内務農林両省とも 協議して諒解済み 震災地復旧資金問題で 滞在中の石黒知事語る
滞在中の石黒知事は繭検定所問題及び復旧資金の漁業組合転貸問題について左の如く語った。
震災復旧資金の組合転貸のことは四郡代表等を上京させワイワイ騒ぐ問題でない。岩手の海岸は津波で非常に困っているという矢先き押しかけられたのでは政府に対しては相済まんと思う既に内務、農林両省とも協議し諒解も出来たことであるから何等心配すべきことではない。
転貸規定を 県参に提出 農林案を実行
(東京発)三陸沿岸復旧資金の組合転貸問題については既■の如く地方長官会議のため滞京中の石黒知事は内務省及び大蔵省と慎重協議の結果沿岸漁民の希望を入れ農林省の方針通り漁業組合又は水産会にも直接貸付けることに諒解なったものでこれは五月初めの県参に提出転貸に関する規定の制定を見ることになった。
要は人の和 産業復旧資金に就て ◇・・・小森生
過般の臨時県会で震災地産業復旧資金は原案通り町村経由に決議されるや漁業組合側は町村転貸は吾々を見殺しにするものであると代表者を上京政府に陳情せしめた町村転貸は漁民を見殺しにするものとなれば容易ならぬ問題であるが既に県会の議決を経て内務、大蔵両大臣に認可を申請して居る今日然らばドウすればよういか、再び県会を招集して県直接各種組合に融通し得る様決議のやり直しをすれば一番簡単だが之は実際問題としては出来ない。内務、大蔵両大臣が組合にも転貸し得る様更正許可して呉れれば組合側の希望に添うけれ共県の原案通り県会が議決して申請したもので表面には町村に転貸する外組合への直接転貸は認むべからずと反対の意思表示をなしたものはないとしても実際は全員委員会に於て組合側の希望は容れられず県会の意思は組合への転貸を認めずというのであるから両大臣が更正許可するとは考えられず組合に県から直接転貸する方法は一寸見当らぬと思う。町村経由として村上徳一郎君等の云うが如く大蔵省は町村自体の事業でなく他に転貸する資金の起債は認可しないとあれば此の産業復旧資金は
蚕糸業復旧資金■三萬円、農業復旧金二十萬四千円、畜産復旧資金二萬三千円、耕地復旧資金二十四萬円三千円、炭材購入資金三萬四千円、商工復興資金三十七萬九千円、水産復旧資金三百十九萬三千円
で何れも町村を経由して各種の団体に転貸されるものであるから独り漁民のみでなく他の業者は資金を得るの途なく震災津浪によって蒙った莫大な損失から復旧し復興への一歩も踏み出す事が出来ずそれこそ海岸全部が生命を奪われるに近い窮境に陥り由々しき問題であるが果して大蔵省が斯かる意見を持つとは諒解が出来ない。失業救済事業中の牧野整理とか共同施設とか或は自作農創設維持資金の様に町村自体の事業でなく団体或は個人に転貸するものの起債を今日迄認めて居るに拘らず今回の如く沿岸民が生きるか死ぬかと云う瀬戸際にある時左様な事があるとは一寸受け取られない、県から組合へ直接融通し得るの方法がないとすれば町村経由によるの外ないが町村経由ではドノ点が不便であるか、町村と組合との間が円満に行ってない所は町村が組合の希望を容れない惧れがある。夫がため復旧の遅れるものが出ないとは限らない。夫から小舟の様なものは問題ないとしても大型漁船とか網とか製造所とか組合から個人に貸付けられるものは町村で感情問題から削られる心配もある組合内の統一を欠き資力のない組合に対して町村は貸付を躊躇するかも知れない—之は県が直接貸すとしても同様で貸付金は助成金でないから回収の見込みのないものに貸出す訳にはゆかない—等々組合側から云えば不便の点が多々あり復旧計画に支障を来す憂いがあるかも知れないが既に斯く決定して仕舞い直接貸をなす方法がないとすれば町村経由により一日も早く復旧を図るべきでないかと思う。町村内に於て役場と漁業組合とが反目したり円満な融和が出来ぬ様では到底復旧も復興も出来ない。些々たる感情問題などはお互いに奇麗サッパリ一掃して町村民全部が一体となって努力建設するのでなければ其町村の将来は思いやられる。私は町村経由では漁民が亡びるとは考えられない。要は人の和にあるのでないかと思う。