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三陸罹災地の  郵便貯金却って増加   比所払出僅か十八万二千余円    頗る貴重なる数字

三陸震災地に於ける郵便貯金の非常払出は前例がない程徹底され罹災預金者からは頗る利用されて居るが指定被害地郵便局で今日まで非常払出を受けた預金者の大部分は小口預金で十円未満七、八十銭のものが多く、罹災民の生活程度が偲ばれて係員も顔を曇らして居る、一般的に見て被害地の預金は極めて僅少で四日関係四十二局が非常払を開始して以来十七日までに払出した金額は、
 宮城、雄勝浜外九局二万三百九十四円、岩手、釜石外三十局十五万■千九百五円、青森、三沢一局二千四百四十円、計十八万二千七百三十九円
に過ぎずこれに対し、この期間中罹災地郵便局に預金を申込んだものが二十万八千九百■十四円に達し差引二万六千二百三十五円の預金増加を示した、あの大震災直後の記録としては頗る貴重な数字で郵便貯金の将来に多幸な暗示を与えたものと言えよう。

非常払出と  預金の状況   十日から十三日迄の四日間    非常払出が最も頻繁

三陸沿岸被害地郵便局が罹災預金者に非常払出しを開始以来最も払出の旺盛頻繁を極めたのは十日から十三日に亘る四日間でこの頃が丁度罹災民も精神的に落つきを得て復興に処する根本方針を確立した頃合であるが非常払出しが徹底的に利用された、この期間中のレコード払出と預金の関係を県別に見ると、
        払出       預金
 宮城県  七、七四三回   七、二五〇回
 岩手県 五七、八一一   五四、三〇六
 青森県  一、四四三    一、〇四一
 合 計 六六、九九六   六二、五九七
で預金と差引払出は一万四十三百九十九円を増加しているが、その後において全国各地から続々同情が集り莫大な救恤品を寄せられた結果漸次預金が増加しつつあるので、郵便貯金を通して見た三陸地方の情勢は復興が意外に早く心強い。

原簿の現在高  調査照会増加

仙台貯金局では四日三陸嘯災地の郵便局において非常払出開始以来毎日局員が数名づつ交替で当直し夜半各局から紹介の電報により貯金原簿の現在高を調査回答しているが昨今に至りこの種の照会が著しく増加している。