから、いかんとも仕方がない。
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 斯くいったからとて、決して、対策を講じないという訳ではない出来る限り、間に合う限り、便益を計り、罹災民諸君の、一日も速かに生業に就かれるよう努力する者である。殊に差当り漁船漁具用材の要求には、御■足を与え得ないとしても、秋田、青森等の杉、檜等の建築用材が豊富であるから、建築用材として、充分に便益を計りたいと思う云々」
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 棒葉局長は大要右の様に語っているが、実際問題として、各関係当局の、深く考慮すべき重要事であると思う。局長は更に、岩手県■の罹災地の実情に■して、浪除松■防波林の必要と効果とを説いていた。冗長な海嘯■■記事をお読み下された方々に謝意を表して■■する(完=富田■■記=