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激じん地九割補助  農林省 特別立法を検討

チリ地震津波について政府は伊勢湾台風被害と同様特別立法による救済措置を講ずる方針だが、農林省でも農林関係は伊勢湾特別立法
とほとんど同じになるものとみて検討を進めている。この特別立法は復旧費の約九割という高率を国が負担することになっているが、
伊勢湾台風の農林関係特別立法要旨次のとおり。
一、公共利用施設の復旧について
は一ヵ所の工事費が三万円以上の
ものに適用する。補助率は一般被
害地五割、被害激じん地九割とす
る。
一、暫定法で除外されている養殖
施設についても被害激じん地にか
ぎり適用する。
一、共同利用小型漁船の建造につ
いては五トン未満の小型漁船が沈没
または大破した場合、被害船三隻
に対し一隻の割合で新船建造費の
八割を助成する(新造船のトン数
は三トンまでを原則とし、また二
人以上の共同利用とする)。ただし
適用を受ける都道府県は大破ま
たは沈没したものを百隻越える
か、または被害漁業協同組合の数
が全体の一割以上を越えねばなら
ない。
 なお同法については今度の災害
 の場合、内容を同じものとする
 か、あるいは一隻当たり補助率
 を下げてそのかわり隻数をふや
 すなどまだ結論が出ていない。
一、有志関係では融資の対象を漁
具(つな、あみ、やなはぜ、え
り)、漁船(二トン未満)まで拡大、
償還期限は一般被害地の漁具三年
その他二年、再貸し付け三年、激
じん地は漁具五年、その他三年、再
貸し付け四年、利率は被害激じん
地三分五厘(一般六分五厘)とな
っている。
一、公共土木施設復旧では被害激
じん地市町村が実施する災害復旧事
業については次のように国が負担
する
 ①三十四年度標準税収の二分の
 一までの分は八割。
 ②二分の一を越え等額(標準税
 収総額)までの分は九割。
 ③等額を越えた分は全額、また
 災害関係関連事業の新設に三分
 の二を補助する。
一、たい積土砂およびたん水の排
除では漁業稚魚場内に泥などが五
万立法メートル以上、高さ二十センチ以上た
い積した場合、または流木一千本
以上がたまった場合などその排除
費として九割を補助。
一、堤防新設改良など高潮対策の
ための公共土木事業に対しては、
国の補助率を現行の各種法規の最
高額または八割までを適用する。

宮城県案を中心に作成  知事会で一本化申し入れ

北海道、東北七県自治協議会(会
長三浦宮城県知事)は二十九日の
被災一道四県主管部長会議で、政
府に対する統一要望事項を決めた
が、三十日その結果を全国知事会
に報告、全国知事会議の要望とし
て一本にまとめるよう申しいれた
 全国知事会は被害が全国におよ
 んでいるところから六月六日午
 前十時半、東京平河町の全国都
 道府県会館で被災一道十七県の
 緊急知事会議を開いて、要望を
 一本化することに決め、各道県
 に通知した。
全国知事会の要望■案は、■北統
一要望の骨子となった宮城県案を
中心とし、三重県案を追加調整し
て作られ、同日の全国会議で協議
される。
 なおそのため北海道、東北四県
 はこれに先立ち同日午前九時か
 ら知事、同県議会議長の合同会
 議を開く。

中央災害対策本部でも決定  災害融資特別立法

政府は三十日の時間会議終了後、
中央災害対策本部(本部長椎名官
房長官)第二回総会を開き、チリ
地震津波の早急な復旧対策案を申
し合わせた。
このため政府は一日午後三時から
第三回の総会を開いて具体的検討
にはいるが、自民党側の強い要望
もあり、災害復旧融資について
特別立法の措置を講ずる方針であ
る。三十日の総会では個人の財産
公共土木ならびに公共施設の被害
が多いので復旧には特別の融資や
補助が必要だとの点が関係各省庁
から述べられ、結局各省庁で具体
案を取りまとめのうえ、本格的な
復旧対策案を練ることになった。

河北春秋

チリ津波の現地に
は、中央から大臣
をはじめ、各省の
おえら方が続々視
察にやってきた。
そして一様に、予
想以上の被害を実感して帰
京した▼この視察の中で最
も印象的だったのは、福田
農相の視察である。福田さ
んは二十七日塩釜をふり出
しにして、三陸沿岸を釜石
まで北上、二十八日深夜花
巻から帰京した▼わずか二
日間だったが、なかなか熱
心な視察行だった。雨の中
を歩いたり、おかみさんた
ちの群れにはいって激励し
たり、人間味あふれるもの
だった▼この状況はきのう
の本誌一面に掲載されてい
る。それによると、福田さ
んは被災者たちをつかまえ
ては「がんばって下さい」
と心から励まして行きまわ
ったようだ▼ところで被災
者たちは、この激励の言葉
に対しどんな反応を示した
だろうか。本紙記者はこれ
を「力なくうなずいただけ
だった」「無表情だった」
と伝えている▼東北の人た
ちは昔から礼儀正しいは
ず。福田農相の激励に対
し“無表情”でこたえたと
いうのは、どうしたわけで
あろうか。自然の猛威にう
ちひしがれて、口もきけな
かったのだろうか▼たしか
にそれが“無表情”の主た
る原因であったろう。あま
りに津波の打撃がひどすぎ
て、ぼう然自失ということ
が考えられる。しかし、そ
うとばかりはいえないのだ
▼この人たちは今まで、何
回も自然の暴力にさいなま
れてきた。そのつど政府に
救済や対策を要望し陳述も
した。けれども被災者たち
の満足する対策が実現した
だろうか、いつも中途半ぱ
な対策ばかりではなかった
か。“無表情”はそれに対
する無言の怒りなのだ。政
治に対する不信なのだ。福
田さんはこの”無表情”を
どう受け取って帰ったのだ
ろう。