御救恤品 伝達式(きのう) 宮城県庁正庁に
宮城県下震災被害者中六十歳以上及び十四歳以下の孤独者並に傷病人に対し、皇后陛下より下賜された御救恤品の伝達式は十一日午前九時半から県庁正庁において行われた、知事以下各部課長出席、受伝達町村たる
坂元、大原、十三浜、小泉、大島、鹿折、戸倉、十五浜、唐桑歌津
以上十ヶ町村長並に罹災地町村長列席、渡辺社会課長挙式の挨拶を述べ、知事より前記十ヶ町村長に伝達後、一場の訓話をなし、九時五十分閉会した。
精神作興 告諭を発す 十一日、三辺宮城県知事 震災各地に対し
宮城県ではさきに震災被害地に対し救護と復旧事業に関する告諭を発したが十一日更に精神方面の作興に関する左の告諭を発した。
告諭第三号
亘理郡坂元村、名取郡閑上町、桃生郡十五浜村、牡鹿郡女川町、荻浜村、大原村鮎川村、本吉郡志津川町、戸倉村、十三浜村、歌津村
小泉村、大谷村、階上村、鹿折村、唐桑村、大島村
去る三月三日三陸沿岸に襲来せる海嘯の惨害に対しては全国各方面の同情翕然として集り或は救恤品義捐金の寄贈となり或は労力奉仕となり公共の施設と相俟ちて災害善後の措置着々其の実を挙げつつあり、畏くも我が至仁至慈なる天皇、皇后両陛下には本県の災害の甚大なるを聞召され罹災者に対して救恤金を御下賜あらせらる
聖恩広大恐懼感激に堪えず政府亦速に災害復旧の方策を講じ国庫窮乏の際なるに不拘議会の協賛を経て多額の補助支出を免ぜられ本県復臨時県会を開き災害善後の方途を講じ以て復旧計画を樹立し近くその実施を見んとす、惟うに災害復旧の事たる罹災町村民の自奮自励に俟つ事、最も肝要にして厳に浮華放縦を戒め民風の刷新、教育の充実、生活の改善、経費機構の統制を策し協力一致更生の郷土建設の為に邁進し以て所謂災禍を転じて幸運を招来する永遠の復興計画を確立せざるべからず宜しく勤勉力行産を治め、業を励み堅忍持久の精神を振越し戮力諸和家運の挽回と堅実なる町村再建のため努力邁進し速かに復興の大業を成就し以て上は優渥なる
聖旨に副い奉り下は熱誠なる国民の援助に酬いんことを期せらるべし
昭和八年四月十一日
宮城県知事 三辺 長治