津波臨時県議会開く 特別予算案を提出 自衛隊の活躍に感謝決議
津波災害復興を審議する臨時県議会が十日開かれた。本会議は、まず菊地清太郎氏(明政)がさきに死去した元県議会議長遠藤実氏に
対する追悼演説を行ない、続いて被災者を代表して志津川町で被災した阿部権治郎氏(自民)が各方面から寄せられた救援に対し感
謝あいさつを述べた。次いで高橋正男(自民)、小杉十郎(同)両氏が緊急質問に立ったあと、自衛隊の災害救援活動に感謝決議を行
なった。このあと一般会計四億九千二百九十七万円、特別会計一千四万円、それに伴う起債および**計画の災害特別予算案三件につ
いて、三浦知事から提案理由を説明、これに対する質疑ののち、三議案を各委員会に付託して散会した。
本会議
午後一時十五分
開会。高橋正男
(自民)、小杉十郎(自民)両氏
は、「応急対策を急ぎ、恒久的な
復旧対策を図れ」と**質問。ま
た質疑では***郎氏(社会)が
「農協、漁協の倉庫、事務所の被
害対策」、また渡辺健一郎氏(民
社)が「除塩事業に県も助成措置
をとるべきだ」と、それぞれ県の
方針をただした。
高橋氏 一、学校などに合同生
活をしている被災者がかなりある
応急住宅の建設を急げ。
一、あすの生活資金に困る**漁
民の立ち上がりつなぎ資金にどう
手を打っているか。
一、カキの養殖施設はこんご激浪
に耐えられるよう研究すべきだ。
一、防潮提、砂地造林など恒久的
な海岸保全対策を立てるべきだ。
一、県が音頭をとり津波警報の国
際間協定を促進するよう政府に申
し入れるつもりはないか。
小杉氏 一、特別立法の政府案
からノリと定*網が除外されてい
るのは問題だ。政府にさらに要望
してもらいたい。
一、北上用の内海橋(石巻市)で
沈船が多かったのは、橋脚やらん
かんに係留したためだ。橋もその
ために破損した。いままで係留を
やめさすよう県に再三申し入れた
が、各課の連絡の悪さから放置さ
れていた。
三浦知事 一、応急住宅は二十
五日までに三百三十一戸を建てる
が、全体で一千四百五十戸分を早
急に建設する計画だ。合同間借り
生活を一日も早く解消するよう努
めている。
一、つなぎ生活資金は**修築、
救済土木事業に被災者を撤収して
解決を図る一方、利子補給も行な
い、特別融資に万全を期す。カキ
・イカダの問題は*ガキ、ワカメ
の増殖施設の造成と関連して、東
北大や東北海区水産研究所に調査
を依頼する。
一、橋の係留船は早急に禁止す
る。所管は土木出張所だ。
一、海岸防潮計画、気象観測網に
ついてすでに政府に申し入れてい
る。
*村副知事 一、自民党策だと
新しくノリ、定*網は特別立法の
恩恵に浴ずる。政府が認めるよう
一層努力する。
一、各団体の施設は共同利用施設
として特別立法に高率補助される
見通しだ。
午後四時五分散会。
つなぎ融資な ど五件の請願
十日開会された津波被害臨時県
議会に次の五件の請願書が出さ
れた。(カッコ内は請願者)
▽養蚕被害に対し復旧費助成(県
養蚕農業協連合会長谷津儀十
郎)▽水産被害に対する復旧つなぎ
資金として県費の預託(県漁協
協組連合会長菊田隆一)▽ノリ・
カキ養殖施設復旧、小型漁船の建
造費に対して高率補助の適用(同)
▽女川港津波防災提の築造(木村
女川*長)▽気仙沼、鹿折、松岩
格漁協組の共同利用施設の復旧に
ついて高率補助(気仙沼湾漁場擁
護同盟委員長尾形熊次郎)
救済策を警報で陳情 チリ津波被害復旧対策
県漁連と県信漁連の役員で構成す
るチリ津波災害復旧対策委員会は
十日、農林省、水産庁などをはじ
め県選出の国会議員に対して「ノ
リ養殖施設、定置網、水産加工施
設の救済策を特別立法政府に案に
盛り込んでほしい」と緊急警報陳情
をした。十日午前十時から仙台市
外記丁の水産会館で対策委を開
き、さる六、七の両日漁業者代表
が中央に陳情した際明らかになっ
た農林省、大蔵省などの「考え方」
を持ち寄って検討した結果、不満
足な点が多いので急遽**を打つ
ことを決めたもの。
物価、全般的に安定 被災五地 区を調査
県商政観光課は県下の津波被災
地の物価の動きについて塩釜、
石巻、女川、志津川、気仙沼の
五地区に調査員を出して調べて
いたが各地とも値上がりの動き
はなく、反対に被災者に対する
値引きサービスが行なわれてお
り、また買い占めなどもなく全
般的に安定しているということ
がわかった。
これは被災者に対する県民の思い
やりと、被災地がおもに消費地だ
ったため、生産地ほどの打撃を受
けなかったことによるものだが、
今後も仙台などの問屋にダブつき
気味の商品を順調に送り込めば値
上がりの心配は全然ないという。
なお県はとくに値上がりを懸念さ
れる*表について岡山、広島、高
知などの生産県に問い合わせたが
緊急需要に応じられるとの返事が
あり、いま被災地の業者へ一括購
入などのあっせんを行なってい
る。各地の状況は次のとおり。
▽塩釜市=クギ、針金、木材が一
〇パーセント前後値下がりしているほか変
動なし▽石巻市=被災前と変わり
なく、*災者に対する割引サービ
スが行なわれている▽女川町=家
具応急処理用のベニヤ板が割り引
き販売されている。青果物は産地
安のため二〇パーセント安、卵は一−二円
上がったが、これは羽抜け期のた
め▽志津川町=被災品の投げ売り
中で、とくにリ災者には三〇−五
〇パーセント値下げ。また仙台市の丸光デ
パートが出張販売して日用品、雑
貨を九十円均一で販売中▽気仙沼
市=全然変動なし。
県、失業救済 対策を決める
こんどのチリ津波で、ひどい打
撃を受け、家を流され、船を失
い、生業を奪われてあすの食に
も困るという漁民にさし当たっ
ての生活資金を与えるため、県
は被災地に県単独事業をくり上
げ適用して集中的にふりむける
ほか、道路改良の公共事業も行
ない、失業者救済対策をはかる
方針を決めた。
被災地にふりむけることのできる
県*事業は総県単独事業のうち、
道路、橋の改良二千五百万円、河
川局部改良四百万円、一般失対事
業三百二十四万円、市町村からの
受託事業六百五十万円など三千八
百七十四万円だが、このほか六月
定例県議会ではこのワクはさらにふ
えるもよう。また公共事業は道路
改良工事だが、*津町一ヶ所、志津
川町二ヶ所、女川町二ヶ所、**
町一ヶ所、石巻市二ヶ所、稲井町
二ヶ所、矢本町一ヶ所、**町一
ヶ所合計十二ヶ所で近く着工の予
定である。
いつ住める仮設住宅 志津川 用地買収まとまらず
県建築課はチリ津波被災者のう
ち、生活保護母子家庭などの住
宅困窮者に二年間家賃いらずの
仮設住宅二百十六戸を建てること
を決め、被災のもっともひどか
った志津川町に百五戸が割り当
てられ、このほど建築にとりか
かった。しかし、同町の建築三
地区のうち松原地区の四十七戸
はすでに一部が完成に近いにもか
かわらず、町当局と地主との用
地買収の話し合いはまとまらな
いため、造り直しとなりそうで
「一日も早く住居を」と望んで
いる被災者を心配させている。
この問題は地主の同町で外科病院
を経営している石母田昇さんとの
交渉がまとまらないため。被災後
の応急措置で町当局は石母田さん
に「とにかく住宅地として九百九
十平方メートル(三百坪)を買収させて
ほしい。価格はあとで適当に決め
たい」と同意を取り、県が建築を
はじめたが、話し合いの段階には
いって町側が三・三平方メートル(一
坪)当たり三千円くらいを示した
のに対し、石母田さんは被災した
うえ土地を売って東京に転出する
意向も手伝い、三・三平方メートル一万
円の線を出し、差が大き過ぎて折
り合いがつきそうもない。このた
め町当局は十日から隣接の地主に
呼びかけ買収価格交渉をはじめて
いるが、せっかく完成近くなった
約三十戸ができ上がらないうちに
近くの土地に引っ張られていかれ
それだけ完成も遅れることになり
そうだ。