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愈々津波防止の  調査会設置決定す   斯界の権威を網羅し

(東電)三陸震災地を視察して三日帰京した後藤農相は四日の閣議に於てその報告を為し将来の津波防止の必要を力説し調査会設置案を提唱し大体閣議の承認を得たので直ちに山林水産など関係局に於て具体案の作成に着手した。即ち三陸地方沿岸は明治二十九年に大津波に襲はれ今回又その災害を蒙った事情にあるので将来斯る災害の予防に力める必要ありとして農林省では既に去る議会に津波災害予防調査会費二萬円を追加予算として提案その協賛を経ている。而して該調査会は内務、農林、大蔵等関係省官吏及び物理学地震学の権威を以て組織し実地調査を行ふことになったがその調査項目としては
 1防波堤防波林施設
 2船揚場の研究
 3沿岸潮流の調査
などを挙げている。

今後各教授は  東北の地震を研究   今はうっかりした事は言へぬ    白鳥台北帝大教授談

台北帝大教授白鳥勝義氏は四日来盛石黒知事を訪問したが語る。
 仙台の学会に出席した序に文教局長の石黒サンにお世話になりましたのでやって来ました今度の三陸地震については各教授より種々発表がありました。何しろ東北方面に関する地震研究が発表されて居ないので実は地震学にたづさわって居る者に発言権がありませんよ。(同教授は数年前東北の地震について発表した事がある)各教授共今後研究をして発表する事になって居ります。ここでうっかりした事を申す事は差控えねばなりません。明治二十九年にも米国西岸に地震がありました。今度も津波後に地震がありました。今度の地震後誰か岩手山か須川岳に登山した人はなかったでしょうか。
と謎のような事を云って問題の中心に触れない。
 今村博士は本県に来ることになって居ります。同氏は震災の調査のみならず前の津浪の記念碑等についても調べるという事でした云々。

 今村博士来釜

震災予防評議会評議員今村明恒博士は四日左の各項調査のため来県釜石に到着した。
一、住宅学校等の建設上危険なる地区
一、防波施設の適否状況
一、避難を容易ならしむる警備施設

医務嘱託辞令交付

釜石署では署下の罹災地に於ける今後の衛生施設に遺憾なきを期するため大槌、遠野、鵜住居村に夫々医務並に防疫事務嘱託を配置する事になり四日辞令を公布。斎藤釜石署長から種々注意あり夫々赴任地に向った。医務柴琢治(唐丹)厚海照(鵜住居)古谷彌四郎(大槌)何れも月手当五十円、防疫事務嘱託小林安太郎(唐丹)四十五円佐々木善一郎(鵜住居)三十円阿部芳太郎(大槌)三十円。

釜石から県会 に意見書

釜石町の釜石湾口防波堤計画はその後設計図面を作製して具体案を考究中であるが中にも北中根の防波堤は絶対必要と認め計画を進めている。大船の入港する主要コースは同防波堤の右方を通る事に、ほぼ決定。四日は更に工営所の応援を得て同所を中心として海深を実測した。尚町当局では八日招集される臨時県会に釜石港湾防波計画その他の意見書を提示することになった。

災地調査は速かに  各国は日本を諒解   定例閣議に両相報告

(東電)四日の定例閣議は午前十時半より首相官邸に開会、荒木陸相欠席の外、各閣僚出席、後藤農相より三陸沿岸地方視察の報告あり。
 被災地における復興事業は順調に進み県当局の指導も良く地方民も協力している。ついては今回予算に計上された震災津波に関する予防調査費を以て速かにこれが調査をなし三陸地方復興の参考となるよう努力する事にしたい。
と述べ内田外相より連盟脱退後に於ける各国の情勢について
 一、各国とも漸次日本の立場を諒解しつつある事
 一、松平デヴイス(駐英米国)両大使が経済会議及び軍縮会議に関し懇談したる際デ氏は日本に対し経済封鎖を行うが如き事は予想だもされないと述べている
 一、フランスのタン紙は日本の連盟脱退によって連盟は欧州だけのものとなったと日本の脱退を惜んでいる
 一、ベルギーに於ては議会で外相との間に質問■答があったが一般に日本の満州に於ける特殊な立場を研究する要があると云う意見が有力である
 一、ハンガリーの某新聞は全く日本と同様の主張をなして居り支那の無政府状態を考慮せずに連盟が行動するのは無謀であると述べている
と報告し午前十一時半解散した。