産業被害額 漁業九百九十二万円 畜産五十七万円山林五十六万円
漁業 関係被害見込は総計九百九十二万余円に上る見込みで内訳
金百五十万円(発動機船破損五〇〇)金二十五万円(小漁船五〇〇〇)金八十万円(一船的漁具流失一万戸分)金百二十万円(定置漁具流失四百統分)金十二万円(沖合漁業用延■類二百隻分)金十万円(同流百隻)金六万円(底隻網類六十隻分)金三十九万円(施網類流失破損百三十統)金三十五万円(漁業組合共同施設の破壊)金百万円(製造工場設備納屋■■等)金二百万円、生産中の魚粕魚油その他)金十五万円(海苔場牡蠣場)金二百万円(海藻類鮑)
右の他港湾八木、長部、綾里、白浜、鵜住居、白浜、小本、野田、二子各港復旧費約九万円を要する
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畜産 関係被害見込総額は計五十七万二千四百三十六円に達すべく家畜被害数及び価格は
△牛 九八六頭 一一八、三■〇円
△馬 一、〇九〇 一九〇、五〇〇
△豚 二、七一〇 四〇、六五〇
△鶏 一六、一二〇羽 一二、八九六円
計 三六二、三九六円
畜産関係被害予想
郡別 現在 頭数 被 害 予 想 頭 数
馬 牛 豚 計 馬 牛 豚 計
気仙郡 一、四五七 三五三 一、一四四 二、九五三 四一〇 一二六 六二〇 四、〇
下閉伊 一、五五五 一、〇二六 一、〇〇九 三、五九〇 三六〇 五七〇 七〇〇
上閉伊 三五五 五七九 一、四〇〇 二、三三四 一七〇 一九〇 一、〇〇〇
九戸郡 二、九三〇 二、五五七 四、六一九 一三、一〇八 一、〇九〇 九八六 二、七二〇
家畜飼糧の被害は計十一万六百八十円厩肥の流失其他による被害価格は計四十九万六千八百貫九万九千三百六十円に上る見込である。
山林課 関係の被害額は製材所の流失十三ヶ所、木材四千五百円、木炭検査所六ヶ所、倉庫百六十四ヶ所、木炭五万七千俵、破壊炭ガマ五千八百十三基、海岸砂防林は全滅しこの被害総額五十六万八千四百円である。
港湾被害 四十二万円
耕地課関係は田四百町畑八百町歩に浸水したものの如くであるが四班に分れ調査に着手した結果は十日迄に纏まるが之よりは幾分減ずる模様である。此の外地震により耕地面に亀裂を生じたもの水路其他の破壊ヶ所等を調査する筈だが大体之等の復旧費は八十万円位であろうと
道路復旧費 八十万円
土木事業の復旧費見込額は五日現在の調査によれば道路四十三万七千四百六円、橋梁二十二万二百三十円、河川八万九千二百十一円、港湾四十二万三千九百円、合計百十六万一千七百四十九円であるが内訳は次の如くである
道路 橋梁 河川 港湾
県
一六四、九四四 一九一、四八〇 六四、〇八〇 一一八、七〇〇
町村
二七二、四六二 一九、七五〇 二九、一三一 三〇五、二〇〇
東海岸漁業復興作 二百万円あれば 食繋ぎ出来る 一瀬技師談
県水産課の一瀬水産技師は語る。
各町村からの被害状況の報告を受けているがいまだ確かな被害が判らぬので極力調査させているこの調査の結果が判明すれば政府にも交渉し応急復旧補助を仰ぎ漁業家を救済するが県では矢張り五百万円からの救済費を要するものと思う差当って船舶の新造修繕には三百万円を要する見込だが其後に於て漁業が次第に事業化し整って来るのであるから二百万円あれば足りると思う、ただ問題は各地からの義捐金其他によって■を凌ぎ早急バラック建でも急造し七月始めのいかまで喰い繋ぎの対策を講ぜねばならぬ。何しろ海藻類は津波で浚われたと思うから喰い繋ぎの方法についても目下県として考究しているが喰繋資金は県から支出されることになろう。
復興資金は 中金から 漁村産組復興について 黒沢連合会長語る
漁村産業組合方面は最も悲惨を極め赤崎、船越、吉浜、崎山、大沢織笠、宮古物産、釜石信用等は殆んど全滅の形であるが昨秋以来の鰯の大漁で魚油、魚粕はインフレ景気を受けて大活況を呈し県講連は全講連を通じて販売統制をなし着々更正に向いつつあった。而して根底より覆され復興にはかなり困難に陥るではないかと見られている。右に関し黒沢連合会長は語る。
応急対策として皆川、石井両君を派遣し調査せしめているが各組合からの情報に依り近く具体的方針を樹立する予定だが復興資金は中央金庫より融資を受けることになった恒久的資金の借受けも調査の上申請するつもりである。
水産連合会の 活動を促す 本正三陸冷蔵常務談
三陸沿岸の漁業復興について三陸水産冷蔵株式会社の本正常務、清水支配人は交々語る。
○
三陸震災による漁業復興は実に莫大な問題であるが早急解決を図らねばならぬと思う。先ず以て岩手水産連合組合の活動を促し遠洋漁業のみでなく近海漁業の復旧を図ることだ。即ち同連合会では五十万円の低資を融通して貰うことになっているが之を増額し小船を急速に製造して生活の資を得させなくてはならぬが大きな漁業は資力があり大して心配はいらないけれども其れ以外のものは是非とも近海相手に仕事をしなければならない。
○
県としては先ず震災によって被害を受けた船舶に対し応急資金を以て援助し漁業家は共同作業によって経営をなして行かねばならないと思う。又水産連合組合が低利資金を以て漁業家を救済する場合資金の償還は十ヶ年賦位いにし明日の糧を得させることが焦眉の急だ。
○
差当ってはトロール漁業に従事しなければならないのだが船舶としては修繕して復旧するものもあるから早急に造船所の臨時出張を乞いドシドシ新造やら修繕を行うことだ。明治廿九年の三陸震災の当時は県に於て漁具及び農具を支給したが今回も同様にこの方法をとり復旧を計らねばならなりと考えている。
三陸沿岸の惨禍 衆議院議員 広 瀬 為 久
三月三日、上巳節句の払 帝都の市民を驚かしたる強震は意外にも三陸沿岸一帯に大津浪の惨禍を轟せるものであった回顧すれば明治廿九年六月中旬、恰も陰暦端午の佳節に方りて同じ三陸沿岸に大津浪の襲来して以来今回は卅九年目である。前回に比して全体的には災害の程度が軽いようではあるが惨禍の中心は前回同様我が岩手県東海岸の釜石地方であってこの中心地の被害は前回と略同様のように推測される前回は日清戦争直後であって我が国民は一般に戦勝の意気に燃え我が国家は新興の機運に際会せる時であって、しかも気候温暖適順の時節であった。今回は内外多事、多難、国民は自力更生に日夜孜々営々たる時、別けても我が岩手県は一昨年以来の財界恐慌状態に在る場合、酷寒時における天災なるが故にその惨状は前回の比にあらず飛報一たび来るや痛惻まことに堪えざるものがある。
十年前、関東大震災に際して全国民の同情と救援とが災害地に集注せられ数百万の罹災民はこれに感奮して復興の意気忽ち揚がり力行よく今日の厚生を見ることを得た。日本国民が相依り相扶けて万難を排除するの情熱と意気とに富むことは世界各国民の斉しく感嘆するところである今回の天災に際してもこの熱情とこの意気との発露されつつあるはもとより当然であって殊に災害地よりは現に満州熱河の寒野に転戦しつつある多数の壮丁を出しているのであるから全国民の同情支援が一層切実なるものがある即ち我国八千万民満州国三千万民の生命線上に起ち東洋平和のために戦いつつある彼等の郷土を安泰にし彼等をして真に後顧の憂いなからしめ以て彼等の貴き使命を全うせしむべきであるとの声は今や全国民の間に叫ばれているのである而して時恰も開会中の帝国議会はこの民意を遺憾なく反映せしむべきはもちろんであって災害地の租税減免猶予等をはじめ既定匡救事業の■上を拡大、補助の支出資金の供給等凡そ救済復興に関する諸施設において万遺漏なからんことを期している。
由来我国は地震国と称せられ地震に対する国民伝統の経験を有しその科学的研究の進歩せることは恐らく全世界に冠たるものであろう。殊に関東大震災以来、近畿、山陰の大震災もありその研究は、さらに一段の進歩を来せるものの如くである家屋その他の建築物、道路、橋梁、鉄道電信、電話、水道瓦斯等の工作物に於て特殊の技術によりて震害を防止することは相当に発達して居ると信ずるが海底における地震より襲来する津浪に対しては果して如何程の研究を積めるやを疑問とする。さらに地震の予知に至っては未だ殆んど見るべきものがない。今回の震害を契機としてその中心地たる釜石地方をはじめとし三陸沿岸一帯の復興建設には徹底的に新智識を傾倒して将来に備えるはもちろん、津浪及び地震予知に関する研究のさらに一段の進歩を見んことを切望してやまざるところである。
(三月四日)
案外軽微な 殖銀から観た災害 払出より預入に転向
殖産銀行は休銀破綻の跡を受けて等海岸主要地、釜石、盛、久慈、宮古、山田、高田の六支店を昨年中に開設し漁業経済金融に努めて非常な好成績を挙げ僅か数ヶ月で預金六十二万円、貸付金三十万を超え昨秋来の未曾有なる■漁とインフレ景気で中央の取引き為替取り組高も一ヶ月二百万円を突破するの勢いだった。尚今後共に本県水産業発展のため水産資金の融通をも計画中だったが突如の震災で第一番に釜石支店は焼失の憂き目を見たので早速渡辺常務が行員と現金十万円を携え急行し預金非常払いを断行し非常に感激を受けた其の他の支店は無事だったが其の後に於ける釜石外各支店の情報に依れば預金支払いは予想外少くむしろ預入れに転向して居り金融界は既に鎮静しつつあると云う。今後の復興について進藤頭取語る。
今次三陸の震災に依る被害は予想以上に甚大の模様でこれが復興は政府の援助を待つより外はないと思う凶作、銀行破綻、震災全く本県は天地の利を失っている。これに対抗するには人の和である政府及び県当局に於ての復興計画に基づいて殖銀の使命を果し一日も早く金融の途を図りたいと思う。当行としては目下被害を調査中だが案外軽微の様だ兎に角県民一致復興に努力すべきである。
緊張以って 事に進め 谷山安銀支店長談
当行に於ける海岸方面との取引は一般水産業者、商家方面にして金融界には大した影響はないと思う。自然の大試練を受けた本県はこれに屈従することなくより以上の緊張を以て復興に努力すべきで或は案外復興は早いではないかと思う。今後の調査に於ける情報に依って対策を講ずることになる筈で今の所具体的に考慮していない。
県選出代議士に 尽力方を乞う
本県選出代議士は結束して政府に折衝を続け食糧米被服等の応急必需品の無償交附の諒解を求め東京その他から一関配給移動本部に発送しつつあるが六日県へその後の配給状況に関し照会あったので県から一層の尽力方を乞い配給の完備を図っている。
死者一千三百八十名
六日正午現在被害調
家 屋 の 被 害 人 の 被 害
署名 町 村 名 流失 倒壊 焼失 浸水 死者 負傷者 行方不明
盛 大船渡町 一 全 一四 床上− 二 一 −
半− 床下−
高 田 町 − 同 四二 同 − 二 二 一
同− 同 −
気 仙 町 − 同 二 同 二 二八 九 三
同 六 同 五二
米 崎 町 − 同 九 同 一〇 八 七 −
同 六 同 一七
赤 崎 村 七九 同 三九 同 三七 四七 一六 三五
同 九 同 二七
吉 浜 村 一一 同 五 同 一 三 − 一四
同 一 同 −
越喜来村 − 同 九七 同 一〇 二九 一〇 五四
同 一七 同 −
綾 里 村 二四四 同 一 同 三 四九 一八 一〇八
同 九 同 −
広 田 村 一一五 同 一四 同 九 一七 一一 二八
同 八 同 一一
小 友 村 三〇 同 七 同 四〇 七 一 一一
同 二 同 −
末 崎 村 一二七 同一二〇 同 − 一五 二五 二一
同 七 同 −
計 六〇七 全三五〇 床上 一一二 二〇七 一〇〇 二七五
半 六五 床下 一一一
久慈 久 慈 町 二一 全− 床上 一〇 − − −
半− 床下 −
野 田 村 五九 同 三 同 − 六 四 −
同 一 同 −
種 市 村 五八 同 三 同 − 六二 二三 四七
同− 同 −
侍 浜 村 − 同− 同 − 二 − 三
同− 同 −
中 野 村 二 同 三 同 二 二 − 四
同 一 同 −
夏 井 村 一 同 一 同 一〇 一 二 −
同 一 同 −
長 内 村 一 同− 同 − 二 三 八
同− 同 −
宇 部 村 四 同 五 同 − 一 − 六
同 一 同 −
計 一四六 全 一五 床上 二二 七六 三一 六八
半 四 床下 −
岩泉 小 本 村 八九 全 五 床上 五〇 九五 三七 四八
半− 床下 −
田ノ畑村 一一八 同 三 同 − 四四 八 一〇二
同− 同 −
普 代 村 七二 同− 同 四一 一八 一一 一一〇
同− 同 −
計 二七九 全 八 床上 九一 一五七 五六 二六〇
半− 床下 −
釜石 釜 石 町 二三〇 全一三〇 一八九 床上一、八〇〇 三五 二〇〇 一四
半 七〇 床下 −
大 槌 町 二九五 同一四九 同 一、〇〇〇 三九 一八 一五
同 五〇 同 −
鵜住居村 一三八 同 九 同 二一 一 四 六
同 一五 同 −
唐 丹 村 二一八 同 一九 同 二〇 三一八 一九 −
同− 同 −
計 八五四 全三〇七 一八九 床上二、八四一 三九四 二四一 三五
半一三五 床下 −
宮古 宮 古 町 三 全 五 床上 六一 二 二 −
半 二九 床下 七三
山 田 町 二三〇 同 七二 同 − 四 一 四
同 二 同 一六五
船 越 村 二〇一 同− 同 − − − 三
同 二一 同 −
田 老 村 四四八 同− 二〇 同 − 五一八 一三〇 三九四
同− 同 −
重 茂 村 三六 同− 同 − 二〇 六 一三〇
同− 同 −
津軽石村 二 同− 同 − − − −
同二 同 六
大 沢 村 − 同五五 同 − − − −
同三七 同 七八
織 笠 村 二 同− 同 − − 三 −
同− 同 二〇
崎 山 村 一 同− 同 − − 一 −
同− 同 −
磯 鶏 村 三六 同− 同 − 二 − 二
同− 同 一一六
計 九四九 全一三二 二〇 床上 六一 五■六 一四三 ■三三
半 九一 床下 四五八
合計 二、八三五 全一、一一九 二〇九床上三、一二七 一、三八〇 五七一 一、一七一
半 二九五 床下 五六九