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“この先どうなる!”  被災者は訴える

「とにかく米と寝るとこだけ……」チリ津波の不意打ちにうち砕かれた約十二万人五千人の東北の被災者たちは、こう口々に悲
痛な叫びを訴えている。救いの手はいつさしのべられるのかと腰の重い政府へのうらみごともある。住む家をつくってくれと
いう切ない願いもある。被災者はいま政府や国民に何を求め、何を訴えようというのだろうか——。【写真】志津川町の惨状

住宅、寝具がほしい  再起資金の融資を早く

宮古市高浜、漁業岩間源蔵さん(五
七)は「いまは現金より住宅だ。寝
具だ。漁具のことを考えるほど余
裕がない」と流された自宅のあと
にすわり込んだままいっている。
岩手県山田町の被災者も同じよう
な意見で、カキだなを早く建て込
みたいが気力がないと力なく語っ
ている。大船渡市でも“まず衣類
を”という声が一番多い。ほとん
どが寝間着のままで台地に逃げた
からだ。いま身につけるもの、そ
れに寝具がほしいといっている。
 宮城県の激甚地、志津川や石巻
 地方の被災地も食糧と衣類、寝
 具などに困っている。ことに女
 川、雄勝の両町は、まだ炊き出
 しを続けているが食糧難は予想
 外だ。また志津川町では着のみ
 着のままで飛び出し、そのまま
 家を押し流されたものも多く住
 宅とともに、着替えや夜具の悩
 みは深刻。気仙沼市で二十七日
 まで配給された衣料は作業衣、
 毛布、下着などざっと二千点だ
 け。またここは野菜の少ないと
 ころで、津波いらい、その値上
 りが目立ち、安い野菜の配給を
 望む主婦達の声も強い。
八戸市では収容所に現在まだ三十
二世帯百三十人がいるが、収容所
閉鎖予定の二十九日までにはどう
しても二十二世帯八十人が残りそ
うだ。この人々はほとんど全部知
り合いも身寄りもなく生活保護を
受けていた人々で、はいる家とこ
れからの暮らしのことを考える余
裕さえない。しかし不足でも衣類
はかわかせばなんとかなる。住宅
もがまんできる。しかしあしたか
らの生活をどうするかお先まっく
らだと被災者たちは一様に訴えて
いる。零細漁業者の多い八戸地方
ではつなぎ融資をのどから手が出
るほどほしがっている。六月の出
漁期を前に借金に借金を重ね修理
を終わり、やっと海に浮かべ喜ん
でいたのもつかの間だった。津波
で再び陸にあげられたうえ船腹な
どに穴をあけられたから泣いても
泣き切れない。修理には二十万か
ら三十万円かかる。八戸イカつり
組合の調べでは、こういう船主が
八十人くらいいる。
 気仙沼地方では一千戸余の人
 々が、津波でカキいかだやノリ
 資材に全滅的な被害を受け、こ
 れであすの生活資金にもこと欠
 くハメとなった。ワカメ、貝も
 津波で当分とれない。そのため
 カキいかだの復旧が当面の問題
 で、この資材の無料払い下げが
 第一の希望。しかし復旧したと
 ころで、いまカキ■はなく、十
 二月から収穫の始まるノリの出
 回りまで五ヵ月間収入の道が断
 たれたも同然。このため漁民は
 生活資金として長期低利の資金
 を融資するが、すぐ現金収入の
 ある失対事業をのぞんでいる。
女川町などの水産加工業者、零細
漁民は生活保護か特別失対事業で
もなければ生活できない状況だが
水産加工業者は再起のための資金
を欲しがっている。また船をなく
した人々は代船建造の資金を特別
に貸し出して欲しいと要望してい
る。商店街は女川、雄勝など深刻
で、これも長期低利資金を強く望
んでいる。
 塩釜市海岸通りの鮮魚商マーケ
 ットでは二十四日から二十六日
 早朝までに五回も海泥に洗われ
 仕入れた魚はもちろん店内施設
 のほとんどを失い早急に開業資
 金の融資を叫ぶ。ある行商組合
 の会計係は「いまが農村は田植
 えどきで、われわれにとっては
 文字通りかき入れどきだ。行商
 資金もなにも失っては死活問題
 だ」と語る。
各被災地とも津波発生について気
象庁予報のミスに憤慨しているが
「災害をうけた以上は復旧を…
…」という声が強い。

津波被災地義援金 27日受付分(敬称略) 本社扱い

▽一万円、仙台市
勾当台通、八百条
▽一千百円、明治生命保険相互会
社仙台支店一同▽一千円、愛■神
社宮司郡山宗英▽五千円、仙台市
新弓ノ町婦人部▽三千円、河北新
報社部長会一同▽一万円、仙台市
北四五六町内会▽三千円、仙台市
岩切婦人会▽五千円、同市名掛丁
エビスヤ社長小林茂豊▽五千三百
二十七円、同社員一同▽二千円、
同市東九番丁、熊谷政一▽三百円
同市東八番丁、佐々木栄一▽一千
円、同市角五郎丁、平瀬恭子、同
浩、同清▽二千円、同市小田原車
通、佐久間武▽一千円、同市角五
郎丁、吉川幸太郎▽二百円、同市
田町、斉藤安▽一千円、同市北一
番丁通、佐藤喜久子▽五千円、同
市東二番丁、東北テレビ映画社▽
三千円、同市薬師堂西、西田信男
▽一万円、同市東二番丁、東北機
械計算株式会社▽六千四百八十四
円、東北大経済学部自治会街頭カ
ンパ▽一万円、仙台市本横丁、寿
の三色最中堀池睦雄▽三千円、角
田市西仲町区民一同▽一千円、日
本銀行仙台支店YMCAグループ
▽一千円、日本銀行仙台支店■■
研究会▽一万円、仙台市荒町町内
会一同▽二千円、同市東二番丁北
部町内会▽七百二十円、河北新報
社営業局計算部、販売部有志▽二
千円、仙台市名掛丁、岡崎ラジオ株
式会社仙台出張所所員一同▽三千
円、同市新名■丁町内会▽千四百
円、同市南鍛冶町第五組一同▽六
百円、河北新報社営業局、総務局
新入社員一同▽一千円、仙台市柳
町、近藤ぜい▽一千百二十九円、
河北新報社大阪支社、名古屋支局
一同▽百三十円、仙台市北材木町
岩村欣一▽四千八百二十円、同市
上染師町町内会婦人会▽一千五百
三十八円、宮城県警察学校初任科
生一同▽百六十八円、河北新報社
売店、食堂一同▽五百円、仙台市
新河原町東裏丁、東海林祐子▽五
百円、同市石切町、菊池寛▽三千
円、同市元寺小路南星会▽三千円
同市南小泉鍛冶屋敷千葉建設千和
会▽一千円、三島学園女子高校二
年二組一同▽三万円、仙台市北四
番丁、東北大学医学部同窓会▽二
千円、仙台市宮町中部一班の母川
口いわみ外十一名▽二千円、同市
鹿島町、宮城野納豆製造所従業員
一同▽一千円、東北大学付属小学
校見学者一同▽五千七百二十円、
仙台市宮城野町、ほてい屋佃煮工
場▽五千円、同市花京院、東方建
材株式会社仙台支店▽一千円、同
市光禅寺通、佐山亮三▽一万円、
日本勧業銀行仙台支店行員一同▽
五千円、宮城県豊里町婦人会
古川通信局扱い
▽一万二千
円、古川市
婦人連合会
東北放送扱い
▽二千円、仙
台市南染師町
町内一同▽二千円、仙台市北六番
丁、菅野孝▽一万七百五十円、同市
東二番丁、東北放送労働組合▽一
千円、同市東一番丁、とがくし一同
計 二十三万一千三百
 八十六円
累計 二百六十八万八
 千四百七十九円
国税庁長官通達「昭和三十四
年直法一−一六四」によって
この寄付金は指定寄付金とな
ります。

廃墟に開く“青空靴屋”  大船渡 悲しみこえて生きる母

【大船渡】「いつまでも泣いてばかりいられない。生き残ったたった一人の子どものためにも」
住みなれた家、夫と愛児二人をこの津波で失ったくつ屋さんの若い主婦が、被災四日目の二
十七日、店を出した。店といっても、ムシロにくつを並べた露店だが、気丈な女性の不屈の魂
に町民はよごれた顔をほころばせた。“荒廃の町”大船渡の道ばたに拾った若い母の生活記録だ
大船渡市大船渡町野々田のくつ屋
石川幸子さん(三五)は、あの日の朝
「津波だ」「逃げろ」という夫の
声に長女の弘子ちゃん(六才)を背負
い表戸をあけたとたん濁流をまと
もに受け、その瞬間、弘子ちゃん
を奪い取られた。幸子さん自身も
丸太に足をすべらし押し流され
た。次男の健次ちゃん(七才)をかか
えて飛び出した夫の良平さん(三八)
がこれを知って「幸子しっかりし
ろ」と呼びつづけ、木片を投げた
ので、幸子さんはこれにつかまり、
おぼれずにすみ、やっと近くの
人に救われた。長男衛君(一一)は女
中の菊池清美さん(二〇)と隣の木下
医院の窓につかまって命拾いした
が、夫の良平さん、健次ちゃん、
弘子ちゃんの三人は、これが最後
となって、家もろとも黒い潮の中
に消えた。
 幸子さんは三つのなきがらをか
 かえ、まる二日泣いた。その
 涙もかれた二十七日朝、やっと
 残った二百足の長くつ、ズック
 を近くの街頭にならべ、これに
 は仙台からハイヤーでかけつけ
 たという母の菅原なつえさん(五
 五)が「一人娘がふびんで……」
 と手を貸した。もちろん商品は
 二束三文の値段。ムシロの上に
 “にわかくつ屋”だったが、た
 ちまち人がき
 をつくった。
 お客はくつで
 はなく、幸子
 さんの気心を
 買ったのだ。
 商品はたちま
 ち売れた。幸
 子さんは左足
 の痛みをこら
 えて立ち、売
 り上げ金をま
 とめ、あすの
 運転資金とし
 た。「このむ
 すこが大きく
 なるまでは、
 これからこう
 してがんばら
 なくちゃ……
 と笑ったが、
 被災地に生き
 るきびしさが顔ににじみ出てい
 た。

ダイヤ改正な どで団交要求  国鉄動力車労組東北地本

国鉄動力車労組東北地評の安斎議
長ら同労組の仙台、盛岡、秋田三
地本代表約七十人は六月一日から
のダイヤ改正のよる組合員の労働
条件変化などについて大塚国鉄東
北支社長との集団交渉を要求、二
十七日午後、仙台市の仙鉄局舎に
押しかけた。結局、組合代表数人
と大塚支社長が会って話し合った
が、はっきりした結論は出なかっ
た。
 一方、国労仙台地本の戸田委員
 長ら代表も磐越西線管理所と磐
 越東線管理所の設置に伴う労働
 条件問題について団交を要求し
 て同じころ仙鉄局にきたが局長
 も各部長もいないので安部労働
 課長と会って夕刻まで話し合っ
 た。
動力車労組も最初の目的は局長と
会うことだったが、仙鉄局部長以
上の幹部はこの日、福島県飯坂温
泉で現場長会議があるとして全員
不在だったので支社長に会った。
「津波被害の復旧も満足にできて
いないのに幹部が全員温泉に行っ
ているのはけしからん」と組合側
はふんがいしていた。

義援金は課税なし

 チリ津波被災者の声は、日
 ごとに高まっているが、日赤、
 新聞、放送局などが募集してい
 る義援金に応募した場合、その
 金額は必要経費として認められ
 課税される心配はない。
仙台国税局が二十七日明らかにし
たところによると、寄付金の取り
扱いは伊勢湾台風の時にも問題と
なったので、政府は三十四年九月
四日の国税庁長官名で「風水害等
により災害救助法の発動された地
区に対してきょ出した義援金等の
法人税の取り扱いについては指定
寄付金とみなす」という通達を出
した。指定寄付金とは大蔵大臣が
指定するもので国、市町村、私立学
校などに対する寄付金のこと。普
通の寄付金については、法人の場
合、所得の百分の二・五と資本金
の千分の二・五の合計額の二分の
一を限度として寄付金を必要経費
に認めているが、こんどの場合は
指定寄付金に当てはまるので金額
に制限はない。また個人の寄付金
は原則として経費に認められない
が、営業に関係あるものに限り、
必要経費と認められる。

水害御見舞申し上げます

炉及燃焼装置、乾燥装置其の他
附帯設備の復旧は迅速・安価にて
御奉仕致します。
工業窯炉・乾燥装置
      重油バーナー設計製作施工
 関東火熱産業株式会社
  本社 東京都中央区日本橋久松町一〇
     TEL ■四五五九 ■八七〇二

みちのく

 ◇…県警察本部の
刑事部長が、ことも
あろうに留置場で一
夜を明かした——こ
れも宮城県での津波
余談。
 ◇…留置人は熊谷忠治警視。さ
る二十四日、志津川署管内犠牲者
続出の報に同夜おそく現地へかけ
つけた。津波の余波を警戒しなが
ら救助、防犯に活躍する署員を激
励したあと、二十五日未明寝よう
とした。ところが同署も床上浸水
の被害を受け、二階は応援各署員
で満員。やむなくあいている留置
場入りとなった。
 ◇…二時間余のかり寝のあと
「三十年近い警察官生活でブタ箱
に泊まったのは初めてだ」と苦笑。
さすがにぐあいが悪いとみえて、
その夜からは自動車の中に寝るこ
とになった忠治部長「留置場はこ
よい限り……」。(志津川)

謹んで 水害お見舞申し上げます

御地水害の実情を知り、皆様のご安否の
ほどを心からお案じ申し上げております
右とりあえず紙上をもってお見舞申し上
げます
 フマキラー本舗
  株式会社大下回春堂

お見舞

津波による御被害に対し
 心から
  お見舞申し上げます
木内眼鏡店
仙台・東一(日活館向い)TEL②6909

謹んで水害の御見舞申し上げます

チリ地震津波により被害を蒙られました皆々様に心から御見舞を申し上げます
 仙台市■屋下一 電話②二〇八九
 仙台駅前(日乃出会館向い) 電話②二六〇五
 霊屋温泉 旅館瑞鳳閣
 レストラン鳳月・東京温泉・ホテル鳳月
   館主 渡辺東太郎

チリ地震津波被災の皆様に  心からお見舞申し上げます

 仙台市北目通り六
  日本建鉄株式会社東北工場
株式会社榎戸金庫鉄工所