三陸震災復興対策 内務省大体の腹案成る 関係知事の上京を待ち協議決定
三陸地方震災被害に関し内務省は取敢ず丹羽社会局長官以下土木局衛生局等の関係官を派遣して被害ならびに応急救助状況を視察調査せしめその結果に基いて復旧対策の立案を急いでいるが岩手、宮城等の関係知事がそれぞれ対案を以て近く上京するのを待って具体案を協議作製し第二予備金支出、低利資金融通等を大蔵省に要求することになった、内務省の復旧対策の内容は左の如くである、
一、県会及び市町村の災害復旧並に救護費に対しては起債条件を緩和し預金部その他より低資を融通すること
一、右起債に対して国庫より利子補給をなすこと
一、地租その他国税減免に伴う地方税の減免を認め県財政に歳入欠陥を生じた時は歳入欠陥補填の起債を認め之が利子を国庫より補給する事
一、生業資金及び住宅資金として低資融通をなすこと
一、道路橋梁港湾河川等の復旧工事のため災害土木費補助をなすこと
一、震災■の防疫保健のため医療費国庫補助をなすこと
政府の補助 今議会提案運動 上京中の三辺知事 各方面の諒解に努む
宮城県の災害復興前後措置計画案を携え各方面と打合せ諒解を求むべく郡庶務課長と共に上京せる三辺知事は十三日午前大蔵次官並に内務次官を訪問政府の補助を今議会に追加予算として提案される様極力懇請し更に午後も関係各方面を歴訪復興計画の内容を説明諒解を求める筈である、尚政府は今回の震災復旧費を今議会に追加予算としては提案しないが第二予備金より支出するなり他の最良方法に出るなりする筈であるが県当局としては何れの方法によるもその補助の多額且速急を望んでいることはいうまでもない、三辺知事に十二日夕刻、
明日は大蔵次官内務次官に早朝会う予定である午後の予定は未だはっきりしないが災害復旧の速かならんことを望んで居るのであるから午前午後に亘って時間の許す限り各方面の諒解を求める予定である。
と語っている。
復興計画に 両県の差違 協調の要ありと 一部の注意ひく
岩手県の復興計画と宮城県のそれとがその規模において非常にちがっているので、この差違が中央政府に与える印象、従って復興費用要求の効果に如何なる影響を与えるかは、この際における一つの中心的重要問題として、漸く一部の注意を喚起するに至った。岩手県式の復興計画に賛意を表するものの言い分は
禍を転じて福となすは神から与えられた人間特有の能力である故に今回の大惨害にあった地方当局は、単にこれを臼状に復するということ以外に、これを機会に、今後いつまた大海嘯が襲来しても、今回のような惨害を蒙らないよう最善の対策を講ずるべきであって、そのために必要な費用の要求は、災害を機会に大きくふきかけるといった不真面目とは完全に区別さるべき真剣にして合理的な態度である。岩手県の態度について、例を漁民住宅の問題にとれ、宮城県では「住宅を高台へもってゆくということはよいことかも知れないが、何分強制力がなくって」といった態度で、保安課から一片の通牒を出した程度のものだが、岩手県では、産業組合等に一定の計画をたてしめ、組合の手で(利用組合)一定の高台へ住宅を建てさせ、組合員たる漁民は何年かたてば、これを自己の所有とすることができる。そしてその住宅地にいろいろな共同施設も設ける。法律的な強制力はないが、組合に入れば、そしてその住宅地にいろいろな共同施設も設ける法律的な強制力はないが、組合に入れば、その便宜を得られ、入らねば得られないということになるから、それが実質的な強制力となり、高台の所有者たる地主がこの計画に買収しまいとしても、こうした場合与論の監視もある際で、そう利己的にのみがんばるわけにもゆかないということになる岩手の復興資金の■大はただに其損害が■が大きかったばかりではなく、凡てが、こうした方針に基く計画であって、根本の考方が違っているためである。そうした厖大計画のために、県財政の今後に負担をかけるといっても、この三県の如きは今後ますます海洋進出の重大使命があるのであって、かくして富力を増加することはやがて県財政を救う所以である
というのである。これに対して
宮城県庁の計画を支持するものは徒らに厖大な計画をたてたところで、どれだけ現実性があるものか疑問である。それは被害一部県民のために、将来全県民に莫大な負担をかけることは考えもので、この点当局が財政的配慮を以てつつましい計画を樹てることは当然である。復興に熱心なのはよいが、同時に関係者は全局部的配慮についてあくまでも冷静でなければならない
と称している、以上両論の是非はともかく、同一災害善後処置に関し、岩手が根本的新生計画を樹て宮城県が単なる復旧計画にすぎないものを樹てるということになれば、中央政府財務当局としてはどうしてもつつましい計画の採用に傾くこととなりがちで、この点岩手県の計画は中央に対する迫力をそれだけ弱めることとなるのであるから、この点何とか協調を保つ必要があるものと見られている。