医師実は高利貸 医療費滞納せば直ぐ借用證書 田老から救護班派遣願い出づ
県警察部では防疫事務視察のため衛生課員を罹災各地に派遣しているが廿四日宮古署下状況報告に依ると磯鶏崎山両村は村医を嘱託しあり重茂村は廿二日に村医が逃げ出して後は医師がいないので他から村医嘱託するまでは県医師の派遣を希望しており又織笠大沢両村は山田町に近接しいるので大体医療に差支えなきも沿岸中で最もひどい災害を蒙った田老村には医師あるも殆んど高利貸しが本業の如くで到底患者救護には役立たぬ有様なので救護班派遣を熱望しいる旨報告あったが県でもこの事態には唖然たるものがある。右報告書の節を挙げると左の通り。
田老村には開業医某氏あるも殆んど従来より医業に親しむことなく高利貸が本業の如くにして同村患者の九分は宮子町に至り診療を乞うを常とし震災後は更に医業に従事せず現在同村第一番の宏大なる家屋の建築に取掛り二十二日上棟せり関口同村長の言に依れば同村内に急患あるも報酬を出さざる時は絶対に往診せざるを例とし万一医療費を滞る者あるときは一割五分利付の借用証書を書かしめ現に三万余円の借用証書は今度の海嘯にも流失することなく持出して所持し居り期限経過せば訴訟を提起して返済せしめんとし居る状況にして同石が屋舎を新築し開業するも罹災民が救療を受くることは絶対不可能の状況故向後一ヶ月間位の予定で県の救護班を存置せられ度村当局の希望で宮古署に於ても同一意見に有之候。
罹災火災保険 契約者協議会 廿五日釜石で 交渉報告
釜石町火災保険支払い交渉委員は廿四日全部帰金したので其の経過報告をかね今後の対策を講ずる為廿五日午後六時から役場会議室に罹災火災保険契約者協議会を催す。
慰問品配給船 繋留中顛覆 田野畑村で
慰問品配給のため本県に於て青森県から借受けた発動機船十五トン土愛丸は二十二日八戸から慰問を廻送し下閉伊郡田野畑村に貨物全部の陸上げを了え岸壁に繋留中同夜の地化のため顛覆附近に船腹をさらして居るが波浪高く未だ手を施しかねている。
大学生風の男 更に四名入県 労農救援会派遣のオルグか 宮古署捜査に努む
(宮古電話)田老村における赤化オルグ検挙から県特高課では俄然色めき立ち小舘盛岡署特高係は宮古署に於て既報の三名の取調べを続行すると共に後藤特高課長は急遽釜石町に赴き各署に手配を命ずるところがあった三陸沿岸罹災地には尚中央よりオルグが逐次潜入した形跡があり彼らは巧妙なる方法で救護班となり或は災震慰問団となって堂々乗込み人心の弱点につけ込んでプロカル運動を働きかけんとしたものである。尚宮古署では廿三日に至り同日早朝山田町を出発した大学生風の四名が同じく労農救援会より派遣されたオルグである事を探知しあわてて各署に手配したが未だ逮捕されぬ。彼らは廿一日頃宮子町を経て廿二日山田へ赴き平半食堂に一泊し翌朝徒歩で大槌に向った事がレポの失策から判明したもので取調べの進むにつれれて或は仙台労救支部及び中央本部のマツスアレストまでも進展するではないかと見られている。
速かに生業に就かせ 救護範囲縮小さす 罹災民救護期間を大体四月一杯 県の方針決定す
震災地における県の救護方針は庁内部課長合議の結果救護期間を大体四月一ぱいとし出来得るだけ速かに生業につかしめる方法をとってこの期間内に救護範囲を逐次縮小するの意向であり現地視察の前田内務部長並に二十四日から四日間の予定で災害地に向った調査員の帰庁を待って更に議を練り基本計画を確立することにした。
食糧配給方針
県の食糧配給方針は今の所左記方法によることになった。
一、罹災救助基金規則による食糧の配給は罹災当日より二十九日間を以て打切ること
二、食量給与者範囲は左によること
1、倒壊半壊流失失業等罹災し困窮するもの
2、家族の死傷によりこんきゅうするもの
三、救済事業着手又は就業開始等により食糧を自給し得るに至りたる者は之に対する給与を打切ること
以上の外食糧給与者範囲は出来得る限り縮小する様努むべき事
四、給与者範囲の縮小は三月末日以降五日毎に調査して之をなし食糧給与の名簿にその給与打切月日を記入し置くべきこと
五、間接的に食糧給与者縮小に努むるため左の方法をとるべき事
1、罹災地物資の移入を円滑ならしむるため輸送能力及商取引の快復購買組合の発達等に努むること
2主として罹災者中の要給与者に町村内罹災復旧上の労役敢
3入を得せしむる方法を講じ食糧給与を打切るべきこと
4町村としての復旧工事救済工事は出来得る限り急速に着手すべきこと
曹洞宗追悼会
曹洞宗主催、三陸海嘯惨死者追悼会は二十四日午後二時から盛岡市北山報恩寺で挙行、本山より栗山音管長の臨席あった外中村市長福井測候所長、湯本学務部長、大矢馬太郎の諸氏の外県下各寺院から約三百名の出席あり式後境内に津浪死者記念大塔婆を建立して同三時半閉式した(写真は追悼会)
三人に一組 布団買上 県在庫配給品
罹災地救護物資の県在庫品左の如し。
白米二千四十表これに配給済の残品を加うれば二十五日以後十日分布団の買上品五千九百三十枚両日中に全部調製配付の見込全部配給後は三人に一組位の割合となる衣類五百梱雑品七百梱外に配給品として野菜類は一日約五百貫を買上罹災地に発送している。
三陸海嘯 義捐金{三月廿四日迄本社扱}
金一円九十二銭無名氏 ゴット外八種薬品六六八点岩手県薬業組合後藤デシン外十九種薬品三、五一七点岩手県薬剤師会
小計一円九十二銭
累計 三千二百五十二円六銭也
県扱(二十四日)
六円六十八銭東京市立第二明治小学校第三学年生福岡組一同 五円六十銭東京市伊藤龍三外十五名 三円三十三銭同小林愛子 三十四円六十銭東京市深川平野婦人美容術組合 二十円五十三銭■江農試分場場員講習生一同 二十円二十三銭県■社寺兵事課課員一同 十六円四十七銭県立花巻高等女学校教員一同 百三十三円六十一銭■山■村村民一同 五円五十銭久慈町枝成沢戸主会一同 三十三円東京市扶桑教所■神道行■教会 十円九十七銭下閉伊郡大川尋常高等小学校職員生徒一同 十円さかり町女子青年団団員一同 二円六十五銭八幡村村民有志 八円九十銭同消防組 二円六十五銭水沢町役場吏員一同 十円青森県三戸詠歌会員 十円同七戸町瑞龍寺婦人会 二十五円新潟県柏崎尋高小学校並実業補習学校職員生徒一同 五円飛行母艦風翔十分隊及川幸介 九十円三五銭豊間根村村民一同 十五円東京府由木村由木尋高小学校同公民学校並女子公民学校職員生徒 五円東京府砂川村青年団一同 五円同女子青年団一同 一円千葉県早川久正 一円二六銭埼玉県八木郷尋高小学校尋常科六年生一同 一円赤沢村(追加)村民一同一百十九円五五銭岐阜県愛国婦人会支部募集の分 一百円福島県磐城炭鉱々業所 二百八十二円五銭湯田村々民一同 一百円新潟県■内中野財団 一百円七十九円神奈川県厚木尋高小学校内愛甲郡教育会扱分 七十円東京府立第一商業学校並帝都商業学校職員生徒一同 六百二十八円六九銭神奈川県庁職員一同 三円福島県喜多方町十五日会 三十二円六四銭東京市高円寺元町会々員一同 七円二五銭栃木県益子町大字星宮星宮青年分団十一円四五銭御堂村水堀尋常小学校職員生徒一同 三円四三銭同同情箱三円七十銭一方井青年団々員一同 十八円三銭岩手県健康保険課々員一同 四円六十銭小国村小国青年団々員一同 十円六一銭同字江繋尋常小学校職員生徒一同 三円九十銭同同女子青年団々員一同五円花巻町幼稚園職員生徒一同
日計二千六十五円二十三銭
累計二十四万三千六百三十円九十八銭
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