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災害地復興追加予算  二十三日議会提出の運び   高橋蔵相、島田総務に言明    運動団に歓声あがる

政友会の島田総務は十八日午前十時院内に高橋蔵相と会見災害実地復興費追加予算問題につき懇談した、その席上蔵相は「事務上の調査が未だ終っていないが昼夜兼業鋭意努力しているから来る廿三日には議会に提出する運びとなるであろう』旨を言明したので島田総務は当に帰りこの旨幹部連に関係代議士に報告した、かくて懸念されたる災害復旧費は大蔵当局の誠意によりいよいよ提出と決定したので滞京運動中の三辺宮城、石黒岩手両県知事をはじめとし伊丹宮城県会議長、岩手県当局者等は漸く愁眉を開き歓呼をあげている、なお伊丹議長、松山県議等は斯く事態が最早絶対安心となったのでこの上滞京運動する必要もなく今後の事務上の事は一切を三辺知事、郡庶務課長等に一任多分明日(十九日)中に凱歌をあげて帰仙することとなるであろう。

運動の  甲斐あった   感謝に堪えぬ三   辺知事の努力    伊丹議長語る

十八日午前伊丹議長にこの報をもたらせば氏は、
 お蔭様でいよいよ十三日議会に提出されるということだ、これで吾々が大挙上京運動した甲斐があるというものだ、三辺知事は災害以来非常な努力を致され今日のよろこびを見るに至ったのでこの点真に感謝に堪えない
と語った。

会期を延長しても  是非ケリをつける   内ヶ崎代議士は語る

三陸災害地救済問題は発生の直後より関係県出身政民両派代議士一体となって当局に猛運動を続けていたが十七日の予算総会において高橋蔵相より今議会には必ず出す旨を言明するまでに至ったので本会議に提出されることは最早疑いなきところである、ただ内務省案の廻附を受けたる大蔵事務当局の調査は今後相当日時を要すべくなお楽悲両様の観測が依然として行われている、宮城、岩手両県代議士は十七日の追加予算審議の総会において強く政府に迫り如何なる障害をも排除して提出せしむべくそのためには総会の会期を引延ばしても目的貫徹に邁進するという申合せをなした、内ヶ崎代議士は
 関係代議士が打って一丸となり政府に強硬に肉迫した大蔵大臣の態度は既に判っているのであるが一番懸念されるのは専務当局の調査に手間取るころで順調に行ってもなお数日はかかるものと思う若しそうなれば仕方がないから予算総会を延期しても■をつける。
といっていた。

震災被害産業復旧  災害復旧助成費内訳   三万余円の低資融通も要求

三陸地方震災被害産業復旧並に災害復旧助成費は岩手、宮城、青森各県知事並に北海道長官よりの申請に基き農林省内務省において審議中十八日左の如く農林省五百八十二万一千円、内務省四百二十万円をそれぞれ大蔵省に要求することに決定し直ちに書類を提出した(この数字は後刻変更になるかも知れぬ)右予算は大蔵省において査定の上二十二日頃の閣議に附して直ちに衆議院に昭和八年度追加予算案として提出の筈(単位千円)
 【農林省産業復旧助成費】
  漁船復旧助成   一、九二七
  漁港復旧助成   一、四四九
  水産共同施設助成   七八二
  耕地及び桑園復旧助成 五二〇
  種苗■■及び肥料購入資金補助
             一0二
  共同作業場建設及び農具購入助
  成          六八五
  木炭倉庫復旧助成    五七
  家畜購入資金補助    一四
  ■■飼育場設置補助   一八
  津浪災害防止調査費   四四
  低利資金利子補給費  二二三
  計        五、八二一
 【内務省災害復旧助成費】
  警備費補給      二五〇
  救護費並に救■費補給 四〇〇
  歳入欠陥補填その他復旧資金国
  庫貸付金       九五〇
  復旧資金貸付利子補給費
             一〇〇
  復旧土木事業補助 二、二〇〇
  耕作地整理費補助   二〇〇
  復興事務取扱費  四、二〇〇
右内務省の四百二十万円の各県別内訳は宮城県百万円、岩手県三百十八円で北海道は住宅資金貸付に対する利子補給費約四百円、青森県は警備費及び救護費約二万円程度でその他の費目は全部宮城、岩手両県関係のものである、なお右の外内務省より大蔵省に要求する低利資金融通要求額は三百万円である。

小舟一千隻  建造割当決定して   四月一日より一斉に着工

漁村復興の緊急事とされている宮城県の小舟建造問題につき県では一千艘の建造能率と造船材料を調査し、造船営業者と協議の結果、
 石巻町三百五十隻、塩釜町六十隻、気仙沼町百五十隻、渡波町五十隻、計五百六十隻
を引受けしめ残余の四百四十隻は前記各地を除く被害町村において建造せしめる事となった、なお県では櫓、櫂一千挺の材料を高地営林署に斡旋方依頼しこれを配給するが小舟の建造は四月一日一斉に着工の予定である。

発動機船  六十六隻の復旧  早急実現に努力

別項の如く漁村復興と小舟建造の方針は決定したが、小舟の外発動機船の大破したもの六十六隻の復旧費は十六万七千円を要するので宮城県ではこれが復旧費を低利資金の融通に求めこれを漁業組合に配当し急速復旧を実現せしめることになった。

実際の助成金  五百五十八万円   残りは利子、補給金として計上    各県別の助成金額

別項の如く三陸震災地に対する産業復旧助成費として農林省は五百八十一万円を追加予算として要求したが右金額中実際復旧助成金は五百五十八万円で残りの二十二万円は利子補給金として計上せるものである。而して該助成金額の各県別は左の如くである(単位千円)
 岩 手     四、四七五
 宮 城       八七八
 青 森       一八九
 北海道        三八