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罹災地に赤い魔手  三名のオルグ逮捕  田老村役場を訪問した男女   診療行いつつ運動

(宮古電話)県特高課では今次の震災により三陸沿岸一帯の治安が罹災民の心情と共に極度に空隙を生じているのに乗じ中央より労農救援会日本振興医療救済会のオルグがプロカル運動の指令を受けて潜入せる事を探知県下に手配中の処去る十九日田老村役場の受付係に東京市より派遣されたと称する三名の医療救護班が訪れ罹災者の診療を手伝いたいと申し出たが折柄出張中の佐々木特高係が怪しいと睨み取調べた処不穏文書らしきものを発見追究の結果派遣された右オルグと判明直ちに後藤特高課長小舘盛岡署特高係が急遽来宮引続き宮古署で取調べ中であるが右三名は医師渡辺宗治(二九)看護婦赤木峰子(二九)事務員鈴木三郎(三〇)と云い震災直後本部よりの指令により先ず仙台市にある老救支部に立ち寄り手配をなし本県に医療班として潜入し診療を行い乍ら赤化の魔手を延ばし労農救援会及び日本医療救済会の支部を設置せんとし未前に逮捕されたものである。

余震実に八百回に及ぶ  記録的な震災後の二十日間

本月三日の強震以来毎日の如く人体に感じない程度の余震があり。二十二日迄水沢緯度観測所の地震計に感受した地震は驚く勿れ実に八百回に達している。右について同所の池田技師は語る。
 二十日間位で八百回もの地震を感受したという事は観測所初まってない事である。例年なら一年中に多くて三百回の地震であるからこの二十日間に三年の地震が一気に来た訳である。大きな地震の後にはかならず余震が来るものでこれがなければかえって不安なのである。今余震の多いという事は此処しばし大きな地震がないという事を示すものであろう。
福井盛岡測候所長の話し
 当所では八十倍の地震計を使用しているが恐らく六百回以上の余震を発している。地震計は土地の状況によって、五十倍、百倍という様に設備しているが精密に調査したら想像以上の回数に上るであろう。強震の後には必ず余震が来るもので先の強震で生じた間隙の整理といった具合に余震は数が多いだけ漸次安定して来るものである、今回の余震数は記録的ではあるがあれだけの強震の後だから余震があった方がむしろ今後が安心というものである。

震災の痛手に  学費を失う者   各中等校に八十八名    罹災戸数は二百八十四名

県下中等学校生徒の震災被害は生徒父兄の家屋流失倒壊焼失浸水の罹災二百八十四戸、職員五戸で家族の死亡三十、傷十四、行方不明四で家財の被害程度は約三万三千五百円でこのため学資金補給に困難を来しつつあるもの八十八名で各校別に示すと
 岩手師範九▽女子師範五▽盛中二▽遠中一▽遠野高女一▽宮古高女三▽高田実科高女四▽釜石実科高女二二▽大槌同七▽山田同一九▽盛岡農三▽盛農一▽■業一▽水産四▽盲唖四▽岩手高女一▽東北高女一

愛善会四氏慰問

人類愛善会黒沢尻支部の佐々木左蔵、西舘末治、飯盛喜一、及川新一の四氏は釜石町の災害地慰問配給のため二十三日午前八時十四分黒沢尻駅発列車で出発した。

国有林調べ  船材、住宅材

青森営林局では管内国有林を払い下げて津波災害地の本県沿岸に船材住宅建築材等を配給する計画を樹て管内各営林署に命じて立木の調査をなさしめて居り花巻署でも本局の命に依って調査中であるが同管内には船材、住宅建築材になり得る木材が相当あり愈々東京方面から供給受けるまでもなかろうとあって同署では本局の命さえあれば何日何時でも要求に応じ得る準備を整えている。

小屋掛材料 更に三百余

県の小屋掛材料の配給は既に千八百六十九戸分を震災地に送り届け更に災害町村に照会の上小友、広田、末崎、赤崎、綾里、越喜来、唐丹、釜石の各町村に三百三十九戸分を配給する予定である。

今後の配給米  千三百三十石   罹災地三万余人へ

罹災地食糧配給は主として県から直接送付を行なっているが今後の県配給見込みの分は左の通り。
 ▲釜石町一四八石大槌一六〇鵜住居四八唐丹四四計四〇〇▲宮古三四石山田二〇六崎山三田老一一九磯鶏五九津軽石五五大沢七二織笠四〇船越七五計六〇〇石▲気仙二四石小友一七広田一七末崎二八大船渡四五赤崎八四綾里六一越喜来四三吉浜三計三二五石
合せて千三百三十石で罹災地に於ける要給与人員は三万三百六十四人であった
 ▲釜石四、四七七人大槌四、九一三鵜住居一、四六〇唐丹一、三一七計一二、一六七▲宮古六〇一山田二、四九四崎山二〇田老二、一三二小本三七一田野畑四九二普代(第一)四二二磯鶏五三六津軽石五三六重茂二六四織笠四三五船越一、四七三計一〇、二〇三▲高田四気仙四〇一米崎三〇小友四七八広田七五〇末崎九〇〇大船渡七九三赤崎一、三八五綾里一、四三五越喜来七一〇吉浜七九計六、九六七▲久慈五長内一二宇部二〇野田二九五夏井一〇侍浜五中野二〇種市二八〇普代(第二)三八〇計一、〇二七

救護基本調査に  県属九名を派遣   きょうから災害地に    きのう部課長会議で決定

県庁部課長会議は罹災地今後の救護方針を確立するため二十四日より四日間県属九名を左記町村に派遣し配給状況及び要救護人員等に就て基本調査に当らせることとし午後七時半散会した。
◇千葉属(会計)種市中野侍浜夏井久慈◇小野田属(地方)長内宇部野田普代◇佐藤属(商工)田野畑小本◇北田属(地方)田老崎山宮古◇斎藤属(社兵)磯鶏津軽石重茂◇沢田属(庶務)吉浜越喜来綾里赤崎◇田中属(山林)大船渡末崎米崎小友広田高田気仙◇小笠原属(官房)大沢山田織笠船越◇佐藤属(地方)大槌鵜住居釜石唐丹

二千の霊よ  安らかなれ   市内婦人四団体が    海嘯追悼会

愛国婦人会岩手支部、盛岡仏教婦人会、盛岡市婦人会、女子青年団の四会連合の三陸海嘯死亡者追悼会は二十三日午後一時より北山願教寺で行われた。前記婦人会の他に一般出席者も加えて三百人の婦人達は折からの雨をおかして参列。
 一、打鐘一般入場 二、弔辞イ愛国婦人会岩手支部長ロ岩手仏教婦人会長、 三、読経 四、焼香イ、愛国婦人会岩手県支部ロ岩手仏教婦人会ハ、盛岡市婦人会ニ、盛岡女子青年団代表者ホ一般参列者
の順序で行われ引続き市長代理として出席した上飯坂社会主事、四戸熊蔵両氏の慰問視察談に移り悲惨な被害状況に帰らぬ二千の霊を慰むる心は新たにせられ三時散会した(写真は会場)

三陸海嘯 義捐金(三月廿三日迄本社扱)

ラッキョウ漬二樽東京市王子区岩手県人会大森久平氏外三十一名 金二円満州綏中警備隊盛岡出身一兵士 金十八円五十銭赤坂田議長外有志一同(内訳十円三十銭浜■会純益金、個人預金一円宛高中勝利、畠山市太郎、井上喜一郎、工藤馬助、五十銭宛荒川市太郎、北舘忠兵衛、阿部万次郎、関佐七郎、村上友治、斎藤直衛、松島勇蔵、八角商店、二十銭他有志 金五円満州派遣軍歩兵第三十一連隊第三中隊新沼静雄
小計金二十五円五十銭 累計金三千二百五十円十四銭也
県扱い(二十三日)
百四十六円五十七銭岩手県■■整理課課員一同 三十二円四十九銭■務課同 十円本宮村村会議員一同十一円七三銭県立盲唖学校職員生徒一同 六円十四銭鬼柳村村役場吏員一同 六円七十銭東京市押水会本部 四円与田村青年訓練所員一同 五円舞川村下相川正義会一同 五円安家村在郷軍人分会一同百円樺太大泊消防組一同 十円長野県田賀村青年会 百八十円東京市神田区婦人会一同 十六円三十三銭神奈川県串川第二尋常小学校職員生徒 三円五十四銭同上第三同上 十一円五十銭群馬県富岡署管内飲食店組合県連合西洋料理飲食店組合事務所 三円五十銭静岡県三島野重三連隊三中隊三班一兵士 十五円黒沢尻町長 一円二十銭荒沢村荒屋青年訓練所 三円小梨村青年会及軍人分会三班一同 十五円二十五銭煙山村有志 二円東京毎夕新聞一読者 七十七円二十九銭盛岡農学校職員一同 一円滋賀県上草野尋高小学校高二押谷喜太郎 四十五円四十八銭県立農事試験場職員一同 五円宇都宮市県神職会員 五円同二荒山神社職員一同 九十二円八銭盛岡中学校職員生徒一同 三百九十五円七十一銭盛岡市役所取扱之分
日計 一千二百五十九円二十二銭
累計 二十四万一千五百六十五円七十五銭