震災並に匡救 予算内容 きのう臨時県会で 石黒知事説明
八日開会の臨時県会における石黒知事の予算説明中脱落のヶ所あり訂正の上茲に再録す。
提案に付て御説明致します。
先ず以て提出予算の編成方針に関連致しまして一言申述べたいと存じます、熟々今回の地震、津浪による災害の善後策には所謂復旧に関する事業を挙げなければなりません。第二には災害防止の施設を講ずることであります、如何に数千萬円を投じて復旧事業を行いますとも一朝海嘯の■が至る時は一切を挙げて又々空に■することとなるが為で あります。第三には所謂復興事業であります。則ち単に復旧施設に止まることなく反って大に罹災地方の産業を進め道路の改修交通の便を開きてその地方の富力の増進を図 ることはその生活の安定向上を期するは勿論政府当局等に於て最も懸念さるる復旧費等の借入金の返還を期するにつき緊要の事と考うるのであります。然るに罹災地方は素 より県も亦等しく財政窮乏の際でありますので■■決行の実力を備えないのでありまするから政府の同情ある援助を仰ぎ是等施設の実現を期することの止むなき実状に置か れて居るのであります。而して既にご承知の如く当時政府に於かれても特に深甚の同情を払われましたが種々の事情の為その助成は単に復旧事業に止むることとなりました 、唯災害防止に関する施設につきましては内務、農林両省に夫々二萬円の予算を編み迅速に研究調査を遂げ後に之が完成を期することと相成りましたことは将来に至大の関 係を有するものとして特に御記憶に止められたいのであります。而して復興事業につきては■令今日政府の補助その他財的援助なくとも復旧事業及災害防止と■るべからざ る関係を有するものでありまするから今後県は各種団体等を支援してその事業促進完成に協力致したいと存ずるのであります、以上の理由によりまして今回震嘯災害の予算 は復旧費に止めますると同時に本予算の編成に当りましては第一に本県の財政状態並罹災地の現状に鑑み自己資金の出資に依りて復旧を図ることは到底不可能の状態にあり ますので能う限り国庫補助を多額に受くることを主眼として事業を計画し第二に国庫補給又は国庫補助金以外の財源は総て大蔵省預金部の低利資金の供給を受くると共に之 が供給に当りましてはなるべく利子の補給を仰ぎ負担の軽減を図ることとし第三に利子補給のありますものは格別然らざる低利資金は将来県民の負担と相成りまするので復旧に必要なる限度に止めたのであります。
◇
今回提案いたしました震災費予算総額は千二十四萬四千七百八十二円でありますかその財源は国庫補給金及補助金四百三十七萬七千五百八十九円寄付金九萬八千五百九十四円県債五百六十萬八千円貸付金収入十五萬四千二百九十三円、県費編入金六千三百六円と相成ります。今該予算中主なる事項に付て大体の御説明を致します。
◇
第一救護費に於て二萬二千二百八十二円、警備費に於て五萬九千四百九十一円、救療費に於て二萬九千九百二十五円を計上致しましたのは救護の事務は七年度限り之を打切ることが出来得ない状態にありますので引続き之に要する旅費その他の■用を計上し警備費に於きましては現在の定員を以ては震災地に於ける各般に亘る警備の充実を図ることが不可能なる実情にありますので従来の警察官吏の外新に警備補一名、巡査四名を増員して之に当らしむると共に震災の被害を受けたる警察電話の復旧を図ることとし之に必要なる経費を計上致しました。又救療費に於きましては震災地傷病者の療養並地震、海嘯に因する内外的健康の障害並に罹災地に於ける消化器系その他伝染病患者発生の予防を必要とするを以て之に要する経費を計上致しました第二災害土木復旧費に付て申上げますれば御承知の如く今回の震嘯のため道路の決壊、橋梁の流失、護岸の破壊等土木の被害は洵に激甚なるものがあります依って之が復旧は県民の安寧を保ち福利を増進する上に於て一日も忽諸に附すべからざるを思いまして県工事に■する橋梁六十一ヶ所この工費二十九萬四千六百十一円、道路百八十九ヶ所この工費百九十萬七百五円を計上するの外、町村に於ける道路橋梁等の復旧を助成するため百十二萬二千八百三十一円の補助金を計上致しましたが町村に対してはこの外尚街路復旧事業助成費八萬五千円と之が調査並住宅適地造成調査費として四萬一千三百十円を計上致しました第三産業復旧費に付ては二百六十六萬六千九百七十五円の補助と貸付金四百二十萬六千円を計上致しましたが之を事業毎に説明致しますれば先ず■糸業復旧費であります、不完全なる急造家屋に操る■作の不良を緩和するため被害激甚なる気仙、上閉伊、下閉伊の三郡内八ヶ所に助成金を交付して稚■共同飼育所を設置せしめ尚破損■具の復旧並に■種の購入を容易ならしむるため三萬九千七百七十五円の助成金と三萬円の貸付金を計上致しました。次に罹災農家の於ける食料の自給と生活の安定を期すたる馬鈴薯、水稲、大豆、その他農作物の種苗、農具の購入費、納舎並肥料舎建設資金及肥料賃金として助成金十三萬六千四百二十三円、貸付金二十萬四千円を計上致しました。次に畜産の復旧でありますが交通の不便なる被害地の現状に照し又農業経経営上畜力の利用と云う点から見て之が指旧は極めて緊要と認めまするが故に家畜並家禽飼料の購入費を助成する為之が助成費として二萬二千五百七円、同貸付金二萬三千円を計上致しました。次は耕地復旧費であります。被害耕地は田四百町歩、畑八百町歩であって之が復旧は焦眉の急務でありますので助成金として三十四萬五千百六十五円、同貸付金二十四萬三千円を計■致しました。次は炭材購入資金貸付金であります。今回の災害に依り製炭業者にして資産を失い製炭に就業し得ざるものが少なくないのであります依て之等に対し炭材購入資金として低利資金を貸付するため該金額十三萬四千円を計上致しました。次の商工復旧費でありますが罹災商工業者の数は商業千二百八戸、同工業三百七十一戸合計千五百七十九戸に上って居ります。尚此の外運送船の流失破損せるものが約六十艘あります。而して之が復旧は極めて急を要するものでありますが全部自力を以てすることは甚だ困難なる実情なるを以って復旧事業費に対する助成金として十一萬八千円、同貸付金として三十七萬九千円を計上致しました。次は水産復旧費であります。震災者の大部分は漁民でありまして従て漁船、漁具等が殆んど流失破損したるのみならず住家は勿論製造場、倉庫等に至るまで流失、破損の惨事に遭遇し罹災漁民の殆んど全部は生業を失い路頭に迷うの実情にありますので之が復旧に付ては正に焦眉の急務に迫られて居ります。依て漁船漁具の復旧、漁業組合、共同販売所、購買所、製造場倉庫及養殖場等の復旧並に船溜、船揚場、築磯の復旧に要する助成金として二百五萬百五円、同貸付金として三百十九萬三千円を計上致しました。その他水産試験場復旧費として一萬二千円を計上致しました。
◇
第四住宅復旧費貸付金として百五萬四千円を計上致しました。漁民住家の復旧に付きましてはこの一伝期に於きまして進んで漁村部落の改善を期したいと存じまして夫れには単に住宅の復旧のみに止まらず浴場、作業場倉庫、集合場、水道、託児所等の共同設備を建設せしめ産業経営に将又生活改善に合同の力を以て之に当らしめたいという趣旨より住宅組合及び公営住宅の外産業組合をして住宅の建設を図らしむることと致しました。第五児童就学奨励費でありますが今回の震災に依る罹災児童数は実に六千二百有余名の多数に上り内死亡四百十名、負傷十八名の多きを算して居ります。之が救護に付きましては取敢えず各方面の教育関係有志より寄贈せられました教科書及び学用品を配給致しまして教育上遺憾なきを期しつつある次第でありますが尚今回予算に計上いたしました。四萬三千九百四十二円を以て是等児童に対して主とて食料並被服を給与し就学上支障なきを期したいのであります。
第六復旧事業調査監督費として四萬円を計上致しました。之は震災地復旧事業の計画調査並指導監督に要する人件費及其の他の経費でありますが政府に於ては本事業の助成を図るの趣旨より国費を以て別に事務官以下■技手、 履員若干名を配置せらるる予定になって居ります。
第七養老、育児院建設費でありますが之は扶養義務者を失い孤独となりたる者及測らざる災害に因り■人となりたる所■天下無告の民をして天■を完うせしめ或は希望に充てる幼者をして元気ある生涯に入らしむるため県下適当の地を撰み是等老■人及幼者を収容し得る養老、育児院を設置することとしその経費として八千円を計上致しました。第八歳入欠陥補填金として十八萬二千円を計上致しました。之は七年度及び八年度における各種県税の減免、課税標準の減少に依る減収及び未納金の徴収不能なるものの補填に充当し県財政に欠陥を生ぜしむることなきを期したのであります。
◇
以上は震災費予算に関する大体の説明でありますが此の外本予算を経由せず直接町村に貸付けらるべき資金即ち町村歳入欠陥補填金五十六萬三千円小学校舎復旧資金五千円教員住宅復旧資金六萬四千円街路復旧資金一萬五千円、住宅適地造成資金三十四萬五千円、町村災害土木復旧資金十八萬三千円合計百十七萬五千円という巨額の低利資金が町村に直接貸付になるのでありますが該資金に対しては何れも国庫より利子の補給があるのであります
復興低資借入 県保證を陳情 罹災地産組代表一行が 知事を訪問して
三陸罹災地産業組合を代表し釜石信用橋本、船越信購鈴木、崎山組合千崎、米崎信購千崎、赤浜信購岡本の各組合長並に南岩手支会主事等は八日正午出県石黒知事を訪問し七日の実行委員会の決議に基き罹災産業組合復興低利資金借入県保證の陳情をなしたが一行は更に協議の上臨時県会に陳情する筈。