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地方局中心となり  応急処置を執る   三辺知事、関係当局に協力運動    惨害に深く同情して

三陸地方震災地の復旧対策を携えて上京した三辺宮城、石黒岩手両県知事は十三日午前十時内務次官官舎に潮次官を訪ね県当局が昼夜兼業で作成した被害地の救護及び復興対案を提出して
 両知事から交々と説明し、一日も早くこれが具体化をはかられんことを懇請すると共に、今後の運動方針に関し協議するところありおくれて多久青森県知事も加わって協議を重ねたが潮次官は県当局が不眠不休よく短時間の中に対案を樹立した労を謝し、知事の■した案については速かに各関係省及び関係当局に提示して協議を進むべきことを促し
 自分としても極力これが促進に努力し出来るならば今議会に追加予算として提出すべき旨を答え
三知事は会談一時間半にして同十一時半辞去、直ちに内務省地方局に大村財政課長を訪ね、案を提出して同じく
 速かに実現方を要望するところがあった。この結果内務省では事態が急を要する事情にあるに鑑み地方局が中心となって土木局、社会局などの関係局が協力し、また大蔵省、農林省なども連絡を取って至急具体案を取纏め低資融通は大蔵省において利子補給、産業資金補助、復旧土木費補助などは内務、農林両省において折衝の上国庫支出を要する分は成るべく今議会開会中に昭和八年度追加予算として提出し、若し間に合わなければ第二予備金支出其他
 臨機の処置を講ずることとなった、なお三辺知事は内務当局との会談後、衆議院内において関係代議士と協議しさらに黒田大蔵次官を官舎に訪問、その諒解を求めるところあった。

対策は急を要する  審議は取急いで進めよう   出来るだけ本議会に提出したい    会見後 潮内務次官語る

知事と会見後潮内務次官は左の如く語った。
 今日は知事から対策の内容を一度聞いただけで、詳しくは地方局その他各関係局、農林省、大蔵省と共に話し案の審議を進めて貰うように話して置いた。震災後十日も経たぬ中によく案が纏められたと思うが、なお詳細に調べて見た上整理しなければならぬところもあろう。何分ぐづぐづしておれない問題なので一日も早く各局で審議を終るように督促し出来るだけ本議会に追加予算として提出したいと思っている。対策の内容は広範に亘るので内務省を中心に委員会でも造ったらというような話もあったが、そんな暇もないので取敢ず地方局が中心となって各方面との折衝および案の取纏めをすることになろう。

漁船復興補助も  特に考慮する   両県知事代表ら内、蔵両相と会見    山本内相真意を示す

内務、農林両省関係で三千八百余万円補助申請の石黒岩手、三百余万円の復興費補助申請の三辺宮城両県知事は、十三日午前九時打揃って内務省に次官を訪問、調査材料に基き詳細説明をなすところあり、次いで午前十一時過ぎ衆議院に至り、ここで待ち合わせた。岩手県会議員、佐々木議長以下十四名、同県選出田子、広瀬、熊谷、小野寺各代議士、宮城県選出代議士を代表して内ヶ崎作三郎氏その他両県関係者多数ととも各■に特に交渉■を借受け政府筋に対する陳情順序を打合せ、先ず差当り山本内相、後藤農相に回会することとなり、内ヶ崎、熊谷両代議士の懇請により午前十一時半過ぎ両大臣は交渉■に姿を現した先ず石黒岩手県知事立って、
 今回の三陸地方災害は世間に伝えられる所よりももっと深刻で災害民の悲惨の状実に見るに忍びないものがある
とて発会に述べ、つづいて三辺宮城県知事、
 宮城県の災害■■は岩手県■深■■はないが、それでも■■は親兄弟を失い家や船を浚われ明日より■■に■こうとしてもその■力がないという悲惨極まる実情にあり、これの■■は一日も急がせ■すべきではない。■日も■かなる■■を■げんとせば■■■■■に■■■■■■う如き事務的解決策では到底間に合わない。両大臣が特別の御詮議によってこれを追加予算として是非今議会に御提案下さるよう御配慮を煩わしたい
と述べ、次ぎに田子代議士より
 今両知事より申上げた通りの事情であるから下から上への事務的調査を一切■し一挙に上より下へ御命令あるよう肚を決めて戴きたい。
佐々木岩手県会議長つづいて惨状をつぶさに述べ、
 何卒この悲惨な漁村民を一日も速かに救済されるよう御配慮を願いたい
と懇願し、更に内ヶ崎代議士も
 宮城県々会議員諸君十■名が明日着京することになって回りますが、取りあえず■から何分の御尽力を願って置きます。
三陸の地震は年数の経るに従い北に移動する事例、漁村は■■に建設さるべきものと約三十分に亘って述べ、熊谷広瀬各代議士も交々立ち、最後に石黒、三辺両知事からこの際追加予算として提出方を陳情した。これに対し山本内相は
 今般君の御話をいろいろ伺ってよく諒解した。今回の災害は聞きしにまさる惨状を呈したのはまことに御気の毒に堪えない。災害補助問題については■■とも何も話していないが諸君も総理にお会いの上よくお話し下さい。私からも詳しくお話し下さい。私からも詳しく話し何れ御希望に添うよう極力尽力することを表明する。
 農林省関係では漁船の復興補助ということは前例にないことであるが、災害地の調査がよくついているから出来るだけ御希望通りにしたい。
と述べ零時半会見を終った。かくて三辺、石黒両知事は午後一時より大蔵次官と会見、詳細説明の上午後二時再び衆議院に斎藤首相を訪問懇請するところがあった。

岩手県より要求の  復旧国庫補給額   七、八年度の内訳

岩手県より要求した震災復旧費国庫補給額は昭和七年度分一、〇六五、九〇九円昭和八年度分三八、五三五、三一四円合計三九、六〇二、二二三円にしてその内訳は左の如くである
昭和七年度罹災復旧費
              ■
救護■要求■  四七一、四六七
■■■      五五、八五六
行■■■■■  一〇〇、〇〇〇
■■人欠陥■■
        一一〇、八五八
町村■入■   三二七、七二八
 合計   一、〇六五、九〇九
昭和八年度震災復旧費
 漁船、漁具復旧資金
      五、二五〇、〇〇〇
 水産製造施設復旧資金
         五五、〇〇〇
 漁業組合共同設備復旧資金
        五〇〇、〇〇〇
 養殖設備復旧資金
        二〇〇、〇〇〇
 水産業者■業資金
        六五〇、〇〇〇
 村落復旧資金
      二、〇〇〇、〇〇〇
 ■業組合復旧資金
        七二〇、〇〇〇
 商工業者復旧資金
      二、一〇〇、〇〇〇
 運送業者復旧資金
        一八〇、〇〇〇
 農村復旧費  五九一、八五〇
 共同作業場復旧資金
         九二、〇〇〇
 養■■復旧資金
        一七七、五〇〇
 畜業復旧費  六〇七、六七〇
 小学校舎建築資金 五、五〇〇
 漁村住宅建築資金四〇、〇〇〇
 教員■給金    三、五〇〇
 製品(木材)倉庫建設資金
         五七、七八五
 製材場共同施設資金
         六五、〇〇〇
 住宅資金 一、七五八、〇〇〇
 公益浴場資金  二五、〇〇〇
 養老育児院資金 二三、二〇〇
 ■■復旧資金 二三五、〇四六
 共同作業所復旧資金
        二九四、四〇〇
 養■業復旧資金 一四、三七五
 畜産業復旧資金
        一七一、〇八二
 児童給食費   五六、五一一
 児童就学奨励費一七三、一二一
 小学校設備費  二〇、〇〇〇
 義務教育費国庫負担金増加
         八六、二一八
 炭窯構築費   八〇、四〇〇
 木炭共同倉庫費四六五、五〇〇
 貯木場共同施設費
        二七六、四五四
 林道開設費  四九七、一四八
 森林増成費  一九〇、二七七
 公益質屋費   二四、四二〇
 水産試験場復旧費
        二〇〇、〇〇〇
 防潮林設備費
      一、四六四、三九三
 土木復旧費四、六九一、六〇六
 道路改修費二、〇一四、〇〇〇
 港湾修築費三、二一〇、〇〇〇
 防波堤建築費
      二、六八一、八二五
 区画整理費  六八三、五〇〇
 町村行政復旧費
        二〇六、〇三〇
 県歳入欠陥補填費
        一三六、九二七
 町村同上   四二七、六四九
 救護費    二四四、三三八
 警備費    一四九、三九七
 耕地復旧費二、四八九、〇〇〇
 合計  三八、五三五、三一四

三陸災害復旧  国庫補助費   政民両党の要求により    十五日提出の追加予算に計上

三陸災害地代表の陳情に基き政友会の山口幹事長浜田総務民政党の松田幹事長小川総務は十三日午後一時四十分院内で斎藤首相を訪問し三陸地震災害地復旧に関する国庫補助費を来る十五日政府が提出する昭和八年度追加予算に計上されたしと要求したるに対し斎藤首相はこれを諒知したる旨答え直ちに内務、農林、大蔵、文部各関係省において至急追加予算に計上せしめる事になった。

お礼言上に  多久青森県知事  宮内省に出頭

多久青森県知事は十三日午前十時三十分宮内省に出頭湯浅宮相、大谷次官と会見過般震災地に対し御救恤金御下賜と侍従御差遣の御礼を言上し更に災害地のその後の復興状態その他の対策につき詳細報告し十一時十五分辞去した。

漁船建造資金  六千八百余円  十五浜に貸付

本吉郡十五浜村では海嘯のために流失、破損した漁船建造資金を借入るるため村議が上仙、県庁に交渉の結果、建造資金として六千八百八十八円を借入るることに内定償還方法その他は村議において決議の上改めて県に申請することとなった。

魚肥損害  宮城県一ヶ年の  生産額と略同額

宮城県内罹災地の魚肥損害については、県農務課で調査中であったが、その結果によれば流失魚肥一八、一四〇俵、浸水魚肥一五、五四五俵、計三三、六八五俵であって、その中流失による損害額は六五、三〇三円となる。県内の魚肥年産額は六五、五〇〇俵八万円であるからその大部分は損害となった訳である。尚魚肥製造戸数は三二六戸である。

払下米配布  宮城県農務課で決定   きょう罹災町村に交付

災害町村よりの政府払下米申込は宮城県県農務課で査先中のところ左の如く決定、十四日それぞれ交付されることとなった、
 【気仙沼駅渡し】歌津、大谷、小泉、鹿折、四ヶ町村九十六石
 【石巻駅渡し】十三浜、女川、大原、十五浜、四ヶ町村二百八十八石
以上合計八ヶ町村三百八十四石九千六百■だが、これを町村別に示せば左の如くである、
 △歌津七六戸四六石△大谷六戸一〇石△小泉三五戸二〇石△鹿折一九戸二〇石△十三浜四三戸二〇石△女川四五四戸一〇八石△大原一四七戸九六石△十五浜三五六戸六四石

震害地行き  輸送別   仙台運事十一日   現在取扱数

仙台運事管内で十一日現在まで取扱った侵害地行無賃或は五割引輸送品は復旧材料(主として木材、トタン等)が七車八四噸で発駅は大体一関である救恤品(主として米味噌、古着、漬物、野菜等)は備数にして三千七百十一個、斤量にして九万八千二百三十九キログラム、小荷物(主として食料品、着物、バケツ、小物類)は二百七十一個、五千四百九十五キログラムを示し同管内から消防組、青年団等の労力奉仕救護団体の無賃輸送は三十組六百三十九名に及んでいる。

三陸沿岸への郵便物輸送  当局頭を悩ます

今回の震災で三陸沿岸罹災地へ最先に救護班を到着させ救護につとめた三陸汽船会社では引続き慰問見舞、救恤品、復興材料の運搬に大童となっているが、今回の災害により海上運輸の完全、迅速、便宜なことが充分に確認せられ、陸上の交通機関が完備した後においてもなお海上輸送機関の閑却すべからざることが一般に認識されるに至った、さらに一面において現在三陸汽船会社では逓信局の郵便物の命令運行を行って来たのであるが、陸上交通機関の完備は船便による逓送も漸次廃止されんとしているが、これまた今回の災害によって陸上の交通が途絶した際に郵便物輸送に支障を来したことは大なるものがあり、全然輸送が不可能となって当局も困惑し、その善後策に頭を悩ましたとのことで今回の実例に徴し三陸沿岸への郵便物の輸送について考慮する必要があるとて相当問題となるに至った。