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御救恤金  内外人を問わず   罹災者全部に伝達す    来る二十日宮城県下で一斉に     詳細は本日発表

去る三日の震害に際し、天皇、皇后両陛下より御救恤金として本県に対し八千円を御下賜あり、県は被害状況詳細判明の結果を待ってこれを伝達すべく調査を急いでいるが、来る二十日県より各部課長出席の上罹災地町村に於て(最寄の町村は二、三集合することあるべし)同一時日を期して各町村長に対し一斉に伝達式を挙行することに決定した、御下賜金分配の標準は、
 一、死亡者、行方不明者、負傷者に対しては各一人別に
 一、住宅全流失、全潰、半流失半潰、床上浸水は一世帯毎
と■交付の方法は、内外人を問わず罹災者全部を範囲とし
 一、死亡者、行方不明者は当日居住していたもの
 一、負傷者は一週間以上治療を受けたもの
 一、住宅は罹災地に世帯を構えていたもの
とし知事は当日聖旨に副い奉るべく告諭を発し宮内省の御沙汰書写しとともにこの告諭写しを添えて交付する方針で、伝達式日時、場所、出張官吏、各町村別額等は今十八日発表される。

同情を裏切る紛争  縁故関係に捉われ配給を自儘に   十三浜村に断乎処置

関係当局の涙ぐましき奮闘と、全国的な同情、義捐金品の寄贈に感謝し、罹災地方は一意復興に努力しているが、この熱意と同情を裏切り、愚な紛争の伝統的案乱村が慰問金品の配給により私利欲と党争のこれに供し、県当局を極度に憤慨さしてりう村がある。本吉郡十三浜村はその典型的なもので県では目下二名の駐在員を置きこの弊害強制に努力しているが、最近到着した報告によると、
 一、救護事務に対する村役場吏員の態度は頗る冷淡
 二、吏員は近親者又は同派のものに多く配給し、反対の者には極度に不公平な配給を行った事実がある、
 三、政党的に、自派のものに対しては■端に有利な態度をとる
 四、吏員自身、私利私欲に走る実例が多い
等々で同村では震災直後村会を招集したが、村長派五名の議員出席したのみで流会となり、その後も引続き救護事務に誠意を欠いているので、県では十六日帰庁予定の吏員を更に滞在せしめ断然たる処置をとることとなった。

建築状況視察  保安課長出張

宮城県下海嘯罹災地の住宅は今回の苦い経験に鑑み全部高地に本建築せしむることとなり県保安課では罹災地所轄警察署に通達、村役場と協力して極力その勧告をなしつつあるが、野村保安課長はこれがため十七日から各罹災地を視察することとなり十七日は亘理郡坂元村に出張、磯浜部落を視察、引続き桃生、牡鹿、本吉三郡下の罹災地を視察する。

宮城県の義捐金  累計四万四千余円

宮城県下震災に対する慰問の義捐金は十四日午後五時までの分類計四万四千四百四十六円七十一銭に達した

委員会を組織して  漁村の家屋建築   県より委員推薦方命令

災害の各地は目下復興の意気に燃え、着々計画を進めているが、宮城県では家屋の復興につき、過般災害地町村会合の際も、被害地帯に建設することなく将来を考慮し今後災害を繰り返すことなきよう指示するところあったが、県では更に十七日部落復興を要する唐桑、小泉、大原、十五浜、歌津、十三浜の六ヶ村に対し復興家屋建築委員会を組織し委員若干氏を推薦するよう通牒を発した、同委員会は尊重、助役、消防組頭、青年団長、敷地予定地の地主■町村の推薦する委員の外、県では所轄警察署長及県土木課の職員中より適任者を加え、漁村部落の更生建設につき万全を期すことになった。

災害地犠牲者 追弔大法要  廿三日仙台市  林香院で

仙台市曹洞宗寺院主催宮城県宗務所後援で来る二十三日午前十時から仙台市新寺小路林香院で曹洞宗■長紺野元峰師を招き三陸沿岸震災海嘯遭難死亡者追弔大施餓鬼法要を■修するが、各方面の多数参加を希望すると、なお放送局では本堂より十一時まで実施中■放送することになった。

志津川町で 敷地選定

本吉郡志津川町では海嘯罹災地の住宅は高地に建築予定のため臨時災害対策委員なる志津川小学校長渋谷均、奉仕委員高橋長九郎、和泉良助、町会議員佐藤熊五郎、佐藤又三郎、佐藤長太郎勝倉義夫六氏を敷地選定委員として調査中である。

児童救助、学校復旧費  一万一千円   義教費支給四月上旬に繰上    文部省関係分決定

震災救護関係中、文部省に属する小額児童の罹災救助並小学校復旧費要求のため状況、文部省に交渉中だった須藤宮城県視学は十七日帰県したが、本県より要求した一万■千四百二十八円は全部国庫補助として支出する事に十六日文部省議決定、同日大蔵省に回付するを見て帰ったもので、更に義教教育費国庫負担金の繰上支給を請願した結果、例年五月交付される同国庫交付金は四月早々に繰上げ交付される事に内定した。なお県の要求した小学校罹災救助費並学校復旧費内訳は左記の通りである。
 一、三千二百四十八円 罹災児童四百人に対し一日四銭宛1ヶ年分の給食費
 二、七千五百四十円 罹災児童一千三百五十六人中被害甚だしき一千六百七十五人に対し被服費として一人当四円五十銭宛支給
 三、六百三十八円 小学校復旧費四千二百五十円に対する一割五分(八割五分は国庫下渡金)合計一万一千四百二十八円

震災被害者  職業別数字   宮城県保安課調査

宮城県下における地震、海嘯のための被害者の職業について県保安課で調査したところによれば左の通りである。
 △本吉郡志津川町 農業三一戸商業七三戸、工業二五戸、漁業三三戸、日雇一戸、給料生活者一戸、その他一〇戸、計一九八戸
 △同郡戸倉村 農業一七戸、商業七戸、漁業五戸、日雇二戸、その他二戸、計三二戸
 △同郡歌津村 農業三四戸、商業一四戸、工業六戸、漁業五戸日雇六戸、その他五戸、計一一六戸
 △同郡十三浜村 農業四七戸、商業六戸、工業八戸、漁業一四戸、日雇九戸、給料生活者一戸その他二戸、計八七戸
 △同郡小泉村 農業八戸、商業七戸、漁業六戸、計九戸
 △同郡階上村 農業二戸、商業一戸、漁業三戸、日雇一戸、交通業一戸、計九戸
 △同郡鹿折村 漁業二戸、日雇一戸、交通業一戸、計四戸
 △同郡大島村 農業二戸、商業四戸、工業一戸、漁業一八戸、日雇三戸、その他一戸、計二九戸
 △同郡御岳村 工業一戸、計一戸
 △同郡唐桑村 農業一三戸、商業二七戸、工業一四戸、漁業二四一戸、日雇六戸、交通業八戸その他一四戸、計三二四戸
 △牡鹿郡大原村 農業一〇戸、商業九戸、工業六戸、漁業一〇〇戸、日雇一戸、給料生活者二戸、その他七戸、計一三五戸
 △同郡鮎川村 商業七戸、工業二戸、漁業三戸、日雇三戸、給料生活者二戸、その他二戸、計一九戸
 △同郡女川町 農業一七戸、商業一二七戸、工業四一戸、鉱業四戸、漁業一五二戸、日雇八三戸、給料生活者一一戸、交通業一二戸、その他九戸、計四五六戸
 △同郡荻浜村 農業一六戸、商業八戸、工業五戸、漁業三六戸日雇四戸、給料生活者一戸、交通業三戸、その他二戸、計七五戸
 △名取郡閑上町 商業六戸、工業一戸、漁業七戸、日雇一戸、その他五戸、計二〇戸、
 △桃生郡十五浜村 農業一三戸商業六六戸、工業一二八戸、漁業 六一戸、日雇四六戸、給料生活者一九戸、交通業一四戸、その他一五戸、計四六二戸
 △亘理郡坂元村 漁業五八戸、計五八戸。

罹災郵便局に 低利資金融通  仙逓局で調査

仙逓局では目下三陸沿岸震害地区郵便局復旧に要する費用に低利資金を融通すべく調査中であるが、各局の復旧費として希望されている金額は
 雄勝浜局七、〇〇〇円、女川局一〇、〇〇〇円、田老局二、〇〇〇円、越喜来局一、五〇〇円綾里局一、〇〇〇円、平井賀局八〇〇円、泊浜局七〇〇円である。