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漁船復旧建造  石巻造船所分は  五月迄に進水

震嘯災で失った漁船の復旧建造は石巻市内八造船所で八十六隻を建造することに決定したが、この工費約一万七千円で造船関係者は協議の上それぞれ配分し、五月一ぱいに全部の進水を見ることに申合せたが、八十六隻の内訳は本吉郡十三浜の分は六十四隻、大原村は二十二隻である。

怖ろしい三陸津浪  三つの型種と其破壊力   東北帝大助教授理学博士 林氏の研究【五】

【三】津浪襲来の様式は主として地殻運動による海岸地形並に震央の位置に関係あるものの如し
 (A)各型種津浪の
   襲来地と其地理
   的分布(図参照)
 前編において今回の三陸津浪襲来の模様を三つの型種に分類したこの三種の津浪が地理的に如何様に分布しているかは海洋学上の問題としても、津浪被害予防の方法を講ずる上からも重要な問題と思う。
 廻し津浪襲来地を航海による調査の結果より地図上に記入すると該被害地は広田湾より久慈に至る間のみ限られて、この地域には引き津浪の襲来がない、今中央気象台発表の震央釜石の東方230粁(東経44度6・北緯39度2)の地と遠野盆地(該地を中心として北は薬師嶽より東へ躑躅山、天狗森白森、南へ老野ヶ森、片羽山、仙人峠、西へ六角牛山、笛吹峠、赤羽根峠、蕨峠北へ宮守町を経て業師嶽を結ぶ線内はその地質構造がすべて、中生代迸入による花崗岩の大地塊から構成せられている)の中心地大体遠野とを結ぶ線を地図上に引く時は釜石は丁度この線上に来るのである。
 模型図において遠野をF、釜石をC、震央をOとすれば、FO線を中心として廻し津浪襲来の地域における津浪運動の旋回の方向が明かに南方と北方において区別せられる。即ち釜石より久慈に至る北部地域において襲来せる廻し津浪は洋上より陸地に向って、右旋廻で、丁度時計の針と同じ方向に旋回運動をする傾向が著しく、釜石より高田に至る南部地域において襲来せる廻し津浪は左旋廻の運動をしている。依ってこの廻し津浪の旋廻方向とその襲来地域を一目瞭然とする様に模型図に記入した。
 引き津浪の襲来せる地点を地図上に記入して、その地理的分布を検討するときは、気仙沼以南の宮城県、福島県の海岸地域並に久慈以北の岩手県、青森県、北海道(太平洋沿岸)の海岸地域に該津浪が襲来している。これを便宜上模型図についてA金華山、B気仙沼D久慈、E尻屋崎として矢によって引き津浪の襲来地を記入した。
 潮吹き津浪襲来の地は、金華山より大船渡に至る区間、模型図における湾曲部において、湾曲の甚だしい地点に引き津波に混在して孤立的に分布している。而もこの地域以外の福島県、久慈より尻屋崎に至る湾曲部並に北海道の地域に於てこの種津浪に類する惨害の報には接していない。そこで潮吹き津浪の襲来地を模型図に記入して三陸に襲来した津浪の様式が該地方に起った特異的のものであることを明かにしたいと思う。