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チリ津波復旧対策 県、政府ほの要望事項決める

県下で八十三億円を越える大きな被害を受けたチリ津波災害に対し、県は政府、国会に要望する復旧対策を二十六日の部長会議で次の
ように決め、二十七日の県議会全員協議会にはかったうえ、重村福知事が上京、関係各省に陳情する。

水産施設への補助  家屋建築に国有林払下げ

 要望事項は被災各県と歩調を合
 わせて行なう「チリ津波被災復
 旧特別立法措置」の成立を軸に
 水産施設の高率補助の獲得を主
 眼にしている。
 ◇水産=①ノリ、カキ養殖施設
定置網など水産施設に対する十分
の九の高率補助②共同利用の小型
漁船建造費に対する高率補助③災
害に対して国庫補助の対象限度の
ワクを広げる④漁船の建造費に対
する特別融資は現行の二十万円か
ら五十万円に引き上げて利子補給
をする⑤船舶補修、漁網、漁具
など再生手段に対しても国庫補
助をする。
 ◇農林=①天災融資法の発動②
防潮造林、砂地造林の全額国庫負
担③農地の除塩事業に対する十分
の九の高率補助④過年度災害の借
金は返済期間を延ばし、利子を減
免する⑤再生産に必要な農機具、
農薬の購入に国庫補助をする⑥家
畜畜舎、サイロの復旧費に国庫補
助。
 ◇土木=①家屋建築材として国
有林を安く払い下げる②海岸堤防
道路、港湾、河川の復旧工事は特
別立法による高率補助③住宅、工
場の立地条件改善のため、宅地造
成、区画整理事業の高率国庫負担
④住宅金融公庫のワクを広げ、利
子を軽く、返済期限を延長する。
 ◇■農・漁民土木事業=被災者
の現金収入をはかる。
 ◇商工=①被災商工業者に商工
中金から再建資金を特別融資し、
場合により政府は利子補給する②
中小企業、国民金融両公庫から被
災者に立ち上がり資金を特別融資
して、政府は利子補給する。

農林関係被害 は二億八千万

 県農林部は二十五日農林関係の
 チリ大津波被害額と災害対策を
 きめた。被害総額は二億七千四
 百七十九万円である。おもな被
 害は
◇耕地関係=▽除塩作業対象水田
四百ヘクタール、同畑二百ヘクタール▽耕地埋没三
十ヘクタール▽用水路埋没延べ四万メートル▽用
水取入口破損十ヵ所=以上被害額
三千百七十万円=◇農業改良関係
=▽冠潮で作付不能水田四百ヘクタール、
畑二百ヘクタール=以上被害総額一億五千六
百二十万円=◇治山関係=▽防潮
林倒木二百メートル区間▽海岸砂防造林
倒木四十一ヘクタール=以上被害額八千五
十九万円◇林務関係=▽木材流失
四千四百四十立方メートル▽製材工場破
損十六ヶ所=以上被害額千六百三
十万円=
これらの被害の復興対策の重点は
 ▽自作農維持創設資金の増ワク
(現在の二億五千万円にさらに一
億円以上加える)
 ▽農地復興補助率の引き上げ
(現在の五〇パーセントを全額にする)
 ▽造林補助率引き上げ(現在三
〇パーセントを全額にする)
 ▽住宅資材、ノリ、カキイカダ
用の木材確保のための国有林払い
下げ。
 ▽稲の苗確保のため栗原、登米
などの地区から被害地へ苗を急送
する。
などで、これを実現するため伊藤
農林部長は同日仙台農地事務所へ
実現促進方を要望した。

商工業者救援 対策を要望 県商工会議所連合会

県商工会議所連合会(宮脇参三会
長)はチリ津波で被害をうけた県
下の商工業者、中小企業に対して
県が適切な救援対策を講じるよう
二十六日次の要望事項をきめ、二
十七日三浦知事を高橋県議会議長
に陳情する。
①立ち上がり資金の貸し付け②政
府資金、各種特別融資の貸し付け
を得られるよう便宜をはかること
③資金調達の円滑化をはかるため
県信用保証協会基金の増額と損失
保障に特別の配慮をすること④税
金については所得税だけでなく、
その他の諸税についても■税、納
入猶予などを考慮すること。

ことしは再起不能 養殖カキ

松島、塩釜湾内の養殖カキなど浅
海漁業はチリ津波で被害九割以上
という壊滅的な打撃を受けた。こ
のため湾内に漁業権を持つ十三漁
協組、漁民約一千六百人は連日役
員会、緊急臨時総会などを開き対
策をねっているが、台風被害と違
って、漁民の手となり足となる舟
を大半うしない施す術もないと
いった有様。湾内の浅海漁業はノ
リが終わり、養殖カキの垂下作業
がすんで半月した経ていないとき
の災難だった。種ガキの作業開始
が七月なので時期としては被害が
少ないが、年間百十二・五トン、約
一億円の生産をあげる松島ガキ
はことしは再起不能といったと
ころ。
 実質的な損害は塩釜市だけでカ
 キ棚、種ガキ、舟など浅海漁業
 関係は二億円を軽くオーバーす
 るほど。これに七ヶ浜、松島両
 町に和府村分を含めると相当額
 にのぼるものとみられる。各漁
 協組はぼう然としている場合で
 ないとし、損害状況調査を実施
 することを決めている。
三十日開く県漁連総会のあと県下
の浅海漁民代表による再起大会を
開くが、この大会に松島、塩釜地
区は七月、九月の漁期をひかえ早
急に漁船建造費のつなぎ助成金の
交付など数項目の要求対策を提案
する方針でいる。

在京県人会に 緊急対策本部

在京県人会は二十六日午前十一時
役員、各地区会長、二十人が東京
八重洲の県東京事務所に集まり、
緊急対策本部を同事務所内に設置
救援方法などを決めた。救援の義
援金は目標を百万円とし、六月十
五日までに集め、救援物資は各地
区ごとにまとめて発送、また慰問
団を派遣する。対策本部役員次の
とおり。
▽本部長=高橋義次会長(弁護
士)▽副本部長=田辺武次(本州
製紙会長)、渡辺政人(東北開発会
社総裁)、佐藤守彦(東京時計社
長)、大槻正路(大田区県人会長、
医師)、大秋田忠一(荒川製鋼社長)

早急に三百八十戸  件、被災地の応急住宅

県建築課は、被災地の復興住宅建
設希望者を調べているが、その数
がまとまり次第、直ちに現地や隣
接地の木材、トタン業者から建築
資材をあっせんする。また生活困
窮者用の応急住宅の建設は、現地
や隣接地の業者に請け負わせるが
これらの住宅として約五百二十戸
を見込んでおり、さしあたり三百
八十戸を建てる予定。
なお県建築士会は、二十七日から
気仙沼、本吉、石巻、塩釜の四支
部に■築相談所を設け、住宅■■
を希望する人たちの便をはかる。

不明の女性二 人死体で発見

津波で行くえ不明となっていた志
津川町松原、女中佐藤たち子さん
(二二)は、二十六日朝、同八幡町、
無職沼倉さき子さん(二三)は■昼こ
ろ死体となってみつかった。これ
で県下の死者は四十三人、行くえ
不明者は十人となった。

生色とり戻す被災地

津波が去って二日、被災地の復興作業は急ピッチで進んでいる。死の町だった志津川町にも道路が開通、塩釜市は町を埋めていた泥土
がとり除かれるなど、各地とも自衛隊や消防団の活躍で日ましに生色をとりもどしている。

主要道路はほぼ開通  仮水道で飲料水を補給 志津川

志津川町の被災
地の復旧は、二
千数百人の自衛隊、警察官、消防
団や救援を申し出た一般人らの協
力でかなりはかどっている。二十
六日には主要道路がほとんど開通
濁流に削り取られた汐見橋両側の
道路も俵を積み復旧を急いでいる
好天に恵まれて清掃作業も進み、
半壊家屋では板を打ちつけ屋根を
修理するなど、つち音も高く、町
民たちもようやく災害から立ち上
がろうという意欲が盛り上がって
きた。五日町では早くも店開きし
た食料品店もある。同日午後には
登米水道組合員らの努力で消火栓
放水ポンプを利用し、仮水道がで
き上がり、旧町内の七〇パーセントに消毒
された飲料水が行き渡った。
 また保健所員、自衛隊衛生部隊
 員約二百人による防疫班が六班
 に分かれ被災家屋や家具、井戸
 などの消毒に大わらわになって
 いた。被災者の収容所である志
 津川小、中高校は当分被災者の
 住宅解決の見込みが立たないの
 で小、中学校は二十九日まで休
 校、三十日事情調査のため学童
 を登校させる。また高校は二十
 七日生徒が登校して復旧作業の
 手伝いに当たる。

沈没船の引き 揚げ作業開始 塩釜

塩釜市内の津波被
害の復旧は二十六
日、急ピッチに進み、道路の障害
物は大部分がのぞかれた。午後か
らは海面の沈没船の引揚げなどに
県のクレーン船やしゅんせつ船が
活躍した。市当局も同日午後には
津波対策本部を編成、本格的に救
済、支援に乗り出した。日赤県支
部、日本キリスト教団、県、一般
市民からの救援物資が相ついで市
役所にもちこまれ、被害状況を調
査したうえ早急に給付する予定。

消毒作業に大わらわ  鮎川へは物資を海上輸送 石巻

石巻地方の被害地
は一せいに復興に
立ち上がったが、各地で疫病の発
生が気づかわれている。このため
石巻保健所は防疫対策本部を設け
て管内の防疫活動に力を入れ始め
た。石巻保健所は総務、調査、消
毒、防疫、救護の五班を編成、万
全の体制をととのえているが、二
十五日から女川、雄勝、牡鹿の三
町と石巻市荻浜地区の被災現地
に出動、水びたしとなった家の井
戸、便所、下水などに生石灰やク
レゾール、さらし粉、DDTなど
の薬をまき、消毒を行ってい
る。
 一方石巻市は同時に防疫活動を
 進め、係り員が路地のすみずみ
 まではいって懸命の消毒にあた
 っている。いまのところ薬剤の
 不足する心配はないという。
一方鮎川と石巻を結ぶ唯一のルー
ト、万石橋(百八十メートル、渡波)が
二十四日の津波で落橋、牡鹿半島
は完全に孤島と化したので、二十
六日朝、第二護■隊群所属の自衛
艦三隻が急ぎ回航、石巻に特機中
の救援隊や救援物資を海上輸送、
半島民の急場を救った。回航した
自衛艦は旗艦の「もみ」(一、四
五〇トン)、「つげ」(同)、「まき」
(同)の三隻で、石巻では引き潮
のため入港できず沖に停泊、小型
舟艇で石巻の救援隊や物資を積み
こんだ。
牡鹿半島の被害は市街地のように
目立たないが、沿岸漁民は鮎川を
残してほとんど壊滅、桃ノ浦、月
ノ浦、萩浜、小淵、小網浜、十
八成などは土台までさらわれ、飲
料水の困るところも出た。自衛艦
三隻のうち「もみ」は日赤や石巻
保健所などの医療陣を乗せて月ノ
浦へ、また「つげ」は百五十人の
復興救援物資を輸送して萩浜へ
一方「まき」は米や衣類などの救
援物資を積んで鮎川へそれぞれ向
かい、狂喜する沿岸民に待望の救
援物資を手渡した。
 なお石巻万石橋は応急工事用の
 資材が二十八日中に入手のみこ
 みになったので、県道路課は自
 衛隊の協力で、同夜中にも突貫
 工事で開通させる準備を進めて
 いる。

正常授業に入る 小中学校 気仙沼

気仙沼市津波対策本部は二十六
日、水びたしとなっている同市階
上旧塩田跡の要保護世帯十八世帯
を救出するため、陸上自衛隊二百
人の協力で堤防の復旧工事に全力
をあげた結果、ほぼ復旧した。そ
のほか同日は古川市の清掃車の協
力を求めて、市内のふん尿くみ取
りにつとめる一方、道路の障害物
除去作業を行い、二十七日には
全面開通の見通しとなった。
しかしかき集めたゴミの処理が残
されているので、市は二十七日、
民間から車を借りあげて除去する
方針。また大川河口の堤防決壊(六
十メートル)を放置すれば、ふたたび海
水侵入の恐れがあり、県でもこれ
を認め早急に復旧工事に着手する
 なお津波以来、市内の野菜不足
 が目立っているので、市は二十
 六日、近郷農家に呼びかけて集
 荷、二十七日から配給するほか
 井戸がダメになった松岩、片浜
 の三十三戸に給水を始めた。
二十六日まで床上浸水以上の市民
に毛布など千点を配布したが、二
十七日にはさらに千点を追加す
る。二十六日現在、避難民は同市
鹿折公民館内の二十六人を除いて
全部自宅に帰った。
 また急行や短縮授業をしていた
 市内の小、中校十八校は、二十
 七日から正常授業にはいるが、
 津波で教科書を流失した児童生
 徒が百二十五人もいるので、市
 教委は県教委を通じて教科書の
 無料配布方を申し入れる。同日
 の臨時校長会では被災児童、生
 徒に対し被害を受けない家庭の
 児童から一人十円のカンパを集
 めることをきめた。

蜂ヶ崎の標識灯破壊  復旧の見通しつかず

気仙沼湾蜂ヶ崎の導流堤がチリ津
波で決壊、標識灯がつかず市は二
十六日、気仙沼航路標識事務所に
復旧方を申しいれた。しかし早急
な復旧はむずかしく、航行漁船の
注意を望んでいる。

天眼鏡

 ○…チリ津波被害
発生と同時に三浦知
事は、このところ庁
内にいるよりヘリコ
プターで災害地視察
の時間の方が多いと
いう陣頭指揮ぶり。二十五日も搭
乗機が天■急■で矢本飛行場に待
機、部長会議が三時間も待ちぼう
けになったほど。
 ○…いでたちも消防作業服に長
ぐつ、それにゴルフ・ハンチング
をちょこんと頭にのせるという日
ごろの身だしなみのよさとは似つ
かぬ張り切りぶり。なんでも■州
の鉄道建設工事で、空からの実情
調査はお手のものだそうだが、さ
すが六十五歳の年には勝てぬとみ
え、着陸すると、こっそり心臓薬、
栄養剤を一ぺんにあおっている。
 ○…県議会から「保留にしすぎ
る」との苦情まで飛び出している
が、「すわっていて何ができる。
オレは飛び回る」と相変わらずの
鼻っ柱の強さ。これに引きかえ県
議連や災害市町村の“ああしてく
れ”“こうしろ”の陳情に悩まさ
れている留守部隊の重村副知事ら
県首脳陣は、「オレも飛びたい」
とネをあげている。

昭和35年5月27日 ご需用家の皆様  東北電力株式会社宮城支店

 このたびの津波による災害を心からお見舞申し上げ
ます。弊社の配電設備も広範囲に亘り被害をうけまし
たので皆様に大変ご不自由をおかけしておりますが、
只今全力をあげて復旧作業を行っておりますので、
ここしばらくの間ご協力を賜りますようお願い申し
上げます。なお被害のため臨時に電灯を必要とされる
場合その他のご需用に対してはできるだけご便宜をお
はかり致しておりますから弊社最寄の営業所、散宿
所までお申し込み下さるようお願い申し上げます。

お見舞

このたびの津波によ
り被害を受けられた
皆様に心からお見舞
申し上げます
 なお被害を受けました当行の
 志津川・女川・塩釜・北浜の各
 支店はお陰をもちまして復旧
 いたし平常通りの営業をいた
 しております 皆様からお寄
 せ頂きましたご同情に対し厚
 くお礼申し上げます
昭和三十五年五月二十七日
 七十七銀行
  頭取 伊沢平勝

津波の御被害に  心から   御見舞申し上げます

去る二十四日早暁の津波により災害を■
られました皆さまに心から御見舞申し上
げます。
とりわけ三陸地方の皆さまの被害は甚大
で、さぞ大変なこととご同情にたえませ
ん。
なにとぞご健康にご注意され、一刻も早く
復旧、明るいくらしを取りもどされますよ
うお祈り申し上げます。
宮帆実業株式会社
 社長 成田徳治
 仙台市■町 電②六二一四③一八二五
        ②九■■八③五三八九

謹んで  災害の御見舞申上げます

この度の御地大津波被害の模様に皆様の
御安否のほどをお案じ申上げます。
一日も早く旧状に復するよう心からお祈
り致しとりあえず紙上にて御見舞申上げ
ます。
大洋漁業株式会社