津波とこども 作文集 父も弟も妹も死んだ 大船渡市大船渡小六年 石川 量一
アッ火事だ、朝消防署のサイレ
ンがなった。ぼくは「火事だ、火
事だ」と弟をおこした。服を着て
表に出て見た。津波だ。ぼくの弟
が見えなかったので、ざしきへか
けもどった。ぼくは「けんじ、け
んじ」とよんだ。へんじがなかっ
た。もう一度表に出て見たら、弟
がお父さんに「おぶってけろ」と
いっていた。これがけんじの最後
の声だった。
水はぼくのひざかぶぐらいき
た。おかあさんは妹をおぶってに
げた。ぼくはおかあさんの後をお
って行こうとしたら女中さんが
「量ちゃん、量ちゃん」とよんだ
から助かったが、よばなければぼ
くも死んでいた。女中さんに呼ば
れて病院のまどにすがって後を見
たらおかあさんがひろこをおぶっ
てせんろのほうへにげようとした
ら、木下病院の間から大波がきて
おかあさんの足をさらっていっ
た。そのときにぼくはおかあさん
が死んだと思った。そのしゅんか
ん、目から思わず涙がでた。
病院のまどにしっかりすがって
ぼくの家の方を見ていた。少しず
つ水がいっぱいになっていく。そ
の力で家をたおす。ぼくは津波は
はじめて見たので、津波の力がわ
からなかった。ぼくは津波ってす
ごいんだなあと思った。だんだん
水がいっぱいになった。首まで水
が来た。もうだめかと思った。す
ると水がだんだんひいていった。
病院の薬がまざったにおいがまど
から流れて来た。その津波は弱か
った。すぐに水がひけた。そこへ
消防団の人が来たので、おぶって
もらってりょかんの二かいに上が
った。
それから仙台のおんちゃんが一
人で車できたのでその車にのって
西光寺へいっておとうさん、けん
じ、ひろこの死体を見たらぼくは
思わずないた。おかあさんはみん
なにすがりすがり泣いた。ぼくは
かなしくてかなしくてわからなかっ
た。みんなでおがみおわって車で
家へかえったらおとうさんやおか
あさんのしんせきの人が来て、ぼ
くたちをはげましたのでぼくは元
気づいた。これからもがんばって
いきたいと思います。また勉強
も友達もいっしょにがんばって
いきたいと思います。