死者一千三百廿五名 被害現在調
三月五日 (午後六時現在)
家屋の被害 人の被害
署名 町 村 名 流失 倒壊 焼失 浸水 死者 負傷者 行方不明
盛 大船渡町 一 全一四 床上一四八 四 一 —
半− 床下−
高田町 — 同四 同— 二 二 —
同— 同—
気仙町 — 同四二 同二 二八 九 一
同六 同五六
米崎町 — 同九 同一〇 八 七 三
同六 同一七
赤崎村 七九 同三九 同三七 四六 一六 三六
同九 同二七
吉浜村 一一 同五 同三 三 — 一五
同一 同一
越喜来村 一〇 同九七 同— 二九 一〇 五四
同一七 同—
綾里村 二四四 同一 同三 四九 一八 一〇八
同九 同一一
広田村 一一五 同一四 同九 一七 一一 二八
同八 同一〇
小友村 三〇 同七 同— 七 一 二
同三 同■〇
末崎村 一二七 同一二〇 同— 一五 二五 二一
同七 同—
計 六一七 全三五二 床上二一二 二〇八 一〇〇 二六八
半 六六 床下一六二
久慈 久慈町 二一 全一 床上— — — —
半— 床下—
野田村 五九 同三 同四〇 六 — —
同一 同一
種市村 五八 同三 同— 三七 二二 六四
同— 同—
侍浜村 — 同— 同— 二 — 一
同— 同—
中野村 二 同三 同— 二 — 四
同一 同—
夏井村 — 同— 同— 一 — —
同— 同二〇
長内村 一 同— 同— 二 三 八
同— 同—
宇部村 四 同五 同— 一 — 六
同— 同—
計 一四五 全一四 床上五二 三一 二六 八二
半三 床下—
岩泉 小木村 八九 全三 床上五〇 九五 三七 四八
半 床下—
田ノ畑村 一一八 同三 同— 四四 八 一〇二
同— 同—
普代村 七二 同— 同四一 一八 一一 一一〇
同— 同—
計 二七九 全八 床上九一 一五七 五六 二六〇
半— 床下—
釜石 釜石町 一八九 全七四 一七一 床上一、八〇〇 一九 二〇〇 五
半八九 床下—
大槌町 二九五 同一四九 同一、〇〇〇 三九 一八 二二
同三〇 同—
鵜住居村 二〇八 同二六 同一〇 七 四 —
同三六 同—
唐丹村 二一八 同一九 同二〇 三一八 一九 —
同— 同—
計 九一〇 全二六八 一七一 床上二、八三〇 三八三 二四一 二七
半一九三 床下—
宮古 宮古町 三 全五 床上六一 三 二 —
半二九 床下七三
山田町 二三〇 同七二 同— 四 一 四
二 同一六五
船越村 二〇一 同— 同— — — —
同二一 同—
田老村 四四八 同— 二〇 同— 四四八 一三〇 四一四
同— 同—
重茂村 三六 同— 同— 一八 六 一三二
同— 同—
津軽石村 二 同— 同— — — —
同二 同六
大沢村 — 同五■ 同— — — —
同三七 同七八
織笠村 二 同— 同— — 三 —
同— 同二〇
崎山村 一 同— 同— — — —
同— 同—
磯■村 三六 同— 同— 二 — 二
同— 同一一六
計 九四九 全一三二 二〇 床上六一 五二四 一四三 五五五
半九一 床下四五八
合計 二、九〇〇全七四四 一九一 床上三二四六 一、三二三 五六六 一、一九二
半三五五 床下六二〇
宮古山田街道 五日朝復旧完成 工兵隊夜業の大活動 津波襲来目撃者佐々木君談
(宮古にて菱谷特派員発)寝ずの番で津波襲来の現場をはっきりと目撃した宮古測候所の佐々木正三君は当時の有様を語る。
最初の地震でハッとした私は伯父が当■である為め
早速事務室に行きましたが引続きの地震で地震計は故障を生じ記録を取る為め修理してから寒さをしのぐ為めストーヴの薪をとりに外へ出かけた所何だか薄気味悪い風の様な音がして来たのでじっと沖を見ていますと勿論電気は停電していたので廻りは暗黒であったのですが宮古湾の中央向山辺りに一直線の白波様のものが見えたのです直感的に『アッ津波じゃないか』と思った時は既に非常な勢いで云い知れぬ圧迫をうけ見る見る一丈余の波が間近に迫り思わず事務所に飛び込み
所員一同も物凄く聞こえる波のうち来る音に驚きと恐怖に怖いていたのでした。そのうちに遠くの方から人の叫び声等が無気味に聞こえて来ましたが全く生れて始めてあんな恐ろしい思いをしました。
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(同上)四日来宮の工兵隊員は休息のいとまなく直ちに交通杜絶の状態にある宮古、山田間の街道修理に着手したが夜業を続けても完成する意気を以て目覚しい働き振りを見せ辛うじて五日朝に至り同道路を完成した。
要救護罹災民 三万三千九百名
四日午後十時県警察部に於て総合せる要救護罹災民総数確定数は男女大小合計実に三万三千九百六十五名の多数に上り各署別
△釜石署下 一町三村計二一、八三二
△盛署下 二町八村計六、二八七
△宮古署下 一町五村計四、〇九一
△岩泉署下 三村計一、一九三
△久慈署下 五村計五六二
となっているが高田町、宮古町、侍浜、夏井、津軽石、千徳、山口、崎山、織笠の各村には夫々多少の罹災民あるも救護を要するまでには至らなかった尚最も多数の要救護者を出したのは釜石町一一、六一五人、大槌町六、五五七人、鵜住居二、一四五人、唐丹村一、五一五人、田老村一、八六一人にて其被害の激甚さも思いやられる。
此際種痘の事 県衛生課発表
県衛生課では最近各地方に天然痘■病者が発生して居るので本県震災地に各地方よりの訪問者多き為万一を懸念し天然痘予防の種痘をする様五日付県下各町村に通牒を発した。
日蓮慰問使
日蓮宗、宗務院災害特別慰問使本山孝勝寺住職本■■■宗社会課詰岸本■仁両師は五日来県県庁を訪問し慰問金百五十円を寄附したる後本社を訪問見舞の挨拶を述べ六日釜石町に向い五日間の予定で慰問し帰京の上全国日蓮宗徒に飛檄し慰問金物資の募集に着手する。
県保険支給
県健康保険課では災害地の被保険者全部で六七十名にすぎない死亡者負傷者に対しては請求あり次第何時でも支給する。
青年団出動
県青年団体連合会では学務部長の出動命令によって市町村青年団を動員し震害地に於て労力奉仕することになり部長通牒に接した各団長は即刻出動準備を整え待機して居り五日午後八時救援隊出発の際の携行物としてスコップ■■等の■■を忘れざるよう注意した。
青い火の正体 内村理事の釜石■来談
海中に青い光が発したというのはあれは吉里吉里附近航行中の早池峰丸が沖合に出漁中の船に帰航せよとの危険情■の狼火を打上げたものらしい。各地配給状況はうまく行っているが小部落には未だ救援の手が届かずに困っているようだ。
報恩寺雲水三陸へ
報恩寺雲水桐野大浜、内沢源明ニ君は釜石方面に葛■人君は宮古方面に六日朝出発 寺を廻り屍体取片付を手伝い■場の■■をする十日間の予定。
新潟から救護班
五日新潟県より罹災地救護班として荒木防疫官以下看護婦三名来県直ちに宮古へ向った。
南方の寄贈品 一ノ関に集積 荷卸し駅決定
各方面よりの救恤品続々到着しつつあるに鑑みこれが配給統制を■るため六日より一関署内に配給本部一関出張所を設け南方よりの寄贈品は全部一関駅に集積の上、配給地に輸送する事となったが配分に関しては農務課内配給本部にて支持し極少数の物資は両出張所にて独断専行する事となった尚各署下の荷おろし駅は左の通りである。
▲釜石署管内…遠野駅▲盛…矢作駅▲宮古…平津戸駅▲岩泉…沼宮内駅▲久慈…久慈駅
政友会東北 代議士会 復興施設に 政府を鞭撻
(東京発)岩手、青森、宮城三県下の大震火災復興に関する政友東北代議士会は四日午前十一時から院内交渉室に開催、県選出の熊谷、八角、志賀、小野寺、広瀬の六氏(高橋氏病気欠席)を始め関係地方代議士全部出席、震災地に復興に関し■■協議の結果取り敢ず応急策として内務省社会局と交渉し罹災地に於ける米、衣類、寝具及び副食物の配給■■を期すこととし更に実行方法として
一、住宅資金の供給
一、救済土木事業の即時着手
一、財政の根本的建直
の三項を決議し本県選出代議士は全部これが実行委員(岩手青森宮城以外は二名)となり内務農林大■の各関係主■■と交渉を纏める一方貴族両院議長を通じ議員は一口十円以上の義捐金を募集して罹災地へおくることを申合せた■会後本県出身代議士は■語る
今回突如三陸沿岸を襲った大震害の罹災者に対しては衷心より同情の赤誠を披瀝し一日も早く復興することを祈念するものであります吾々は一同打ち揃って惨害地慰問へ出かける覚悟でしたが復興応急施設に関し一致協力政府当局を鞭撻し最善の方法をとるためここ暫らく滞京することになった次第です尚復興予算の提出等について県と直接交渉を進めて行かねばならぬので部長級の急遽上京を希望する
岩泉署下 救護状況 ■なる倒壊建築物 官公吏死傷
五日午後一時岩泉署より県警察部に達した報告によれば小本村に於ける四日検死済み屍体七五にて何れも遺族に引渡した尚負傷者は岩泉町大石喜一、佐々木哲太郎の両開業医赤十字救護班及び看護婦沼宮内町佐々木医師等にて治療中である。又救恤品の配給については岩泉町にて大量の炊出し衣類を調達し自動車にて罹災地に輸送し又沼宮内一戸葛巻方面よりは直接輸送されている。又田ノ畑村に於ける検死済み屍体三八何れも遺族に引渡し傷者八名は村医池田久之助氏現場にて救護診療に当っている尚救恤品は自村炊出し衣類を配給岩泉町小川村からは駄馬にて輸送されいる。更に普代村にては検死済み屍体一八負傷者十一名に対しては三日小川村工藤医師四日赤十字救護班にて治療して居り配給品も四日以来到着している。高瀬商工課長は田野畑村を視察中である。
又主なる建築物の倒潰並びに官公吏の死傷は左の如し。
△小本村 △■■漁業組合事務所木炭検査所信用組合事務所 ■板工場(二)旅舘(二)料理屋(二
△官公吏死亡 木湊技手菊地清七岩泉町議藤島俊明、小学教員■川あさ、他小学児童二三名
△普代村 △官公吏死亡郵便局長大村■■、村議消防組頭■島与助村議大村宗三同大村文■小学児童一九
△田ノ畑村 △建築物郵便局木炭検査所旅舘料理屋各二 △官公吏死亡村長山■喜代八小学児童一六
被害総額 約八千万 午後十時発表
五日県警部司令部へ報告された被害総額は約八千万円と称されている。
救援駆逐艦 上陸不能 波高く漁船 もなく
大湊■港部から派遣された救援駆逐艦四隻のうち一隻は四日久慈港に入港し五日は津波意外に高い処へ上陸救恤品陸揚げに使用する■■及び発動機船は被害を受けて使用不能のため乗組員の上陸其他は十日頃になる予定である。
鳥野氏来県 帝国水難救済会本部松平会長代理として本部幹事鳥野■一氏は慰問のため五日来県直ちに午後二時現地に向った。