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実際に大震の試練を  経た仙台の建築物   自信がついて請負業者大喜び    耐震造営物発達の跡

仙台市を中心とする地方の不燃質(コンクリート)造営物に対する耐震記録は全く未知数の中に置かれてあった矢先、三日払暁突如発生した強度の地震で関係土木請負業者達は少なからず不安を感じたが結局市内のコンクリート造営物には何等の支障もなく建築技術の上にも大きな自信がついたとよろこんでいる仙台市内に於ける鉄筋コンクリート造営物の発達は最近のことで−大正九年東北大学の一部とビール会社が新装してコンクリート工事の発祥をなしたが当時地方にはこの方面の強度計算が出来る設計者が皆無で神戸に本店を有するアメリカ人経営の会社(現在の日本鉄材株式会社)に基本的設計を依頼して出来たものである−
 かくて大正十年盛銀支店と太平生命の支社が出来て市内民間工事にコンクリート時代をつくったのである、翌十一年には東北大学に小倉営繕課長を迎え強力計算が出来るようになり大学関係のコンクリート工事が積極的に進み関東大震災後は非常な進歩を来し東北■業貯金、宮城貯蓄、商工会議所、第二中学校、電話局等々、最近では県庁、市役所、三越支店とコンクリート工事の極致が現出したのである。
が耐震且不燃質造営物が地震に対する抵抗度を試験する機会なく今日に至り遂に強度の地震に直面し民間土木請負業者の力量が先づ自然の脅威に打ち勝つことの試験台を得たことは今後の民間土木事業の進展に大きな暗示を与えたものであろう。

地震 金融界  微動だもせず   各銀行へ見舞の電報

宮城、岩手の沿岸地方が三日早朝津浪に襲われて大被害を受けたとの報が入るや地方金融界は非常なショックを受けたがその後被害程度が判明するにつれ宮城県の沿岸方面には金融関係の心配がない模様なので県下銀行界は常態を取り戻した、即ち七十七銀行は志津川(支店設置場所)方面に重点を置き応急預金の払出に万全を期し農銀方面でも緊急処置を取り微動だもしない、なお市内各銀行に対し県外銀行から頻々として見舞の電報が殺到している。

郵便貯金  局部的に減少か

二月末現在の東北六県下保有郵便貯金高は既報の如く一億四千七百九十四万三千円(預入者二百八十二万九千人)で前月に比較し二百九万九千円(一万五千八百九十五人)を増加しているが奥地農村地方は旧正月の支出も終り経済が平衡に帰した結果で一面農村は益々好況に向っているから今後は漸次預金が増加するであろうとの見地から仙台貯金局では上半期末(六月)までには現在高よりも尚四百万円以上預金が増大するものと予想していた最中今回の三陸沿岸地方の大津波が突発し岩手、宮城の局部的預金が激減する模様である