休止状態の東海岸 弗々荷動き始む 釜石地方経済界の建直しは 一に火保払出しの如何
三日の三陸震災のため上中旬とも同地方の商取引が休止の状態に陥り全く不活発なるものであったが下旬に至って罹災者救護の方も稍安堵して良い状態となったのでぼつぼつ荷動きを見現在殖産銀行を通じ鰯粕、魚油、■、鰹節、木炭などの重要商品の荷為替が取組まれているいま殖銀支店で調査した商況と物価を見ると次の通りである。
△釜石町
釜石町に於ける海嘯火災罹災者の復活は一に火災保険金の支払いを受けることにあるが保険契約約高四十数万円は天災による損害というのでいまだ支払いを受けず保険会社と交渉中である若し支払われぬこととなれば多数の商業家漁業家の復活が困難で延いて地方経済界建直しに甚大なる影響を及ぼすことが明瞭である。唯昨今土木匡救事業に支払った賃金は中妻河工事六百四十円白浜築港百九十六円で現金の流動極めて微少重要商品の千■は改良一等十貫入十五円並一等同十三円を称えているも荷動き案外閑散であるが東京方面への売急ぎが見られる又鰯粕は十五貫三円五十銭で上旬値段より二十銭安称えである。
△山田町
山田町の海嘯による被害七十万円と算せられ目下の処漁産物の取引が休止されている唯木炭の移出がぼつぼつ見られるが値段は楢割五貫五十五銭雑丸四貫入四十銭雑割同三十五銭である。
△盛町
目下のところ盛町山手部落から物資を供給され変態的な商況を見せているが当分この変調な状勢が続くであろう震災前宮城県方面へ移出していた商品は一向に動かず物価は高騰のままであり重要商品も又値上げを見ているが来月となれば相当荷物が動く予想で目下商談が進められている重要商品物価左の如き値段をとなえている。
鰯粕十五貫俵三円六十銭(四十銭高)漁油四貫五百匁一斗綿入一円四十銭(十銭高)鰮正百斤俵二十三円(三円高)