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全国を六班に分ち  義捐金百万円募集   各課長を派遣し同上を求む    復興事務局の計画

震災地の救護は県並びに各機関の協力によって目下の所順調に進んでいるが罹災者の生業資金が政府から融通されるまでの期間は県で救護はもとより就業費の一部も負担するの要を認められるので復興事務局救護部では義捐金百万円募集計画を樹て近く全国を六班に分ち中部地方鈴木社会課長北陸地方井上農務課長中国地方後藤特高課長近畿地方奥田教育課長四国地方久尾地方課長九州地方櫛田官房主事と分担を定め派遣し府県庁及び所在市役所商工会議所等を訪問し本県東海岸大海嘯の惨状と被害を乞うべく救護部今後の主力は配給よりは寧ろ義捐金募集に傾注することになった。救護部長湯本学務部長は語る。
 ただ今募集計画の積極的試案を作成し帰京中の石黒知事の指揮を待っている知事も近く中央放送局から惨害の実情を全国に放送されることになっているがこの度の震災は関西方面に余り強く響いていないようだからこっちから出かけて行って同情を求めようと云うのであり、余りよその御厄介になる事は感心しないが本県の実情では如何ともなし難く案をたてた訳です。

大槌局の佐藤さん  唯一人の大臣表彰   災害を未然に防いだ機敏さ    外に局長賞十三名     震災金鵄勲章

(仙台電話)仙台逓信局では今回の三陸沿岸震災に際し従業員にしてその行動機敏にして且つ公衆のため尽力したるものを功労者として表彰することとなり数日前よりこれが調査中であったが今回決定した。この表彰に逓信大臣より表彰されるのは唯一人の交換手があるそれは大槌局の佐藤ヒメさんで三日午前二時半頃地震に次いで第一回の津波襲来を機敏にも電話を通じて察知し山田釜石両局に急報したため両町の被害甚大なるに反し比較的死傷者の少なかったのは全く同交換手の機敏なる行動の賜ものであって今回の震災の唯一の功労者であるとて仙台逓信局長も大いにその活躍振りに感激して本省に大臣賞を推薦したものである。又逓信局長賞を授与されるのは十五名あるがその内
 釜石局交換手三浦まよ 宮舘俊子 伊藤ひさの 叶井たか 佐藤みわ 佐藤ゆき 鎌田はる子 山田局交換手沼崎チエ 内舘あき 湊つや 綾里局逓送手橋本富之助 集配手原一之 細浦局事務員高橋太栄等
右の外死亡したるもので表彰されるものは普代局長大村謙三、重茂局集配手渡辺由吉、田老局事務員畑山元吉、集配手武藤佐平逓送手黒田善八郎同村田留吉君等である。

唐丹本郷湾でも  死体発見されず   沖に全部流されたか

十四五日両日間唐丹村の海底を潜水夫を以て屍体捜査を行ったが既に屍体は沖に押流されたものらしく一つの屍体も発見する事が出来なかったので一先ず本郷湾の海底捜査は止め十六日からは大槌湾の屍体捜査に当る事になった。

潜水器  続々本県へ

水難救済会本部では罹災地行方不明中の死体発見のため潜水器五台潜水夫十人を十五日本県に送る旨森部警察部長から報告あった此の潜水器は二台は矢作駅、三台は平津戸駅に到着し各署に配給されるが現在久慈署に二台唐丹村に二台宮古署に二台あり全部で十一台になるがその効果は余り期待されずに居る。

武蔵高等工科校  学生来援す   二十名釜石へ

花巻町出身及川恒忠氏経営の武蔵高等工科学校学生二十名は中田梅津、(花巻出身)両教授統導で十五日午前九時五分花巻発軽鉄列車で災害地釜石に向ったが一行は復興建築に関する種々実地見学を華ね直接応援に当る筈。

岡崎氏来盛  盛岡駅に泊る

相続税倍増安国論の主唱者岡崎俊郎(岡崎久次郎代議士三男)君は静岡県光の村を代表して三陸災地釜石、唐丹、吉里吉里、宮古、田老等を六日以来慰問していたが十五日午後ひょっくり宮古より来盛し同夜は盛岡駅待合室に明かした氏は語る。
 災害の村々に罹災民と同様の生活を体験し精神的方面の慰問に努めてまいりました、また光の村からの慰問金も夫々贈呈しました。

各社寄託金は  現金で支給

(東京支局発)今回の三陸大震災に際し各新聞社に寄託された同情金の使途に関し農林省水産局ではこの同情金の一部を以て漁船漁具を買入れ配給する方針であったが県及び代議士側の意向は罹災者の立ちなおるまで当分生活費として現金で支給することに決定した。尚十四日朝日新聞社寄託印十五円の使途につき同社より被害各県の代議士宛申出であったのでこの旨回答するところあった。

新聞連合社義捐

本邦二大通信社の一新聞連合社専務理事岩永氏より本社に宛て今回の三陸水害罹災者に対する義捐金二百円を寄託して来たが同社の社印一同よりなる義捐金なので本社では罹災地へ夫々配分する事とした。

困窮者も慰問  罹災地に続出する悲話に   県で義捐物資配給

罹災地の救援は目下の処主として家屋流失者を罹災民として物資義捐金の配給をなしているが此の半面に於て余り生活の豊かならざる者で罹災民を収容扶助して居る為め却って困窮に陥って居るものが罹災各地に続出の有様だが更に家屋の流失は免れても生業の資たる船舶を流失して明日の生活に困って居るものが多いので県でも捨ておけず之等の家庭に対しては義捐物資配給に関しては相当の考慮を払って差支えなしと十五日夫々通牒を発した。

早池峰丸で  沿岸視察   小安場長帰る

十二日以来指導船舶早池峰丸に乗組み被害地の各港湾の調査を行った。県水産試験場の小安場長一行は十五日一先ず引揚げたが同情の推論を充分立證し得る材料を豊富につかんで帰った。小安場長は満足気に次の如く語る。
 あなたの方の新聞で報道された通り試験場の推論は全く間違いなく、立證材料となる原料が沢山ありました。十二日は気仙沼、大沼の両湾を調べましたそれから広田、高田松原、小白浜と進みました。気仙沼は殆んど被害らしい被害はありません。旅舘の女中は翌朝になって津波のあった事を知ったのだそうです。此処は津波に圧力を加えさせる磐城がなく地盤は泥砂であった為被害が少くなかった。一番ひどくやられたのは綾里です。今度の調査に依って津波の観測は陸路からでは全然駄目な事を知りました。面白い実例として高田松原がちっともいたんで居ないのに小白浜の竹林はむしられた髪の毛の様にぐちゃぐちゃになって居る所がありました。要するに将来津波の襲来に備えるには海の深さと沿岸の形に依って防波堤を築く事です。同行の農林省の曽我、西両技師は被害並びに復興について調査しました。

防寒具と  裁縫道具   不況の叫び

県衛生課では罹災各地に救護班を派し罹災復興状況を視察して居るが目下罹災地では食糧品としてゴマ油、油揚、くるみ、キナコ等のヴィタミン欠乏を補うもの及び針糸、鋏等の裁縫道具等の救援が必要だと同課で語って居る。尚交通不便のため未だ救援の手が届いて居らぬ村落からの通信を左に掲げるが防寒品の不足が叫ばれて居るのは注目される。
 船越村では流失家屋の多き割合に死亡及び負傷者が少く負傷者も現在は一人だけの様に見受けられる感冒は数名ある由なるもその他の患者は無く目下罹災者を収容するバラックを急造中、井戸は少く飲料水は欠乏致し居る様見受けられ山の清水を使用し居り。尚井戸は消防夫により井戸替しクロールにて消毒する様注意して居ります。米味噌等の配給は充分なるも寝具の配給少なく六七人の家族が小さな毛布二枚位にてふるえて居ります。

三陸海嘯 義捐金(十五日本社扱)

二百円東京銀座新聞連合社 五円市内上小路佐々木重太 五十円市内生姜町記念舘 九円市内材木町本門法花宗正教会信徒 二十円明治会盛岡支部 一円五十銭西磐井郡平泉泉龍玉寺大師講代表千條モトヨ千葉マツエ
 小計 金二百八十五円五十銭
 累計 金三千九十一円四十九銭

県扱い(十五日)

九円十五銭永井村有志及女子青年団一同 十五円東京市中井医科商店 一円十銭江刺家村青年訓練所及補習学校生徒一同 五円七四銭江刺郡広瀬小学校職員一同 五円六三銭衣川村青年訓練所及補習学校生徒一同 二円二六銭朝鮮栄山浦小学校第五学年女子一同 十円神奈川■老村■教会 五円千葉県薪川小学校内岩■キヨシ 廿円東京市吾妻町西二ノ七二革新会員一同 十五円同■地町会員一同 三十円東京府歯科医師会 三円八八銭千葉県国府台騎兵大隊第二中隊三内務班一同 五円新潟県府福田繁太郎 五円埼玉県一原せい 二十円東京市新井町商栄会一同 八円九十銭水分村女子青年団員一同 一百円盛岡市佐々木卯太郎 二六円二七銭岩手繭糸連盛岡工場従業員一同 一百円佐賀市吉村吉郎 九百八四円東京日々新聞社取扱分三六円四七銭 横浜市五宇稲荷山会 二十円静岡県三島町みどり会員一同 一百三九円九二銭東京市折越町会員一同 五円東京府樋口政正 二十円東京市代々木美容術営業組合自動車栄一同 三円金沢村女子青年団員一同 十円東磐井郡門崎小学校職員児童一同 十円四銭九戸郡晴山小学校職員児童一同 三六円二十銭軽米町長取扱分一百三九円七五銭横田村長取扱分有志一同 十円気仙郡日頃市小学校職員及児童一同 十三円五十銭九戸郡五日市小学校職員児童青年訓練所一同 五円山形村荷軽部小学校職員児童一同 十四円二二銭田野畑村沼袋小学校職員児童一同三三三十銭水沢町取扱分 三円六九銭■根青年訓練所生徒一同 十円横川目村母乃会鎌田ゆき外二十名 六円七銭白鳥小学校職員児童 三円六十銭前沢町白鳥青年訓練所生徒一同 一円五十銭兵庫県赤穂小学校尋四平井博外数名 三五円十九銭爾■体村有志一同 十円呉市基督伝導舘月原覚 五円満州派遣第十四師団歩兵第十五連隊滝沢真一郎外二名 七九円五二銭東京市北浦小学校第五年生二組女生徒 二十円岩屋堂町奥寺俊道 五百三円在仙台岩手県人会 十円五四銭生母小学校職員児童一同 七円三八銭滝沢郡北方小学校職員児童一同 六円七三銭二戸郡岩舘小学校職員児童一同 一円六五銭谷内村倉沢女子青年団員 四十円四三銭二戸郡女子青年団荒沢支部一同 五円東京市久野義三郎 五円一水兵 二百円東京市帝国在郷軍人会中野区北部分会第二班一同一百円東京市石原町二丁目会員一同 一五八円一二銭東京市三河島町正庭会員一同 四〇円二二銭横浜市峯岡町々内会 衛生組合青年団一同 二〇円七六銭福岡町土木管区職員一同 五円千葉県石渡助治朗 一百円東京市東駒形二丁目町会員一同 二三六円一九銭小山村狩野正男外八一九名一団体一四七円二三銭東京市荒川区青年団南千住町五丁目分円 十円三二銭長島小学校児童及職員一同 二〇円六五銭滝沢郡小山小学校児童補習学校職員生徒 十六円四七銭 遠野土木管区職員一同 五円七銭中野電信隊一連隊三中隊岩手県出身兵一同 二五円岩手郡寺田小学校児童一同 八円同職員一同 二円八五銭山梨県東部納■組合 六七円四〇銭東京市男子美容術営業組合 一円七十銭神奈川県西浦小学校尋五女一同 九円六九銭神奈川県秦町女学校職員生徒一同及西野南州会一同 十一円鉄道省浜松工場小野組 五十銭宮城県栗原農学校千葉秦 一円五十銭鳥海村立花正男 二円一五銭沢内村南川舟女子青年団一同 一円三二銭十二鏑村東晴山処女会会員一同 五円二銭田頭村平笠小学校児童職員一同 八円七六銭猿沢小学校児童一同
日計 三千百二十七円五十五銭
累計 十一万五千四百七十六円二十五銭