追加予算繰込み 政府の肚を極まる 事務的方面よりの異見に備え 内務省、案作製を急ぐ
三陸沿岸震災復興費問題は宮城、岩手、青森三災害県知事、県会議長以下議員等の猛運動によって政府筋の空気極めて良好であり、政治的方面より言えば今回の運動は大体奏効したものと見られて居るが、関係各省の事務的方面より言えば復興費を追加予算として提出することに多くの疑問がある、即ち直接事務を鞅掌する方面では、
債■としては大蔵省が土木局の提案を簡単に認めていたが、今回のように未だ内務省から具体案も出ていないのに追加予算とすることは慣例を破るものである。
と強硬に主張し出したので、十四日夜内務省では取敢えず数名の技師を三陸災害地に特派し実状を詳細に調査せしめ、その結果を電報で報告せしめ、それによって内務省としての案を作製し、至急大蔵省に廻附する筈で追加予算として議会に提出するか否かの決定は多分十六日中であろうと見られている、しかし政府の肚は既に追加予算とすることに決定している模様である。
提出を確信 見極めつくまで滞京 伊丹議長一行本社支局訪問
復興費が追加予算として提出されなければ死すとも帰らじの堅き決心をもって上京した伊丹宮城県会議長一行は十五日首相官邸大蔵省東京商工会議所、各新聞社を歴訪終って午後三時半本社東京支局に来訪挨拶を述べた一行は交々語る
今回の問題については必ず追加予算として提出さるべきものとの確信を抱いている、万一にも提出されないなどのことは予想していない、立法府が立派に開かれている今■追加予算として出されないということは考え得られない、聞けば内務省は成案を作製するため多数の技師を現状に急派したということであるが、明日何れとも極まるであろうからその見極めを得た上帰仙する、十六日夜は一部少数の人達が帰る筈だが伊丹、矢本その他の多数は引続き居残って形勢を見る心算である、
なお十六日は内務省、農林省、大蔵省、東京商工会議所、帝国、日本両水産会、市町村長会、徳川貴族院議長官邸等を歴訪挨拶を述べる筈である。
三辺知事に代 って諒解運動 内務部長着京
二見宮城県内務部長は十五日朝着京直ちに一時帰県せる三辺宮城県知事に代って内務省方面に災害復興問題の説明をなした、三辺知事は来県中の伏見軍令部長宮殿下が秋田県へ成らせられルヲ御見送り申上げたる後再び上京諒解運動をなす予定である。
地震の損害を 東北から取除きたい 議会に建議案を提出する 内ヶ崎代議士語る
内ヶ崎代議士は今回の三陸沿岸地震損害の莫大なりしに鑑み近く
地震の損害防止に関する■議案を議会に提出するはずである、第六十三議会に政友会の松岡代議士が雪害防止救済について建議しその後雪害防止策は着々実行に移されている、今度の地震などでも僕が研究したところによると、明治二十九年の地震に比し今度の震源地が金華山の遙か北になっている、だから今後地震は北へ北へと移動するものと思われる、折角復興してやっと息をついたころにまたどやされる■とては三陸地方民は立つ瀬がない、家を海より離れた高台に建てることも必要である■しろ地震、津浪の天災は絶対に予防する方法はないが、地震の被害ならば施設によって避けえられると思う。延ばしておいた決算委員会の質問を十五日にやってしまって、是非地震の損害防止に関する建議案を出したい、通過したら議会が閉会しても内務省その他関係方面に至急調査を依頼して今■東北から地震の損家を取除いて沿岸民に安堵させ、同時に損害復興などの無駄な経費は不必要としたい
と内ヶ崎代議士が語り早速建議案起草に着手するはずであると。
免除猶予額は 二、三十万円 追加予算の提出をも促す 衆議院法律案委員会
衆議院の震災被害者に対する租税の免除及び猶予に関する法律案委員会は十五日午前十時四十分開会別項の如く委員長理事の互選あり次いで石渡国税課長より提案理由の説明あり、今回の法案の震災地の範囲は陸奥、陸中、太平洋沿岸宮城県太平洋沿岸、北海道の一部を意味する旨述べ菅原■君(政友)より参考資料の要求あり、
内ヶ崎作三郎君(民政)今回の免除猶予額は如何程の見込みか
石渡課長 二、三十万円の見込みである
大石倫治君(政友) 東北の如き資源の乏しき地方については丹後、伊豆の震災の場合にも増して一致救済を厚くして減免猶予等の期間等も延ばさなければならぬと考えるが、当局はその考えを以て法の適用を為すか
石渡課長 出来るだけ寛大の方針を以て法の適用を行う考えである
尚八田宗吉君(政友)藤井達也(政友)広瀬為久(政友)三君より三陸地方救済の為の追加予算を速かに議会に提出されるよう希望し手代木隆吉君より北海道罹災行政救済施設に関し希望を述べ零時散会。