災害特 別予算 原案通り可決 政府へ復興要望を決議 津波県議会
津波被害を審議する臨時県議会二日目の十一日は午後三時二十分から本会議を開き、各常任委員長報告ののち、災害復旧予算五億三百
万円を原案どおり満場一致で可決した。また政府、国会、関係各省に、「特別立法を急いで成立させ、抜本的復興対策の実施を望む」
という意見書を提出することを決議、午後三時四十分会期二日間の幕を閉じた。各常任委員会の主な質疑次のとおり。
総合的対策に着手
土木 各委員から「災害を
繰り返さないよう都市計画に万全を
期せ」という質問が集中した。
これについて県側は、①志津川町
は町当局と話し合い中だが、区画
整理を中心にやる②**町は海岸
の低地帯を第三国道計画と関連し
て高くし、これを基本に街路整備
事業を計画している、と説明、ま
た防潮堤建設について、運輸、建
設、農林各省の所管を統一して総
合的対策に着手することが明らか
にされた。一方、沈船引き揚げ作
業について星竜治(一新)、佐々木
信之助(自民)両氏から「県が行
なうべきではないか」と質問があ
り高橋河港課長は「原則として船
主がやるべきだが、船主が船の所
有権を放棄した場合は県*事業で
行なう」と県の態度を明らかにし
た。
商工会再建に 県職員を駐在
水産商工 「特別融資対策が
とられても、被害者には担保力が
なく、また商工会自体が自然閉会
の状態だから、融資を受けられな
い」といった実情が質疑の中心に
なった。これに対し県側は、商工
会再建のため県職員を被災地に駐
在させること。低額融資には臨時
金融相談所に専決処分の権限を与
えるよう各金融機関に依頼してい
ること。とくに志津川町には県と
各金融機関からなる特別指導員を
おいてすでに金融相談に乗ってい
ると説明した。とくに長沼進氏
(一新)が「再起不能になった商
店が多い。その従業員の救済策を
考えているか」と質問したが、県
は「**事業場の失業者対策に悩
んでいる」と答えたため、こんご
県当局に措置を講ずるよう要望す
ることにした。
一方水産関係は、特別立法実現
の見通しと政府案の内容を聞い
た程度にとどまったが、阿部権
治郎氏(自民)から「ノリ、カ
キに代わる一時換金の浅海養殖
対策を示せ」との質問があり、
曾根部長から「年内中に収入を
あげる道としてワカメの人工養
殖場をつくる。さしあたり気
仙沼に二面、鮎川に四面造成す
る」と当面の対策を説明、こん
ごも岩礁爆破などで造成してい
くことも明らかにした。
苗補給はほぼ終わる
農林 渡辺健一郎(民社)、
伊藤良介(社)両氏から「田植え
不能田でも田植えしないと、農業
共済金が全額もらえないか」との
質問があり、佐々木農政課長から
「いまのところ見込みがない。し
かし田植えさえすれば活*しなく
とも、全額もらえる」と説明があ
った。また災害場への苗補給につ
いて、仙南の川崎町、村田町、白
石市から三万束を補給中で、なん
とか手当てが終わったことが報告
された。
一方。吉田潤弥(自民)、門伝勝
太郎(同)らの各氏から、志津
川の**共同*青所で**四千
三百箱が流失。三百万円の損失
があったことについて、国の助
成措置を要望する発言があった
ので、農林省に陳情することに
した。また除塩事業に関する政
府の特別立法案について前田耕
地課長から「対象耕地は塩素含
有率0・0二パーセント以上だ。伊勢湾
台風時の立法は一地区十パーセント以上
でないと補助対象にならなかっ
たが、チリ津波はこの集団単位
面積が引き下げられる見通し
だ。除塩事業費の総額は二千万
円(一ヘクタール当たり水田三千三百円
畑百五十円)の見込みである」
と報告された。
各地に臨時相談所 気仙沼職安
志津川、気仙沼地方では津波で仕
事場をなくしたり、離職した人が
多いので気仙沼職安は十三日から
被災各地に臨時職業相談所を開
く。
職安事務員一人、町村職員一人の
二人編成で*津(月曜)、本吉(火
曜)、大島(水曜)、唐*(金曜)、志
津川(同)を巡回し、七月十六日
まで続ける。現在気仙沼職安には
東京方面から機械工、土工、季節
労働者など約二百人の求人が舞い
込んでおり、地元でも水産関係で
約二百人の労務者が不足している
ので、受入れ体制は万全。また失
対事業のリグを広げるよう県、労
働者に運動しており、どしどし利
用してほしいと職安で語ってい
る。
総額五十六億円 石巻地方の被害最終結果
県津波対策本部石巻地方本部は十
一日、石巻地方の津波被害の最終
結果をまとめたが、総額五十五億
七千七百二十三万円にのぼってい
る。市町村別では女川町が二十四
億三千万円で一番多く、石巻、鴨
*、**各市町村の*、被害のお
もな内訳は家屋の流失百九戸、全
壊二百四十九戸、半壊八百二十三
戸。床上浸水二千六百二十戸、床
下浸水三千三百五十七戸。市町村
別被害金額次のとおり。
▽女川町二十四億三千四百三十七
万三千円▽石巻市十九億三千百十
五万円▽鴨*町三億七千百五十三
万六千円▽**町三億六千五百四
万三千円▽牡鹿町三億六千四百六
万五千円▽北上村七千三百十三万
八千円▽失本町千九百四十七万九
千円▽稲井町千百八十三万三千円
▽河北町七百二十八万八千円
塩釜に”大商港”を建設 復旧を機会に機運高まる
横浜の代港を目指す
大塩釜港湾建設事業
は、相つぐ漁業補償
交渉の難航などで遅
れているが、チリ津
波襲来でおきた被災
復旧を機会に新たな
構想で建設を促進
する機運が高まって
いる。このため市当
局は県、運輸省と再
三協議を続けている
が、早急に具体案を
つくり直ちに来年度
予算に計上するよう
強く働きかける方針
でいる。
五月二十四日早朝のチリ津波は津
波しらずだった塩釜港の弱点をさ
らけだした。この点を運輸省第二
港湾建設局塩釜港工事事務所が重
視被災直後から港湾全体の徹底的
な調査をやっている。元来塩釜港
は航路、泊地をしゅんせつしない
と使えない。このため泥捨て場が
問題となり、そのたびに浅海漁業
をつぶした土地造成をやってきた
しかし吉**埋め立ては農民の強
い抵抗に合い約一年も交渉を続け
ていながらまとまらず、隣の泥捨
て場である杉ノ入地区には*堤の決
議。沈下の事故もまでおきた。いわ
ば*湾建設と浅海漁民の*立はで
きず、どちらを犠牲にするかとい
ったせっぱつまった岐路にたたさ
れていた。たまたま津波の襲来で
今年度の建設予算一億七千六百万
円(全額国費)をつかう仕事を始
めるに当たって新構想が市、県、
運輸省からもちあがったもの。
三者間の協議では塩釜港はあく
までも漁港であるが、東北の地
理的な見地から商港建設を目指
すことを確認した。当座のしゅ
んせつ泥は沖捨てにするが、桂
島の外洋面に捨てて付近海域を
浅くし、新たに浅海漁場をつく
るなどの方針をたてている。ま
た恒久策としては七ヶ浜町花*
*から二島、石浜の突端から水
島、カイライ島から寒風沢にそ
れぞれ**づたいに防波堤をつ
くる。
これは五十億円前後で*堤できる
とみられ「そう巨額でないでのぜ
ひやりたい」と三者の意見は一
致、いくつもの*問題が一挙に解
決される運びとなった。そしてぼ
う大な漁業補償があるため立ち消
えとなりつつあった七ヶ浜町東宮
浜前面を埋め立て一万トン岸壁四パ
ース建設、現在の一万トンか岸壁から
貞山運河沿いに一万トン岸壁がさら
に数バースも建設する計画がた
ち、港湾建設と浅海漁業の両立が
可能となるわけだ。この計画を具
体化したうえ運輸省は市、県の協
力により三十六年度から始まる国
民所得倍増十ヵ年計画にのせ実現
する方針である。