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津波の跡はなお 岩手県大槌町 一瞬、けし飛んだ”希望”  全財産 フトン一組と学用品

「幸福丸」が家を破壊
 ○…フトン一組、ナベとカ
マが一つずつ、子どもたちが背
負って逃げた学用品……」指折
って数えてもあとが続かない。
岩手県大槌町の小林英世さん(四
六)も一家六人に残された”財産”が
これだけだった。ほかにタンス
の引き出しが二つあるが、半ば
こわれて使いものにならない。
津波の日、潮に乗って流されてき
た二〇トンばかりの漁船が小林さ
んたちの住んでいた埋め立て地
の引き揚げ者住宅にモロぶつ
かりめちゃめちゃにしてしまっ
た。その船の名が「幸福丸」だっ
たとは……。いまも住宅はそばの
道路の上にのっかっている。土
台石だけ
のこしてすっかり形が
なくなったわが家の目
印しは、中身の衣類を
失って土砂に埋もれて
いたこの引き出しだっ
たそうだ。
楽しい 生活設 計が…
 ○…「子
どもたちも
大きくなっ
たことだし
…部屋を一
つ建てまし
するかな」−−六畳一間に重
なり合って寝ている昭広君(一
五)、正幸君(一一)、茂ちゃん(八才)
惠子ちゃん(五才)の四人の子のま
くらもとで英世さんと妻のきみ
さん(三六)はそんな話をしながら
床についた。英世さんは樺太か
らの引き揚げ者。九州出身のき
みさんと現場で結婚し、二十年
に生まれ故郷の大槌町に帰って
きた。樺太時代と同じく自動車
の運転手をして月給は一万二千
円。きみさんが町のカンヅメ工
場に勤めて一時間二十円の女
工さん。工場主が映画館を経営し
ていてタダの映画を見られるの
がプラス・アルファだった。
一年ほど前、町営の引き上げ者
住宅と埋め立て地を安く払い下
げてもらった。この春、長女の
*子さん(一六)は中学を卒業して
釜石市に住み込み女中の仕事口
をみつけた。払い下げのとき、
*母子*に加入して落とした金
など十万ばかりの借金がまだ
残ってはいるが、働き者の一家
がようやく”希望”という言葉
を身近に感じ出したときであ
る。

見舞われない被災者

 ○…「貧しい人ほどソンをす
るー低地にあった中流以下の
家ほど被害はひどかった。ここ
に引き上げ者住宅九世帯の人々
は親類、縁者も少ないので一番
気の毒です」と町の助役さんは
いっていた。大槌町の津波被害
は建物三千百万円、冷蔵施設、造
船所など四億七千万円、漁網一
千九百九十万円、ノリ千二百
三十四万円、漁船、無動力舟二
百九十四隻三千五百八十四万円
など総計で約十億円。十一年に
完成した三・五メートル防潮堤も破壊
されてしまった。町で組んだ応
急の災害予算は二百万円。町営
住宅を補修し小さな橋をかけ直
し、二回の**をやったのが精
一ぱい。それ以上はどうにもな
らない貧しい漁港の町である。
「どうしましょうかねえ…」が
っかりを取り越してしまったと
いうきみさんの語義には、人ご
とのようにもう感情さえこもら
ない。避難所になっている公民
館の二階の十畳間にあるのは同
じように家を失った教祖の家
族のフトンと食
器を除いては、
おそろしく古び
たラジオが一つ
だけである。大
臣や視察団がた
くさん訪れたが
公民館にはいっ
て被災者を見舞
ったのはだれもいなかった。(太
平記者。【写真】避難所に当てら
れているわびしい大槌町公民館

津波被災地義援金 13日受付分 (敬称略)

【本社扱い】六千七百四十円(仙
台市原町小田原二ノ森)*申前
町内会一同▽一千四百六十円(同
市東一番丁)小松ゴム株式会社▽
一千円(同市大和町一丁目)東和
町内会一同▽三万四千八百三十円
(同市長町)西町町内会一同▽三
万三百円(同市河原町)振興会一
同▽千九百円(同市山根街道)
高橋電気株式会社従業員一同▽九
万円、菊扇会(*間*魚)、秀*会
(藤間秀*)、真珠会(前田美栄、
前田栄子)、ひまわり芸術舞踊研究
所(南潮、西条光子)、ノイエタン
ツ研究所(千葉洋子)、玉生舞踊学
園(玉生里恵)▽一千円(仙台市
小田原)斎木印刷所▽一万千百
二十五円(同市西文化町)西文化
親交会▽一千円(宮城県瀬峰町大
里中新井屋敷)高橋*▽六百円(仙
台市岡田)青年団一同▽四千五百
円(同市通町学区)北八中部児童
会▽八千百八十円、仙台市伊勢禅
明町内会▽五千円(東京都目黒区
中根町)谷口精*製作所▽五百円
(仙台市半子町)仙台どんぐりコ
ーラス▽五千円(同市大*五丁
目)若草会▽二千五百七十二円、
仙台市保健所若竹会▽一千円、仙
台市*ヶ岡地区郷友軍恩会一同▽
二千百八十五円(同市畳屋丁)小
さき花第二幼稚園園児一同▽三千
円(同市東一番丁)木内眼鏡店▽
二千円、東北公安調査局隊員一同
▽五千円(仙台市袋町)大阪暖房
大阪電気商会仙台出張所▽五千円
(同)会社員一同▽五千円、仙
台市郡山北目婦人会▽一万円、仙
台市郡山新新田新*会▽八千百四
十七円(仙台市立町)東北割*研
究会▽四万七千三十円(同市高
砂)高砂地区婦人会▽七千百円、
住宅金融公庫仙台支所職員一同▽
一万円(仙台市二日町)宮城木材
株式会社▽一千円(同市長町西町
大通り)ヤマトヤ被服縫製有限会
社従業員一同▽一千円(同市大日
横丁)仙台表装十一日会
【石巻通信局扱い】四百十六円
(宮城県江南町鹿又駅前)下山新
聞店▽三千八百二十六円、全*通
労組本社支部釣島分会情電公社海
底線工事課皆元六男
【塩釜通信局扱い】一千六百六十
円(塩釜市山ノ寺)浅野裁縫専門
学校生徒一同
【秋田支局扱い】二百円(秋田市
保戸野原町)菊池カウ
【横手通信部扱い】五百円(横手
市大町中丁)千葉*介
【東北放送扱い】百円、弓田*▽
二千円(仙台市東一番丁)サッポ
ロビヤホール仙台ライオン一同▽
三千円(同市小田原北二番丁通
り)川金商事友愛会▽二百円(一
宮町)匿名氏
【河北新報仙台販売会社連坊支
店】 六千七百七十円(仙台市薬師
堂)西町内会
計 三十三万五千八百
四十二円
累計 一千百十三万四
千百六円
 訂正 十一日受付分のうち三千
六百円仙台市宮城県第二工業高等
学校職員一同は職員生徒一同の誤
りでした。
国税庁長官通達「昭和三十
四年直法一ー一六四」によ
ってこの寄付金は指定寄付
金となります。