カキいかだを失って 気仙沼 その日暮しのコンブ拾い
チリ津波で六千台のカキいかだを
奪われ、唯一の生活のカテを失っ
た気仙沼湾沿岸一千戸のカキ養殖
漁民は、浸水した家屋の手入れも
そこそこにカキいかだの復旧に大
わらわの毎日を送っている。辛う
じて残った小舟をこぎ出し遠く外
洋まで押し流されたカキいかだの
残がいをかき集めては終日、復旧
に黙々と働いている。こうしてそ
こに十台、ここに五台とポツポツ
カキいかだの姿が見られるように
なったが、船の航路を残して海面
ギッシリ埋めつくしたかつての面
影はなく復旧した「いかだ」の下
にはカキは一つもない。
そして生活に追われる漁民は復
旧作業の合い間にコンブ拾いに
出向く。もちろん津波に根こそ
ぎ掘りくずされた沿岸ではとれ
ず、一時間、二時間も磯をさが
し回ってやっと四、五百円。こ
でが数人家族の生活の一切をま
かなうのだ。津波がなくてさえ
追いつめられている沿岸漁民は
泣くことすら忘れた無表情さで
アテもないその日ぐらしの明け
暮れだ。
志津川で都市計 画条例を制定
志津川町は九日の町議会で津波対
策を盛った都市計画事業を行なう
条例を制定、区画整理を行なうこ
とを決めたが、県はこの計画推進
のため同町から区画整理地域内の
建物制限の申請があれば直ちに制
限に乗り出す方針でいる。制限の
対象は三十平方メートル以上の建物。
県下通信 石巻・桃生・牡鹿
▼石巻港の五月中の鮮魚水揚げ
はチリ地震津波の影響から六百八
十七隻、一千三十三トン、三十九万
二千八百円にとどまった。前年同
期より百四十一隻、五百七十トン、
一千五百万円それぞれ減。
▼生活保護階層の津波被災者の
ため県は災害救助法によるバラッ
ク建の仮設住宅を早急に建てるこ
とになり石巻地方に次のとおり割
当を決定。住宅は一戸当たり十六
平方メートル、十万円以内、二ヶ年間無
料貸付け。(女川町)二五、(*勝
町味噌作浜)一八、(同分浜)二、
(同上*勝)七、(石巻市桃浦)五、
(同月浦)一、(同荻浜)七、(同侍浜)
一、(同小*浜)四、(同牧浜)五
▼石牧規務協会(粟野末蔵会長)
は九日、管内の被災者のため税の
無料相談所を開くことに決めた。
津波被災者に対しては被災の程度
によって国税の軽減、免除、徴収
猶予の特別措置が決まっている
が、一般にはわかりにくいので会
員となっている十五人の税理士が
出張して相談に応ずるもの。開設
は七月はじめからで期間は一ヶ
月。